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2020年4月22日公開 3.15~無観客試合の空気感

3.15~無観客試合の空気感

無観客ながら、アリーナ内は普段通りの装飾がなされていた
 
新型コロナウイルスの影響で、Bリーグの全シーズンが中止となり、間もなく1カ月が経とうとしています。

この1カ月足らずの期間で、私たちを取り巻く状況は深刻さを増しています。バスケットボール界隈では、大阪エヴェッサの選手とスタッフが集団感染し、Bリーガーだけでなく部活生たちも活動が中止に。大都市圏では、週末に気軽に外出することさえもできなくなりました。

そして、3月14日と15日に、おそらく日本バスケ史上初めての無観客試合が行われたことも、今や遠い話のようになってしまいました。

この2日間、私は川崎ブレイブサンダース×レバンガ北海道を取材するために、とどろきアリーナに足を運びました。14日は、これも史上初だろう試合開始直前での中止決定がなされ(詳細はこちらの記事にまとめています)、翌日はスケジュールどおり試合が実施されました。

かなり日が経ってしまいましたが、この試合がどのような状況で、どのような空気の中で行われていたか……。会場への入場が許されたメディアの1人として記録しておきます。

試合前
本来なら多くの人で賑わっていたはずのとどろきアリーナ前

本来なら多くの人で賑わっていたはずのとどろきアリーナ前
 
13時半。リーグから「今日の試合は予定どおり実施する」というメールが届く。

会場の雰囲気を少しでも感じられたらと、試合開始予定時刻の約2時間前にとどろきアリーナに到着。普段ならとっくに開いているはずの会場の扉は閉じられたままで、その前で報道陣が列をなしていた。「今節の開場は1時間前です」。クラブからそんな連絡があったのをすっかり忘れていた。

無観客試合。オープニングアクトもイベントも何もないのだから当然だ。

開場を待つ間、リーグ関係者があわただしく電話をかけている様子を数度見かけた。「今日も中止になるのだろうか」と思ったが、予定通り扉が開かれ、前日と同様にアルコール消毒・検温を経て受付が開始した。

13時半の「実施」リリースに至るまでに、両クラブにどのような動きがあったのか。試合後の取材をもとに一端をお伝えしよう。

●北海道
朝の検温で、マーク・トラソリーニ選手が37.0℃、ケネディ・ミークス選手と市岡ショーン選手はそれぞれ36℃台。リーグの競技運営部に報告すると、午前中のうちに「夕方の試合を実施する」という旨の連絡を受ける。3選手は会場入りさせず、チームドクターの指示を受けた上で、別々のタクシーに乗せて北海道に戻らせている。「Bリーグの行動指針ガイドラインの規則上問題はありませんでしたが、選手の安全が100パーセント確保されているわけではありませんでした。疑いが1パーセントでもある限りは、会場には連れてこさせないと判断しました」(横田陽CEO)

●川崎
選手たちのもとに、試合を実施するという報告が届いたのは12時過ぎ。元沢伸夫社長と北卓也GMより、実施決定に至った経緯と、この試合以降のリーグの見通しについて説明を受けた(リーグからは、この日の翌日、シーズンの実施を改めて検討し直すという連絡があった)。「クラブとしては、やると決めたからには全力でやってほしい。ただ、ためらいや不安がある人は遠慮なく申し出てほしい」との言葉に、選手たちはそれぞれの思いを吐露。その末に、全選手がユニフォームを着る決断をしたという。

試合中

BGMとアリーナMCのおかげで、さほど違和感なく試合は進んでいった。ただ、フリースローの時だけは違った。

スピーカーのノイズ、審判が打ち合わせする声、実況・解説の声、シュート直前に選手が吐く小さなため息、そしてスウィッシュの音。今まで試合中に一度も聞いたことのない音が、そこではたくさん聞こえた。

篠山竜青選手は、左ヒジの脱臼から3カ月ぶりにコートに戻ってきた

篠山竜青選手は、左ヒジの脱臼から3カ月ぶりにコートに戻ってきた
 
普段閉じられているロビーとアリーナをつなぐ扉は、換気のために開けられていた。どんな好プレーがあっても、会場の温度を上げてくれるファンたちもいない。ベンチに控える選手たちが寒そうに手をこすり合わせ、足踏みしている様子も印象的だった。

川崎のホームアリーナMCを務める高森てつさんは、無観客の会場でもいつものようにMCを行った。

試合の状況を見つめる高森てつさん(©KAWASAKI BRAVE THUNDERS)

