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2019年03月11日公開 お米じゃなくてフルーツの味?フルーティーな日本酒とは

お米じゃなくてフルーツの味?フルーティーな日本酒とは

日本酒の風味について、「すっきりした味わい」「甘口」「辛口」などと表現することがありますが、「フルーティー」という言葉を使うこともあります。お米から造られているはずの日本酒が、どうしてフルーツのような風味がするのか疑問に思うことがあるかもしれません。今回は、そんな疑問に答えるために、フルーティーな日本酒とはどのようなものかを説明します。


1.フルーティーな香りは「吟醸酒」特有のもの

日本酒の風味をフルーティーと表現できるといっても、すべての日本酒がフルーティーなわけではありません。日本酒にはさまざまな種類があり、大きく「純米酒」と「本醸造酒」に分けられます。お米と米麹だけを原料に造られているのが純米酒で、それに醸造用アルコールが加えられているのが本醸造酒です。純米酒はさらに、原料のお米や製造方法の違いによって「純米大吟醸酒」「純米吟醸酒」「特別純米酒」「純米酒」に分けられます。本醸造酒も、さらに細かく「大吟醸酒」「吟醸酒」「特別本醸造酒」「本醸造酒」と4つに分けることができます。その中でフルーティーな香りがするのは、「吟醸酒」と名の付く名称の日本酒です。具体的には「純米大吟醸酒」「純米吟醸酒」「大吟醸酒」「吟醸酒」などの日本酒です。

吟醸酒のさわやかでフルーティーな香りは「吟醸香」というもので、「ぎんじょうか」または「ぎんじょうこう」と読みます。お酒に詳しい人は、略して「吟香」(ぎんか)と呼ぶこともあります。この香りの成分は、カプロン酸エチルや酢酸イソアミルなどです。普段あまり耳にすることのない成分かもしれませんが、実はこれらの成分は果物にも含まれているものです。カプロン酸エチルはお米のでんぷんが分解されるときに生じる糖が生み出すもので、リンゴやメロン、洋ナシのような香りがします。ふわっと甘い香りがするので、飲みやすいお酒という印象が強くなるでしょう。お酒の香りとしては、やや重たい感じもする香りです。もう一つの酢酸イソアミルは、たんぱく質が分解してできるアミノ酸が生み出す成分です。酢酸イソアミルは、バナナのような香りといわれています。カプロン酸エチルと比べるとやや軽めのさっぱりとした香りで、さわやかな印象です。

このほか、日本酒の香りに影響を与える成分には、バラの香りのような「β-フェニルエチルアルコール」や、ライチやマスカットのような「テルペンアルコール」などもあります。ただ、こうした成分は日本酒では濃度が低く、強く香りを感じることはありません。日本酒でフルーティーな香りを感じるときは、主にカプロン酸エチルか酢酸イソアミルの香りと考えて良いでしょう。


2.そもそも「吟醸酒」ってどんなお酒?

フルーティーな香りを持つ吟醸酒とは、一体どのようなものなのだろうと興味が出てきたかもしれません。詳しく吟醸酒について理解するために、国税庁がホームページ上で公表している日本酒(清酒)に関する定義を見てみましょう。それによると、吟醸酒とは「精米歩合が60%以下の白米と米麹と水、またはそれらに醸造アルコールを加えたものを原材料として、吟味して造った清酒」と定義されています。色や香りについては、「固有の香味および色沢が良好なもの」とのことです。つまり、吟醸酒とは、簡単にいうと「吟醸造り」で造られたお酒のことです。

では吟醸造りが何なのかというと、吟味して醸造することといえるでしょう。よく精米されたお米を低い温度で時間をかけて発酵させて、かすの割合を高くし、特有の芳香(吟香)が出るように造られているのです。この伝統的な製法で造られているものが吟醸造りであり、使用する酵母や造りの方法などについては特に細かく決められていません。どんな酵母を使うかによって、でき上がる日本酒の香りは大きく異なります。しかし、吟醸酒については「固有の香味」がするものと定められてはいますが、この酵母を使わなければならないという条件は定められていないのです。製造方法についてもそれは同様で、「低い温度で時間をかけて」発酵させる必要はあるものの、温度や時間に関する明確な基準はありません。そのため、蔵元ごとに基準を決めて製造されている、いわば自由度の高いお酒が吟醸酒なのです。

