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2019年03月04日公開 ラベルでよく見る「山廃」の文字!強い個性を生み出す作業工程の秘密

ラベルでよく見る「山廃」の文字!強い個性を生み出す作業工程の秘密

気になった日本酒がどんな特徴を持っているのか知りたいとき、まずはラベルを確認しますよね。日本酒の中には、ラベルに「山廃」と書かれているものがあります。日本酒選びに慣れていない場合、「山廃」の意味がわからないと購入を迷ってしまいがちです。この記事では、謎めいた「山廃」の意味と、山廃と表示された日本酒の造り方や味の特徴について解説します。

山廃仕込みとはどんな製法?

山廃仕込みは、日本酒の製造方法のひとつです。日本酒を製造する工程の中には、米をすりつぶす「山卸」という作業がありました。その山卸を廃止して日本酒を製造する方法が、「山廃」と名付けられたのです。もともと山卸は、米をすりつぶして酵素の働きを高める目的で行われていました。しかし、山卸の工程を行わなくてもおいしく飲め、発酵にかかる時間は変わらないことがわかったのです。その結果、山卸の作業は廃止され、別の方法で製造された日本酒が誕生しました。

山廃仕込みは明治末期に誕生した製造方法なので、比較的新しい日本酒の文化のひとつであるといえます。明治末期までは、従来の製造方法の通りに山卸をしっかりと行っていたのです。山卸は重労働であるため、職人泣かせの面倒な作業といわれていました。そのため、面倒な山卸を行わずにおいしい日本酒を製造できるというのは画期的だったのです。山廃仕込みを導入することによって、職人の負担は大きく軽減されました。完成までの時間が早い製法である速醸酛造りと比べると、山廃仕込みは時間がかかる方法に分類されます。しかし、人工的な菌を使用して時間を短縮させる速醸酛造りに対し、山廃仕込みは天然の菌を使用してじっくりと培養させるため、その分だけ速醸酛造りとは異なる特別な味わいがあるといわれているのです。

廃止した山卸とはどんな作業?

日本酒を造る工程の中でも、アルコール発酵を促す酒母造りの工程はとても重要です。酒母とは、日本酒の原料となる米・米麹・水を混ぜ酵母を加えたものを指します。手間ひまをかけてじっくりと酒母を培養させることで、日本酒の質が良くなるといわれていました。従来の製造方法では、酒母を培養するのに1カ月ほどかかります。その酒母造りのなかでも山卸は、特に重要な作業とされていたのです。

山卸は、米を櫂棒(かじぼう)で丹念にすりつぶす作業です。まずは、半切り桶といういくつかの浅い桶に、蒸した米と米麹、水を分けて仕込みます。そのまま15~20時間置いておくと米が水分を吸って膨張するので、それを櫂で丹念にすりつぶしていくのです。一般的に、半切り桶1枚当たりにかかる作業時間は15分程度といわれています。その後は、二番摺り、三番摺りと3時間ごとに米をすりつぶす作業が繰り返されます。専門の技術を持った職人の労力を必要とする、とても大変な作業です。

完了までに非常にたくさんの手間がかけられる山卸は、寒い時期の深夜から早朝にかけて行われてきました。すりつぶした米に含まれる麹から酵素液が抽出され、でんぷんの糖化を促すため、日本酒を造る際には欠かせない工程とされていたのです。

生酛造りとの違いは?

それでは、従来の製法である生酛造りと山廃仕込みはどんな違いがあるのでしょうか。山廃仕込みが明治末期に生み出された方法であるのに対し、生酛造りは昔ながらの伝統的な醸造方法を指します。自然界に存在する乳酸菌を取り込んで酸を生み出し、時間や手間をかけて酒母を培養するのが生酛造りの特徴です。麹から酵素液をじっくりと溶けださせるため、酒母造りには約1カ月かかるといわれているのです。山廃仕込みの場合でも、生酛造りと同じ仕組みを利用して日本酒が造られています。

