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2020年7月13日公開 【連載】バスケの代理人・鴨志田聡さんインタビュー(3)

鴨志田さんにとって日本人契約第一号選手となった富樫勇樹選手(©鴨志田聡)

鴨志田さんにとって日本人契約第一号選手となった富樫勇樹選手(©鴨志田聡)

選手の移籍先探しや年俸交渉、契約のとりまとめを代行する「代理人(エージェント)」のお仕事について、FIBA公認エージェントの鴨志田聡さんに聞く当連載。最終回の今回は、鴨志田さんが代理人になるまでの経緯と、富樫勇樹選手(千葉ジェッツ)の海外挑戦の裏話についてうかがいました。

ライター、解説者、チーム広報……代理人以前の目まぐるしいキャリア

――鴨志田さんが代理人になられたのはいつですか?

本格的に活動しだしたのは2014年からです。

――代理人になるまでは、どういうお仕事をされていたんですか?

話すと長くなるんですが……。20代の頃は、「大好きなNBAに関わりたい!」との思いで、バスケとは別の仕事をしながら、NBA雑誌に記事を書いたりNBAのテレビ解説を行ったりしていました。

どちらも依頼されたのではなく直談判です。特にライター業のほうは、当時日本国内にNBAを書けるライターがいなかったこともあって、「自費でアメリカに行くので書かせてください!」とNBA雑誌の編集部にアピールして実現させました。

各媒体への売り込みに使用した資料たち。熱い思いが伝わる(©鴨志田聡)

各媒体への売り込みに使用した資料たち。熱い思いが伝わる(©鴨志田聡)

――おぉ…熱いですね。

会社から2週間ほど休暇をもらって、アメリカに行って、毎日移動して各地の試合を取材するというやり方でした。別に英語が堪能だったわけでもないので、あらかじめ用意していた質問を、完全なる一問一答形式で選手にぶつけていました(笑)。

その後もライターを続けながら、知り合いのツテでラジオ番組の構成作家をした後に、当時創設間近だった東京アパッチ(現東京サンレーヴス)のスタッフになりました。

――広報を務められていた当時は、私も大変お世話になりました。

日本に本格的なプロバスケットボールチームができると聞いて、いてもたってもいられなくて。戦評書きのアルバイトをやりたいと連絡をとったところ、広報全般を担当してくれないかとオファーをいただきました。けっして大所帯ではなかったので、スポンサー対応やチケットセールス、選手の送迎やトレーニングへの帯同など、いろんな業務を担当しましたね。

これまでの経験を生かし、代理人業がスタート!

――そろそろ代理人としてのキャリアが見えてきそうですか?

はい、お待たせしました(笑)。2010年にアパッチを離れ、外資企業でバスケと無関係な仕事をしていたんですけど、ふと、10年以上にわたったバスケ畑での経験がこのままゼロになることがもったいないと感じるようになったんです。

「今までの経験を生かしたバスケの仕事はないだろうか?」と考えたときに、思いついたのが代理人でした。アパッチ時代には外国人選手のケアを担当していましたし、選手のアメリカでのトレーニングに帯同するたび、「あの選手、日本でプレーさせたいな」なんて考えていたんです。

そこからFIBA公認の代理人資格を取得し、アパッチ時代につながりのあったチームに、外国人選手を売り込むようになりました。bjリーグは1チームの保有外国籍選手数が4人と多かったこともあって、外国人選手の需要が高かったんです。

――それこそ、海外のエージェントから売り込みがあってもよさそうなものですが……。

チームのフロントに、海外とのコネクションを持っている人があまりいなかったので、あっちのエージェントの情報をあまり持っていなかったのだと思います。

加えて、ゼネラルマネージャー(選手・スタッフの人事を担当する部署)という役職がまだ一般的でなく、選手獲得がヘッドコーチ頼みだったので、ヘッドコーチが変われば海外とのコネクションもすべてリセットというような感じ。そういう事情もあって、私が重宝されたという背景があります。

最初は会社に務めながら副業のような形でやっていましたが、そのうち毎年5~10人の外国人選手を紹介できるようになり、代理人一本でやっていく目処が立ったので、2014年に会社をやめました。

川村卓也、富樫勇樹のアメリカ挑戦をサポート

鴨志田さんが初めてサポートした日本人選手は川村卓也選手だった

鴨志田さんが初めてサポートした日本人選手は川村卓也選手だった

――本業になったことで、お仕事のやり方に変化はありましたか?

