
馬場選手の運動能力を生かしたダイナミックなパフォーマンスは、世界最高峰の舞台でどこまで通用するか!?
開幕を間近に控えたBリーグに、うれしいビッグニュースが飛び込みました。アルバルク東京の馬場雄大選手が、NBAダラス・マーベリックスと契約を結んだのです。
W杯を終え、中国から馬場選手が帰国してきたのが9月10日。その一週間後の17日に記者会見を開き、翌日渡米し、2日後の20日に契約締結……。嵐のようなスケジュール感ですね。
「田臥、八村、渡邊に続く4人目の日本人NBA選手が誕生するのか…!」と思わず興奮してしまいそうになりますが、今回の契約と開幕戦のロスター(登録選手)に残れるかはまた別の話なのでご注意を。馬場選手はこれからチームのトレーニングキャンプに参加し、15人というわずかなロスターを勝ち取る厳しいチャレンジに挑みます。
私が馬場選手のことを知ったのは、2011年のU16アジア選手権だったと記憶しています。
国際大会に出ても、世界の高さやフィジカルに臆してしまい、アウトサイドからのシュート傾向が強かった世代別日本代表。しかし馬場選手は、脚力と体の強さを生かしてどんどん相手選手にぶつかり合いを挑み、フリースローを山のように積み重ねていました。その姿に、新しい日本バスケのあり方を予感したのを、よく覚えています。
高校2年次には飛び級でU18日本代表に選出され、進学した筑波大でもインカレ3連覇を達成。大学4年時に部を退部し、アルバルクに入団してからの活躍は、みなさんも知るところでしょう。
Bリーグ加入2シーズン目の昨年は、弱冠23歳にしてファイナルMVPを獲得。豪快なダンクも繰り出した
確か2年前の冬のことです。日本のバスケットに関わる人たちとお酒を酌み交わしたときに、ある方がとても面白いことを言っていました。
「日本代表にはもっとヤンキー魂が必要だ。馬場選手にはそれを強く感じる」
この方が言う「ヤンキー魂」とは、どんな相手と対峙しても、臆することなく立ち向かう気概のことです。漫画「スラムダンク」でいえば、主人公の桜木花道のメンタリティが近いところでしょうか。
日本人の国民性もあるのかもしれませんが、確かに日本のプレーヤーは、明らかに大きい、能力があるという選手に対して精神的に萎縮し、思ったようなプレーができなくなる傾向が強いように感じていました。ところが馬場選手はU16時代から、どんな大きな相手が立ちはだかっていても果敢にゴール下に突っ込み、「自分」をアピールしていました。Bリーグに加入してからも、外国籍のビッグマンを意に介すことなくアタックを繰り返し、ダンクを叩き込み、なんなら彼らと睨み合いになることも珍しくありませんでした(笑)。
以前、こういったメンタリティの持ちようについて、実際に馬場選手に話を聞いたことがあります。すると馬場選手は、こんな風に話してくれました。
「日本代表としての経験があってこそですかね。国を代表して戦った経験があるからこそ、国内リーグでも外国籍選手たちになめられないように、日本人選手として覇気を出してやっていかないといけないと思っています。だから怖さはありません。そもそも、昔から負けず嫌いなんですよね。自分が納得いないこととか負けたくないことに関しては、誰でも、年齢も関係なく突っかかるタイプでした」
先日のW杯でも、多くの選手が自分を見失ったプレーを繰り返す中で、馬場選手は持ち味を生かしてゴールにアタックし続けました。アメリカ戦ではチームハイの18得点を挙げ、「やりきった」と言わんばかりの清々しい表情で報道陣に対応する姿が印象的でした。
アルバルク東京の林邦彦社長(左)と共に記者会見を行った馬場選手。「アルバルクの2年間がなかったら僕はここに座ってることは絶対できない」とクラブへ深い感謝を述べた
高校時代から掲げた「NBA」という目標に、あと少しで手が届く場所にたどりついた馬場選手。アメリカを経由してNBAにたどり着いた3選手とは異なり、”国内トップリーグからNBA”という、新たな潮流を作り出した意義は、今後の日本バスケ界にとってもとても大きなことでしょう。
17日の記者会見で、「NBAという世界最高峰のリーグでも、強いメンタリティを発揮することは可能だと思いますか?」と尋ねると、馬場選手はこう言いました。
「僕は本当に負けず嫌いなので、アメリカでもやられたらやり返すつもりです。日本人魂を見せつけたいと思います!」
鋭く尖らせた自分だけの一本刀を携え、NBAに切り込んでいく馬場選手。世界最高峰の舞台でその魂が発露する瞬間が、今から待ち遠しいです。
文=青木美帆
写真=B.LEAGUE、青木美帆
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