試合の状況を見つめる高森てつさん(©KAWASAKI BRAVE THUNDERS)
 
「アリーナ MC は、会場の空気感やボルテージに合わせてコメントを選択し、アナウンスしますので、ファンのみなさんの反応を体感できずに進行することは非常に困難でした。また、川崎のホームゲームでは、フリースローが 2 本もしくは3 本連続で成功すると『YO!ナーイス』とアナウンスをするのが定番なのですが、無観客の静寂の中、どこまでもその声はアリーナに響き、寂寥感に襲われることは否めませんでした。ただ、画面の向こうで川崎ファンのみなさんが一緒にコールをしてくれていると信じ、実施しました。

すべての業務を終えた後も、普段と異なる疲労感などは感じませんでした。ただ、本音を話しますと、何が正解か分からず不安定な気持ちがあったことは否めません。この試合は篠山竜青選手の復帰戦であり、新加入のパブロ・アギラール選手のデビュー戦でもありました。チームの勝利も含め、川崎ファンのみなさんとその喜びを共有したかった。そう強く思いました」

試合は91-71で川崎の勝利に終わった。北海道はインサイドプレーヤーが3人欠場し、戦術的にも精神的にも圧倒的不利な状況にあったが、それでも最後まで毅然と戦い抜き、川崎もそれに応えた。

試合後に行われる、両チームの選手によるシェイクハンズは、当然省略された。両チームの選手たちは、大きく距離をとりながら、何度も何度も、惜しむように手を振り合った。

前日に体調不良者が出て、試合が中止にまでなっていたのだ。もし彼らの中に陽性者がいて、北海道の他の選手たちに感染が広がっていたら。そして、この試合を実施したことで、川崎の選手たちにもそれが広がっていたら……。

みな、不安な気持ちを抱えながら、それでもプロバスケットボール選手としての責務を果たすために戦い抜いたのだということが、その時の選手たちの様子や表情から痛いほど伝わってきた。胸に詰まる光景だった。

「首の皮一枚」(内海HC)の状況で、北海道は気丈に戦った

「首の皮一枚」(内海HC)の状況で、北海道は気丈に戦った
 

試合後

北海道の内海知秀ヘッドコーチ、川崎の佐藤賢次ヘッドコーチ、篠山竜青選手が記者会見を実施した。

マスクを着用したまま記者会見に登壇した内海ヘッドコーチ

マスクを着用したまま記者会見に登壇した内海ヘッドコーチ
 
「ある意味『首の皮一枚』という状況にも関わらず、選手たちはしっかりとバスケットに向き合い、コートで表現してくれたと思います。また、川崎さんも選手、スタッフともに真剣にバスケットに取り組んで試合をしてくれた。感謝しています」

その後もコメントは続いたが、それは、常に冷静に理路整然と言葉を発する内海HCのものとは思えないほど、要領を得ないものだった。そして、小さく、か細く、時に言葉に詰まり、震えていた。オリンピックの舞台を経験した名将であっても、今回の2試合には、それだけ整理のできないたくさんの思いを抱えていたことがよく感じ取れた。

囲み取材でも、様々な選手から葛藤や不安についてのコメントがあった。みな、プロ選手としての責任と、家族や近しい人々への感染リスクの間で揺れていた。

リーグ関係者や両チームの社長にも話を聞いた。この試合の実施の是非についての明確な答えは、誰からも出なかった。その中でも一番端的だったのが、篠山選手のコメントだった。

「今日、試合を実施したことが正解だったかを決めるのは、今は難しいと思います。数年後に振り返った時に、初めて判断できるのかなと。今後、同じような局面に遭遇した時に、今回の例を生かして、より良いリーグやクラブに成長していくしかないと思います」

***
Bリーグの2020-2021シーズンは、10月に開幕を予定している。このタイミングまでにコロナウイルスが収束している確証はどこにもなく、引き続き無観客試合という対応がとられる可能性も大いに考えられる。

大河正明チェアマンは4月14日のメディアブリーフィングにて、「試合開催の判断基準、感染予防は、リーグ、クラブ、選手たちが一枚岩となり、真摯に話し合いを重ねて決めたい」とコメントした。3月14、15日の2日間、日本各地で行われた無観客試合の教訓が、来季、そして遠い未来に確かに生かされることを、切に願っている。

文=青木美帆
写真=B.LEAGUE、KAWASAKI BRAVE THUNDERS

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