そうですね……。バスケットに触れる時間が増えたので、海外とのコネクションをより強くしたり、情報交換を頻繁に行えるようになりました。その中で、外国人選手を日本に連れてくるだけでなく、日本人選手を海外に連れて行きたいと思うようになりました。

海外の状況もずいぶんわかるようになったし、アパッチ時代にお世話になった海外チームから「エージェントになったんなら選手の資料くらい見てやるよ」というような声もいただいていたので。

第一号として、川村卓也(シーホース三河)をアメリカに連れて行きました。彼はすでに一度サマーリーグの出場経験を持っていたし、サイズのあるシューターとして現地の関係者からの評価も高かったんです。

僕が同行した年は、残念ながらサマーリーグに出場できませんでした。ただ、その後、あるNBAチームのヘッドスカウトが彼に興味を持って、彼を見るためだけに選手を集めて、5対5をセッティングしたんですよ。

――確認ですが、川村選手とは代理人契約もしていたんですか?

いえ、川村はアメリカに連れて行くだけの契約ですね。代理人としての日本人第一号は富樫勇樹(千葉ジェッツ)です。

――ぜひ、エピソードを聞かせてください!

テキサス・レジェンズ川村の次に、海外で可能性があると思ったのが、富樫でした。当時は本人との面識はなかったですが、2013-14シーズンのオフにどうしてもアメリカに連れて行きたくて、2月くらいからアメリカの関係者に映像資料を送ったりして、下準備を進めていました。

アメリカ方面からよい反応があったのを確認してから、もともとツテがあった秋田のスタッフを介して、富樫にコンタクトを取りました。「アメリカでトレーニングをしながら、NBA関係者に見てもらいましょう」と説明すると本人も乗り気だったので、ファイナルが終わるとすぐに渡米しました。

富樫勇樹@NBAサマーリーグ、驚きの舞台裏

日本人4人目のサマーリーグ出場を果たした富樫選手(©鴨志田聡)

日本人4人目のサマーリーグ出場を果たした富樫選手(©鴨志田聡)

――このオフ、富樫選手はダラス・マーベリックスのロスターまであと一歩というところまで行き、日本中のバスケットボールファンを興奮させましたね。

先ほどお話したように、当初の渡米の目的は自主トレーニング。マーベリックスのスカウトにプレーを見てもらって、2週間で帰国する予定でした。ところが、このスカウトが想像以上に富樫を気に入ってくれて。帰国直前のタイミングで、GMのドニー・ネルソンから「サマーリーグ前のキャンプに来ないか?」と直々に連絡を受けたのがすべての始まりでした。

キャンプに集められたのは富樫を含めて19人。4日間のキャンプで4人をカットして、サマーリーグには15人で参加することになっていました。アメリカ人選手が、とにかく自分の個人能力をアピールしようとする中で、富樫はオープンになった選手に確実にパスを出した。日本のポイントガードにとっては当たり前のスタイルですが、アメリカのコーチ陣の目にはすごく新鮮に映ったようです。

そして、富樫は15人に残りました。連絡を受けた時はとてもうれしくて、本人にもめちゃくちゃもったいつけて伝えたのに、「あ、はい。わかりました」ってめちゃくちゃ普通の反応で(笑)。

抱き合って喜ぶくらいのことをしたかったので残念でしたが、おそらく本人は、力量を発揮できたという実感を持っていたんでしょうね。肝っ玉が据わっているやつだなあと思いました。

――なんといいますか、とても富樫選手らしいです(笑)。

マーベリックスでのロスター入りは残念ながら叶いませんでしたが、その後、NBA下部リーグ(Dリーグ)のテキサス・レジェンズと契約を結ぶタイミングで、私が代理人を務めるようになりました。

NBA下部組織のテキサス・レジェンズと富樫選手の契約書(©鴨志田聡)

NBA下部組織のテキサス・レジェンズと富樫選手の契約書(©鴨志田聡)

せっかくなので、もう1つエピソードをご紹介しましょうか。実は富樫は、アメリカに行く飛行機で風邪をひいたんです。機内の冷房にやられて、おそらく熱も相当出ていました。スカウトに見てもらうまでの2週間でしっかりコンディションを戻そうと考えていたところ、なんと「予定を変更して3日目に行く」と連絡が来てしまって、大いにあわてました。

その日の朝も、富樫は食事もとれないフラフラの状態で、「とてもプレーできない」と訴えていました。でも、この日を逃せば、NBA関係者に直接プレーを見てもらうチャンスは来年まで訪れません。「今日だけだからがんばろう」と励まし、なんとかプレーしてもらった結果、上のようにすごく気にいってもらい、当初の2週間予定を大幅に超える、充実したアメリカ滞在となりました。

――富樫選手の飛躍には、鴨志田さんの励ましが大きく影響していたのですね。たくさんの貴重なエピソード、本当にありがとうございました!

画像:B.LEAGUE、青木美帆
文:青木美帆

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