
「B.LEAGUE AWARD SHOW 2020-2021」レポート
2021年6月14日公開
6月6日のB3レギュラーシーズン最終戦をもって、今季のBリーグのシーズンがすべて終了しました。
宇都宮ブレックスと千葉ジェッツふなばし。リーグを代表するビッグクラブ同士で争われた「日本生命 B.LEAGUE FINALS 2020-21」は、ゲーム3にもつれる激闘の末に千葉が2勝を挙げ、初のチャンピオンに輝きました。
ゲーム1、2も言わずもがな、ゲーム3は本当に素晴らしい内容でした。個とチームの力を駆使して堅いディフェンスをこじ開け、1つのリバウンドやルーズボールで二度も三度も攻守が変わり……。素晴らしい試合を見せてくれた両チームに感謝の気持ちでいっぱいです。
ファイナルのアイコンとして取り上げられたのは、千葉ジェッツの富樫勇樹選手と宇都宮の比江島慎選手でしたが、本稿ではチームを支えた2人のベテランにスポットライトを当てたいと思います。
スレンダーな体を張ってチームのためにプレーした西村選手(写真左)
ファイナルズMVPを獲得したのはセバスチャン・サイズ選手でしたが、ぜひこれと同等の賞を授与して……! と大声で触れ回りたいのが西村文男選手です。
富樫勇樹選手のバックアップとして試合に出場した西村選手は、34歳のベテランガード。「選手では最古参(7季目)という意味で、苦しい時代からのジェッツを一番知っている」と話す西村選手は、その思いを発露するように、エース富樫選手が絶好調とは言い難かったこのシリーズを救う活躍を見せました。
富樫選手自身も、「どれだけ自分が悪くても、後ろに文男さんがいるということは心強いです。(宇都宮の流れを止めるためにした)3つ目のファールも、数年前だったらそのままレイアップに行かせてたかもしれません。文男さんを信頼しているから躊躇なく選択することができました」と話しています。
ビッグマンを生かす的確なゲームメイク、強気のアウトサイドシュート、ここぞというところでのディフェンス…。ベテランらしい妙技を試合のあちこちで発揮した西村選手は、CSに向けてもう1つ準備してきたものがあったと話します。
「自分の役割・仕事はもちろんあると思っていますが、それに加えて、自分のように普段おとなしいプレーヤーが泥臭いプレーを見せることでチームを勢いづかせたいという思いもありました。だから、CSは普段より体を張る場面を多くしたつもりです。体はあざだらけなんですけど、1つ成長できたと思えるところです」
レギュラーシーズン中の西村選手の1試合平均プレータイムは10.1分。例年よりも控えめな出場機会を見て、コンディションに不安があるのだろうか…と思っていましたが、大野篤史ヘッドコーチにはどうやら、大一番のために西村選手を温存する思惑もあったよう。「文男の体はガラスの体なので、レギュラーシーズン中は大事に大事に使ってきました。ファイナルは『四の五の言っていられないから頼むね』というところでしたが、期待にこたえてくれたと思います」とにこやかに話しました。
2年前のファイナル、あと一歩のところで優勝を逃したあと、西村選手は手で顔を隠し、長い時間うつむいたままベンチに座っていました。「チームとしての完成度も高くて、すごく自信を持ってた中での敗戦。さらに、個人的にチームに何も貢献できなかったという思いがありました」。当時の後悔を払拭するパフォーマンスを発揮した上で、”自分らしさ”の壁を飛び越えたフォアザチームを体現したこのシリーズに、西村選手のさらなるステップアップを見ました。
※余談ですが、天皇杯3連覇の際にも西村選手にフォーカスをあてた記事を書いていました。西村選手が持つ力についてもっと知りたいという方、よかったらご覧ください。
https://www.twellv.co.jp/program/sports/bleague/article2-bleague/basket_info-021/
西村選手、富樫選手、原修太選手は大野HC就任時からチームに所属している。
大野HCは「ずっと一緒にやってきた選手たちが喜んでる姿、成長している姿を見られたことが幸せ」とコメントしていた
