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2019年12月23日公開 新世界への助走 ~牧隼利(筑波大→琉球)の場合

筑波大のキャプテンとしてチームを3年ぶり5回目の優勝に導いた牧隼利

筑波大のキャプテンとしてチームを3年ぶり5回目の優勝に導いた牧隼利

12月9日〜15日に開催された全日本学生選手権(通称「インカレ」)は、男子は筑波大、女子は東京医療保健大の優勝で閉幕しました。

大学バスケ生活を終えた4年生たちは、さっそく次のステージに向けて歩み始めています。当コーナーでは数回にわたり、Bリーグ入りを目指す彼らにまつわる話題をお届けします。第一回は、筑波大を優勝に導き、琉球ゴールデンキングスへの加入が発表された牧隼利選手です。

責任感の強さゆえに悩み続けた男

秋のリーグ戦は後半戦で失速し、5位。チームも牧も苦い経験をした

秋のリーグ戦は後半戦で失速し、5位。チームも牧も苦い経験をした
3年ぶりの全国制覇。その喜びから一息ついたタイミングで、筑波大の吉田健司ヘッドコーチは昨年から抱いていた「ある後悔」を口にした。
 
昨シーズンの初冬のこと。筑波大はリーグ戦で、4年生で主将の波多智也(現・富山練習生)が大けがを負い、シーズン中の復帰が絶望となった。吉田HCはシーズン最後の大一番に向けて、強いリーダーシップを持つ波多をチームキャプテンに残しつつ、試合中のリーダーをつとめるゲームキャプテンに、プレータイムの多かった3年生の牧隼利を任命した。
 
チームの精神的な柱はあくまで波多。牧は試合中にコートの中で起こることに対してだけ責任を持ってくれればいい。それが吉田HCの思惑だったが、事態は思わぬ方向に進んだ。
 
「牧は責任感が強いから、ゲームだけでなく練習でも他の部分でも、すべてのことを自分がやらなきゃいけないと背負ってしまったんです。上級生のメンバーがいるにも関わらず、下級生の自分がしゃしゃり出ることに対しても、思うところがあったはずです。そういう意味では、私が彼を追い詰めてしまった部分もあると思います」
 
牧は去年のインカレから、自分はあまりキャプテン向きではないという自己評価をコメントしていた。あれから約10カ月。リーグ戦を戦う彼に、その後の変化や気づきについて尋ねてみると、相変わらず渋い表情で「僕はまわりに厳しいことをあまり言えないタイプで。それでも言える選手に変わろうとは思っているんですけど」と話し始めた。
 
「もともと自分のキャプテンシーに自信がないので、考え込んじゃいますね。ただでさえ、先輩のヤッさん(青木保憲=川崎ブレイブサンダース)や生原さん(生原秀将=横浜ビー・コルセアーズ)みたいなすごいキャプテンを見てきているので、自分のことながら、いまだに『本当に俺で大丈夫か?』って思っちゃうような時もあります。もちろん、やり切るしかないとは思ってるんですけど……」
 
そんな心の揺らぎは、プレーにも連鎖していた。「そんなに意識しているつもりではないれど、キャプテンという立場になって、どうしてもプレーを置きにいってしまっているというか」。強い体とシュート力を活かした攻撃力が影を潜め、よく言えば”まわりを活かす選手”、悪く言えば”何が武器なのかがよくわからない選手”になっていた。
 
インカレに向けていい雰囲気を作りたい。そんな思いで戦ったリーグの最終2試合も、どちらも接戦の末に、自分たちの悪い形が出て敗れた。吉田ヘッドコーチは「攻守のシステムの穴を相手に突かれていたことが敗因。選手たちだけで対応できるものではなかった」と説明したが、牧の認識は違う。「どんどん考えすぎてドツボにはまって、チームとしてやりたいことを見いだせずに終わってしまいました」と沈んだ表情で答えた。

決して折れない姿がチームを巻き込んでいった

一昨年は準優勝、昨年は4位。ようやく手に入れた日本一に牧は泣いた

一昨年は準優勝、昨年は4位。ようやく手に入れた日本一に牧は泣いた
リーグ戦閉幕からインカレ開幕までは、およそ1カ月ほどの期間が空く。リーダーとは、自分らしさとは一体何なのか……。自らのアイデンティティに深く根ざす問いに対し、牧がこの期間でどんな答えを出すのか。筆者の、インカレ取材における大きなテーマの1つだった。
 
結論を先に言うと、牧はきちんとこの問いに答えを出して、”日本一”のキャプテンになった。
 
閉会式後、記者に「後輩たちはあなたをどんな先輩だと思ってるんでしょうね」と向けられると、牧は「たぶんナメてると思います」と笑いを誘ったのちに「最終的に見えた理想のリーダー像は、自分が気持ちを見せ続けて、色々なアクションを発信していくことです。インカレでは、それを感じ取った3年生以下が変わってくれました」と続けた。
 
記者会見で、菅原暉(3年)はこう言った。「牧さん、増田さん(啓介)とはずっと一緒にプレーして、ずっとつらい思いばかりしてきました。だから最後は何としても勝たせたいという思いがとても強かったです」
 
菅原ら3年生は、チームの立て直しに奮闘する4年生の姿を見て、その思いを自らたちもつなぐべきだと話し合い、練習中の雰囲気づくりを手伝った。会見に同席した山口颯斗(3年)、井上宗一郎(2年)も「4年生を絶対優勝させたかった」と言葉を重ねた。
 
厳しいことを言うのは得意でない。圧倒的なプレーで仲間を勢いづかせるタイプでもない。牧の自己評価は何につけても低めではあるが、それでも悩み、苦しみながらも前に進み続ける姿を見せ、仲間を動かしていった。牧から4年生へ、4年生から3年生へ、3年生から下級生へ――。牧の思いは同心円のようにチームに伝わり、つないだ手は強固な鎖となった。

大会MVPに選出された瞬間、牧は首を傾げた。「そんなに活躍してないし、俺かなー?って思ったんです」

大会MVPに選出された瞬間、牧は首を傾げた。「そんなに活躍してないし、俺かなー?って思ったんです」

リーグ戦の最中から、牧には何度もリーダーに関する質問を投げかけてきた。そのたびに苦しい言葉を吐き出してきた彼が、殻を破っていくまでの過程を見られたことは、取材者として幸せな経験の1つとなった。「答えをちゃんと出せましたね」。筆者の言葉に対し、牧は彼特有のはにかんだような笑顔で、力強くうなずいた。
 
※追記)
12月22日、琉球ゴールデンキングスが、牧選手がチームに加入することを発表しました。牧選手はすでにチームへの帯同をスタートさせているようです。
 
牧選手は新しい挑戦への課題として、ディフェンスとボールハンドリングを挙げつつ、「これからは2番(シューティングガード)や3番(スモールフォワード)としてがんばらなきゃいいけない」と将来について見据えていました。
 
自身が挙げた課題を1つずつクリアし、さらなる成長を祈念しています!

高校、大学と7年にわたり苦楽を共にしてきた増田啓介(左)とはライバルになる。「相手にいたら相当厄介だと思う。これからも刺激を与えあってがんばりあえる間柄でいたい」と話してくれた

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写真・文=青木美帆

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