細かな基準がないとはいえ、吟醸酒といえば一般的に「上等」「香りが良い」「蔵元が特に力を入れている」などのイメージがあります。吟醸酒を造ろうと思うと、吟醸造り用の優良酵母をよく選定し、原料のお米の処理から発酵の管理、びん詰めや出荷に至るまで、高い技術が求められます。「吟味して醸造する」という本来の定義通り、選び抜かれた原材料で、蔵元の高い技術を集結させて造られていることは間違いありません。

「吟醸酒」には、「大吟醸酒」や「純米吟醸酒」もあります。まず、吟醸酒と純米吟醸酒の違いは何かというと、原料として使われるお米の精米歩合です。吟醸酒の精米歩合は60%以下ですが、大吟醸酒は50%以下です。精米歩合については後ほど詳しく説明しますが、吟醸酒よりも精米歩合が低い大吟醸酒のほうが上等とされています。そのほかの原材料や製造方法に、特に違いはありません。次に、吟醸酒と純米吟醸酒の違いは、醸造アルコールが添加されているかどうかということです。吟醸酒には醸造アルコールが添加されていますが、純米吟醸酒には添加されていません。この違いにより、香りにはっきりと差が出ます。純米吟醸酒よりも吟醸酒のほうが香り高く、華やかな印象を与えます。


3.日本酒の味や香りを左右する「精米歩合」

日本酒の香りに影響を与えるものには、使用する酵母の種類のほかに精米歩合もあります。精米歩合とは、お米を精米する割合を表すものです。精米後に残った米の割合とも言い換えることができるでしょう。日本酒の製造過程において、精米は一番初めに行われるとても大切な作業です。原料のお米をどれほど精米するかによって、お米からどんな味や香りを引き出すかが決まってくるのです。具体的に数字を当てはめて考えてみましょう。「精米歩合40%」のお酒があるとすると、このお酒は外側の60%を削り落としたお米を原料として造られているということになります。内側の40%を残して、その部分がお酒造りに使われているということです。精米歩合が低いと削られるお米の割合が高くなり、米粒の中央部分が多く使用されているということになります。

お米は、外側にはたんぱく質や脂質が、中心部分にはでんぷんが集まっています。そのため、外側を削ると雑味が少なくなり、すっきりとした味わいになります。その反対に、外側を削る割合が少ない精米歩合が高いものは、コクや深みのある味わいになります。お米の旨味をしっかり感じられる、味わい深いお酒になるのです。一般的には精米歩合の低いお酒のほうが上等といわれていますが、精米歩合だけでお酒の品質を判断することはできません。日本酒の繊細な香りを楽しみたいなら、精米歩合の低いお酒が良いでしょう。しかし、味付けの濃い料理と合わせて日本酒を飲みたいときなどは、しっかりとした味わいを楽しめる精米歩合が高いお酒のほうが向いています。精米歩合について知っていると、そのときの気分や合わせる料理にぴったりなお酒を選びやすくなります。


4.フルーティーな吟醸香が生まれる仕組み

吟醸酒が持つフルーティーな吟醸香には、酵母の働きが大きく関係しています。精米されたお米を発酵させるために製造過程で加えられるのが、酵母です。このとき、お米の栄養分が少ないため、酵母は発酵しようとしても十分に発酵を進めることができません。よく精米されたお米はたんぱく質が少なく、酵母の栄養分が不足してしまうのです。そこで、酵母は足りない栄養分を補うために、自分で栄養素を作り出します。このときに、栄養分と一緒に生み出すのが醸造香です。醸造香はリンゴのようなフルーティーな香りで、華やかさもあります。

この発酵段階において、お米はすでによく精米されていて、不要な部分が削り落とされています。つまり、ほかの香りが少なく、余分なたんぱく質がない状態です。この状態により、酵母が生み出す華やかな醸造香がいっそう引き立ち、味も雑味がなくすっきりした味わいになるのです。発酵の途中で醸造アルコールを加えると、香りはさらに強まり華やかになります。


5.「フルーティー」と「甘い」は別物

「フルーティー」というと、果実のイメージから甘いお酒を想像する人もいるでしょう。しかし、フルーティーなお酒といっても、必ずしも甘いわけではありません。日本酒の甘さを表現するときは、フルーティーかどうかではなく、「甘口」「辛口」を使います。日本酒の甘さを知りたいときは、ラベルに貼ってある記載事項を確認してみましょう。