比江島選手に声をかける遠藤選手
リーグ初年度以来のリーグ制覇を目指し、非常にクオリティの高いチームを作り上げてきた宇都宮は、1敗で臨んだゲーム2で千葉に完勝。ゲーム3も最後まで意地を見せましたが、あと一歩のところで力尽きました。
ゲーム3でトップスコアラーとなったのは、田臥勇太選手に次ぐ在籍年数(9年目)を誇る遠藤祐亮選手でした。この試合、遠藤選手は序盤から3ポイントシュートの決定率に苦しみましたが、それでも打ち続けることでリズムをつかもうとし、千葉に流れが傾きかけた第3クォーター終盤には、展開をイーブンに戻す2連続の3ポイントを沈め、横浜アリーナを沸かせました。
タイムアップまで残り1分を切ってもどちらが勝つかわからない、本当に白熱した試合でした。そのような試合を逃した選手たちの悔しさは、我々一般人には想像できないようなものでしょう。遠藤選手も、敗戦がほぼ確実となった残り4.2秒の場面ではヒザに手を置き、落胆したような様子を見せましたが、タイムアップ直後には小さな笑みを浮かべながら勝者を抱き、センターコートでは率先してチームメイトにハイタッチを送りました。
記者会見に登壇した際も、遠藤選手どこか吹っ切れたような笑顔を見せていました。悔しくないわけがない。なのになぜ彼はこのような表情でいられるのだろう……。そのように尋ねると、遠藤選手は言葉を選びながら以下のように答えました。
「誰が見てもいいゲームだったんじゃないかなと思いますし、自分もやっていて楽しかったです。もちろん足りないところがあったから負けてしまったわけですけど、最後の場面では、これが自分たちの今の現実なんだなと感じていました。この1年間、本当に楽しかった。チームメートともいろんなコミュニケーションを取りながら楽しく過ごせました。優勝できなかったのは悔しいですけど、自分たちのやるべきことはできたのかなと思います」
4年ぶりの戦いに挑むゲーム1前も、後がなくなったゲーム2前も、勝負が決まるゲーム3前も、遠藤選手は常に笑顔でチームの中心に立っていました。「遠藤選手って、言葉も表情もこんなに豊かだっただろうか…」と過去の記憶をたどりながら、精神面での成長についてもうかがいました。
「今季は気持ちの浮き沈みがけっこうあって、中盤戦くらいまでは自分のパフォーマンスが上がらないことに対してフラストレーションもあったんですが、終盤に差し掛かってきたタイミングで、自分のことよりチームを優先できる気持ちの余裕が生まれました。年齢的にも上の立場になってきましたし、たとえ自分がうまくいかなったとしても、他の誰かがやってくれる雰囲気は作らなければいけないと思ったんです」
会見時、遠藤選手の隣に座った比江島慎選手は、終始敗戦のショックを隠せない様子でした。前述の言葉を聞き、遠藤選手はもしかしたらそんな彼を気遣って笑顔を見せていたのかもしれないとも思いました。試合前の笑顔にも、会見中の笑顔にも、仲間を支えるようとする遠藤選手の思いを感じて胸が詰まりました。
「最後およばなかったのは自分たちに何か足りないことがあったから。ただ今は正直、それが何かはわからないです」。遠藤選手は素直な気持ちを打ち明けた上で、続けました。
「これを次につなげられるのが自分たちだと思います」
下部組織の育成契約から這い上がってきた”ミスター・ブレックス”が、この敗戦を糧にどのようなチームを作っていくかが楽しみです。
試合後、笑顔で西村選手を抱きしめる遠藤選手
***
これはあくまで個人の意見ですが、チームスポーツでキャリアを突き詰めようとする人たちは、必ずどこかで「自分の仕事ではない」とか「柄ではない」では済まされないシーンに遭遇すると感じています。
手に入れたいものがあるから、そして喜ばせたい人がいるから、彼らは汚れ役や嫌われ役を買って出たり、苦しくても笑う決断をする。そして、そんな選手がいるからチームは一枚岩として強くなっていく――。そのことを2人の選手に教えてもらったファイナルでした。
文:青木美帆
写真:🄫B.LEAGUE
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