生酛造りで日本酒を造る際は、工程の中に時間をかけて米をすりつぶす山卸作業が含まれています。山廃仕込みと生酛造りのもっとも大きな違いは、この山卸をするかしないかという点です。基本的に、酒母ができるまでにかかる時間は、山廃仕込みでも生酛造りでも同じくらいの1カ月程度とされています。つまり、酵母の働きを促すために行われていたはずの山卸は、意味がほとんどなかったのです。また、山廃仕込みと生酛造りでは味や香りもそれぞれ異なります。生酛造りの日本酒は透明感があり、すっきりとして飲みやすいのが特徴です。山廃仕込みの日本酒は個性が強く、クセがあるといわれています。

山廃仕込みのおいしい飲み方

山廃仕込みの日本酒は生酛造りのものと異なり、濃厚で深みのある味わいが特徴です。すっきりとした味の日本酒に飲みなれている場合は、その違いにびっくりしてしまうかもしれません。味の主張が強いので、人によって好き嫌いが分かれやすいといわれています。天然の乳酸菌が使われているため、口に含んだときに酸味が強く感じられる点が山廃仕込みの個性です。お酢のようにツンと尖った酸っぱさではなく、フルーティでまろやかな甘酸っぱさと表現される場合が多く見られます。どっしりとした重みと、心地よい風味が好まれているお酒です。

重厚な味わいを持つ山廃仕込みの日本酒を楽しむには、飲み方にポイントがあります。日本酒のうま味を存分に味わいたいなら、40度前後のぬるい燗がおすすめです。山廃仕込みでは時間をかけて菌が根付くため、旨味や甘みのもとであるアミノ酸が豊富に含まれます。人肌程度の温度に温めることで、旨味や甘みがぐっと引き立つのです。また、山廃仕込みの日本酒は熱燗や冷酒のようにひと手間加える飲み方だけでなく、常温のままでもおいしく飲めます。しかし、お酒自体が持つ味のクセが強いので、日本酒が苦手な人は飲みにくいと感じる可能性があります。

山廃の味に合うおつまみは何?

濃厚でクセのある山廃の日本酒には、特徴が似た味のおつまみが合いやすいでしょう。山廃仕込みは、ワインと似た芳醇な香りや強い旨味、甘みや酸味などが特徴です。そのため、ワインに合う料理は山廃仕込みの日本酒にも合うことが多いといわれています。たとえば、ビーフシチューや牡蠣を始めとした貝類、カニを使った料理はワインを飲む際に合わせられやすい料理です。また、タレのかかった焼き鳥など、しょっぱさや甘辛さを強く感じるおつまみも、山廃仕込みの日本酒と相性がよいといわれています。もちろん、ハンバーグやだし巻き玉子のような家庭料理も、山廃との相性はぴったりです。

銘柄によって味わいは多少異なりますが、山廃の日本酒はずっしりとした深みのある味が強く感じられる種類です。お酒のコクがより引き立つよう、しっかりした味のおつまみとの相性がよいとされています。同じ魚類の料理であっても、白身魚なら西京漬け、刺身なら脂ののったマグロが合いやすいです。さらに、魚介類のバター焼きといったシンプルなおつまみも、バターの甘さと濃厚さ、魚介類の旨味が日本酒とよく合うでしょう。

まとめ

「山廃」仕込みは、文字を見ただけではどんな特徴かわかりにくいため、日本酒の初心者には敬遠されがちなお酒です。しかし、その味は濃厚で甘酸っぱく、日本酒の醍醐味をじっくりと感じられます。生酛造りとの味や香りの違いも探しながら飲めば、さらに楽しめるでしょう。山廃仕込みの特徴をきちんと理解すれば、風味にぴったりな飲み方やおつまみを選べておいしく飲むことができます。お酒に合うさまざまな飲み方やおつまみの組み合わせを試してみるのは楽しいですよね。また、同じ山廃仕込みの日本酒でも甘み・酸味・旨味などは銘柄によってそれぞれ異なります。山廃の持つ強い個性に合わせ、自分好みの「山廃」の飲み方を見つけてみましょう。

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