5-1.日本酒度

甘口か辛口かどうかを知るための指標となるのが、日本酒度です。間違えやすい点ですが、日本酒度はアルコール度数とは別のものです。アルコール度数とは、お酒に含まれているアルコールの割合のことを指しています。日本酒のアルコール度数は、15度前後です。一方、日本酒度はお酒に含まれる糖分の量を表すものです。「+3」「-2」などと表示され、それを見ればそのお酒が甘口なのか辛口なのかがわかります。数字が大きいほど含まれる糖分の量が少なく辛口となり、「+6」は大辛口、「+3.5~+5.9」は辛口、「+1.5~+3.4」はやや辛口です。「-1.4〜+1.4」は普通です。「-1.5~-3.4」はやや甘口、「-3.5~-5.9」は甘口、「-6」は大甘口となります。

アルコール度数は、酒類業組合法によりラベルに表示することが義務づけられています。しかし、日本酒度の表示は任意のため、記載されていないことも珍しくありません。ラベルに日本酒度が記載されている場合は、マイナスであるほど甘口、プラスであるほど辛口ということを頭に入れてチェックしてみましょう。


5-2.酸度

日本酒のラベルを確認するときに、一緒にチェックしたいのが酸度です。日本酒にはコハク酸やリンゴ酸、乳酸などの酸が含まれています。酸というと酸っぱそうな気がしますが、日本酒に関しては、酸の量が酸っぱさを左右するわけではありません。酸味でなく甘さ加減を左右し、酸が多いと辛口に感じ、酸が少ないと甘みを感じます。酸度が表示されているなら、先ほど考慮した日本酒度と照らし合わせてみると、大まかに味のイメージをつかめます。日本酒度が高くて酸度も高いものは、コクやキレをしっかりと感じられる濃厚な辛口です。日本酒度が高くて酸度が低いものは、淡麗辛口となります。酸味と糖分のどちらも少なく、さっぱりした味わいの中にキレがあります。日本酒度が低くて酸度が高いものは、濃厚甘口です。酸味も糖分も多く、まろやかでコクのある味わいになります。日本酒度も酸度も低いなら、さっぱりとした口当たりの淡麗甘口とイメージできるでしょう。

酸度は、日本酒度と同じようにラベルへの表示が務づけられているわけではないので、お酒によっては記載されていないかもしれません。表示がない場合は、甘口なのか辛口なのかお店の人に尋ねてみることができます。大抵、お酒に詳しい店員さんが丁寧に教えてくれるでしょう。


6.フルーティーな日本酒の楽しみ方

フルーティーな日本酒を楽しむときには、適切な飲用温度や合わせる料理、香りを楽しみやすい酒器についても知っておきたいものです。日本酒の飲用温度は熱いものも冷たいものもあり、「冷や」または「燗」で楽しめます。冷たい温度で飲む「冷や」はさらに、約15℃の「涼冷え」、約10℃の「花冷え」、約5℃の「雪冷え」に分けられます。冷やして飲むといっても、ほどほどに冷やすかキンキンに冷やすかで味わいや香りが変わってくるのです。「燗」も同じように、約30℃の「日向燗」、約35℃の「人肌燗」、約40℃の「ぬる燗」、約50℃の「熱燗」などに分けられます。

吟醸酒の華やかな香りを楽しみたいなら、10℃前後の「花冷え」が良いでしょう。適度に冷やすことでフレッシュな香りが引き出され、爽快な味わいになります。吟醸酒に合わせる料理は、白ワインのように、素材の味を活かしたさわやかな味つけの料理がぴったりです。刺身やカルパッチョなど、どちらかというと淡白な料理と合わせてみましょう。さらに、飲むときにこだわりたいのが酒器です。吟醸酒には、シャンパン用のフルートグラスやワイングラスがよく合います。香りが立ちやすい上部分が広がったラッパ状のものか、香りを閉じ込めやすいワイングラス型なら、フルーティーな香りをより感じやすいでしょう。


まとめ

日本酒でフルーティーな香りを楽しみたいなら、吟醸造りのものを選びましょう。ただし、フルーティーといっても甘口・辛口があるので、お酒のラベルを見て、日本酒度と酸度を確認して選ぶのがおすすめです。いろいろな種類の日本酒を飲み比べてみて、お気に入りの1本を見つけましょう。

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