
日本で古くからお正月に飲まれてきた「お屠蘇」。一見するとごくありふれた日本酒の一種のように見えますが、実はそうではありません。お屠蘇には、お正月に飲まれる理由や独特の作り方、正しい飲み方などさまざまな特徴があるのです。今回は、そもそもお屠蘇とはどういったものなのか、気になるポイントを解説していきます。
日本人にとって、お正月は新しい1年の始まりを祝う大切な日です。いつもは遠く離れて暮らす家族や親戚が、正月は一堂に会して宴を楽しむということも多いでしょう。そんな場に欠かせないのが、大人のたしなみである「お酒」ですよね。お正月に飲むお酒として有名なものといえば「お屠蘇」ですが、お屠蘇は単なる日本酒のことではありません。お屠蘇は、日本酒やみりんなどに「屠蘇散」や「屠蘇延命散」という漢方薬を漬け込んだ薬草種のことであり、厳密にいえば一般的なお酒とは違うのです。
日本酒やみりんには、もともとブドウ糖や必須アミノ酸などの栄養素が含まれており、ここに生薬の効能とアルコールが加わることで血行促進など特別な効果が期待できるようになります。配合されている生薬によって効果が変わることもあり、意外と奥の深いお酒なのです。
お屠蘇の「屠」は屠(ほふ)るとも読み、鬼を葬ったり邪気を払ったりする意味があります。「蘇」には魂を目覚めさせるという意味があり、「屠」と組み合わせることで「邪気を払い生気を蘇らせる」という意味になります。つまり、無病息災や長寿を願うのに役立つと考えられ、めでたいお正月に飲む祝い酒として広まったのです。もともとは中国でお正月にお屠蘇を飲む習慣が始まり、それが平安時代に日本へ伝わって宮中の正月行事として定着しました。9世紀の前半には嵯峨天皇がお正月にお屠蘇を飲んでいたという記録があり、やがて一般庶民にまで広まったとされています。
お屠蘇は主に「屠蘇散」という生薬を漬け込んで作られたお酒ですが、実は屠蘇散の中身はどれも同じではありません。5~10種類の生薬がブレンドされており、メーカーなどによってどの生薬が配合されているかが異なるのです。多くの屠蘇散で使用されている代表的な生薬としては、まず「山椒(サンショウ)」が挙げられます。山椒は香辛料の一種としてもおなじみですが、胃を健やかに整える作用を持つ生薬でもあります。ついごちそうを食べすぎたりお酒を飲みすぎたりしがちなお正月には、うってつけの生薬だといえます。
また、みかんの皮を乾燥させて作られた「陳皮(チンピ)」も代表的な屠蘇散の中身として知られています。血管の拡張によって血流を改善させるへスペリジンという成分を含み、風邪症状や冷えの改善が期待できます。さらに、柑橘類に含まれる爽やかな香り成分であるリモネンも豊富なため、気の巡りを改善してリラックス効果や胃の働きを活性化させる効果を得ることも可能です。さらに、シナモンという呼び名で親しまれる「桂皮(ケイヒ)」あるいは「肉桂(ニッケイ)」も多く用いられており、発汗や解熱、整腸作用などが期待できます。
このほか、秋の七草のひとつでもある「桔梗(キキョウ)」の根も、去痰作用や鎮静・鎮痛作用があるため屠蘇散の定番生薬となっています。調味料でもある「八角(ハッカク)」は抗菌作用や健胃作用、オケラまたはオオバナオケラというキク科植物の根「白朮(ビャクジュツ)」は、健胃作用や利尿作用を期待して配合されることが多いです。セリ科の多年草であるボウフウの根「防風(ボウフウ)」は、発汗や解熱作用、抗炎症作用などがあります。このように、屠蘇散にはさまざまな効能を持つ生薬が含まれており、お屠蘇はまるで栄養ドリンクのようだといえるでしょう。
屠蘇散はティーバッグ入りで市販されているので、それを買ってくれば手軽にお屠蘇が作れます。インターネット通販で購入できるほか、一般的なドラッグストアやスーパーでも手に入るので探してみましょう。実際に自分で作れば、分量などをアレンジして自分好みの味に仕上げることもできます。お正月の伝統を楽しむためにも、お屠蘇の作り方を確認しておきましょう。
まず用意するものは、お屠蘇のベースとなる日本酒とみりん、そして主役ともいえる屠蘇散です。市販の屠蘇散は商品によって含まれる生薬が異なるので、自分の求めるものが入っているか確認してから買いましょう。また、みりんと聞くと料理用のものをイメージする人が多いでしょうが、お屠蘇に使うのは料理用ではなく本みりんです。料理用のみりんは原材料やアルコール度数が本みりんとは違うので、正式なお屠蘇とはいえません。材料が用意できたら、日本酒とみりんを混ぜ合わせて300mlにします。日本酒の分量が多いと辛口に、みりんが多いと甘口の味に仕上がるので、好みに応じて分量を変えてみると良いでしょう。
ちなみに、日本酒100%、もしくはみりん100%にしてもまったく問題はありません。日本酒とみりんを混ぜ合わせたら、屠蘇散を7~8時間ほど漬け込むだけで完成します。量が多いときは長めに漬け込んだほうが良いですが、あまり長く漬け込みすぎると濁りや沈殿物が出てくるので注意が必要です。お正月に飲みたい場合は、大みそかの夜に屠蘇散を入れ、元旦の朝に取り出すのが一般的です。
邪気を払い、一年の健康を祈るというのがお屠蘇の本来の役割です。その役割を正しく果たすためには、飲み方にも気を付けなければなりません。お屠蘇の正式な飲み方は、まずおせち料理や雑煮などお正月のごちそうを食べる前に飲みます。このとき、ただ飲むのではなく、家族全員がそろって東側を向いておきましょう。酒器は、高貴な色である朱塗りもしくは黒塗りや白銀、錫などでつくられたお銚子と三段重ねにした朱塗りの盃を用意します。もしお銚子や盃がなければ、お正月にふさわしい酒器で代用しましょう。お屠蘇を注いだら、年少者から年配者へと順番に飲み進めていきます。
これには若者の精気を年配者に分け与えるという意味があり、最初に年配者が年少者にお屠蘇を注いで飲み干し、飲んだ人が次の人のために新しく注ぎます。ただし、アルコールなので未成年者や車の運転をする人は実際に飲んではいけません。本来は三段重ねにした盃の杯ごとに、3回ずつ分けて飲みます。略式で済ませる場合は、1つの杯に3回お屠蘇を注ぎ、それぞれ3回に分けて飲むようにしましょう。三が日の来客には、初献としてお屠蘇をすすめ、新年のあいさつを交わします。ただし、飲み方や飲む際に唱える言葉などは地域や家庭によって異なることもあります。一般的な正しい飲み方にこだわらず、その地域の習わしに従ったほうが良いでしょう。
お正月に飲むお屠蘇は、普通の日本酒とは違う特別なお酒です。邪気を払い、健康を祈るという儀式的なものというだけでなく、生薬や日本酒、みりんの栄養素など体に良いとされるさまざまなものも含まれています。これまで何気なくお屠蘇を飲んでいた人や、お正月に飲む普通の日本酒をお屠蘇だと誤解していた人などは、これを機にお屠蘇を見直してみてはいかがでしょうか。ドラッグストアやスーパーで屠蘇散を買ってくれば手軽に作ることができるので、自分好みの特別な一杯を仕上げられるのも魅力です。お正月に家族や親戚と食卓を囲むときは、無病息災を願うのと同時に古き良き伝統を楽しむためにも、お屠蘇を作ってみると良いでしょう。
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