
BS12 トゥエルビで放送中の『ザ・カセットテープ・ミュージック』で、80年代歌謡曲の優れた論評をくり広げるマキタスポーツ氏とスージー鈴木氏が、同世代のビジネスパーソンに「歌う処方箋」を紹介するこの企画。今回のテーマは、ずばり「お金」。家族の生活費や子どもの教育費、さらには自分の老後の準備など、何かと「お金」が必要になるアラフィフのオヤジ世代は、お金とどんな付き合い方をすればいいのか。折り返し地点を過ぎた残りの人生を豊かにするために、お金との付き合い方のヒントをくれる曲について、マキタ&スージーが伝授してくれた。
――今回のテーマは「お金」です。どちらから始められますか?
スージー鈴木(以下:スージー):では、私から。1曲、ご用意しました。1986年に発表された佐野元春のアルバム『Café Bohemia』に収録された『月と専制君主』(作詞・作曲:佐野元春)です。
マキタスポーツ(以下:マキタ):あぁー! そうきたかぁ。
スージー:そんなにメジャーな曲じゃないですけどね。
マキタ:マニアックですよね。僕は好きですけど。
スージー:この曲のお薦めポイントは何かというと、アラフィフになってくると、お金のことがしんどくなっていくんで、お金がかからない喜びというものを知れば、大切なお金を担保しながら、人生を楽しめるんじゃないかって。
――ほぉ。
スージー:こういう歌詞です。
〽 眠りにつく
あの専制君主の目を盗み
今が、チャンスだぜ
思いのたけ
奴らの悪口をたたけよ
言葉に税はかからない
マキタ:あぁ、出たね。
スージー:この歌で私が伝えたいことは、アラフィフ世代が定年を迎えた後も、お金をかけずに、もっとしゃべっていいんじゃないか、メッセージを発信してもいいんじゃないか、ツイートしてもいいんじゃないですかっていう、これまでにもこの対談で語られてきた「オヤジ世代は、もっと表現しようよ!」っていうメッセージです。
マキタ:うん。
スージー:歌詞のなかで特に注目したいのは、「言葉に税はかからない」です。お金はなくてもメッセージは発信できる。多忙な仕事から解放されて、時間があるならば、ツイートするなり、フェイスブックを書くなり、好きなように表現できる。自作の曲をユーチューブに乗せるのも簡単ですよ、と。
マキタ:うん、うん。
スージー:オヤジ世代は今こそクリエイティブするべきだ、お金はかかりませんよ、と。
マキタ:(佐野元春風の歌い方で)こぉとぉばぁに、ぜぇいは、かかぁらぁなぁいぃ~……ですよね。
スージー:その前に「思ぉいのたけ、やつぅらの悪口をたぁたぁけよ」とか、歌ってる。
マキタ:そう、そう。
スージー:団塊の世代の定年後の話って、ともするとなんか保守的になりがちなんですけど、かつては学園紛争で、ゲバ棒とか持って、めっちゃ怒ってたわけじゃないですか。
マキタ:うん、うん。
スージー:そのゲバ棒が、今はそば打ち棒に変わってる人もいる。“怒れる若者”がなんで“怒れるジジィ”にならないのかって。
今回のテーマは「これ!」
――では、マキタさんが読者にお薦めする「お金にまつわる曲」は、なんですか?
マキタ:僕は、2010年にリリースされた森山直太朗の未発表曲集『レア・トラックスvol.1』に収録されている曲です。
――マニアックなところを突いてきましたね。
マキタ:実に美しいメロディーでね(と言うと、森山直太朗風に、澄んだ爽やかな声でバラードを歌い始める)さぁ~あ~っきぃ~~まで~~。
一同:(聴きほれる)
――さすがは森山直太朗、すてきな歌い出しですね。で、マキタさんが「お金」というテーマで読者にお薦めしたい、その曲のタイトルは?
マキタ:「うんこ」(作詞・作曲:森山直太朗、御徒町凧)です。
――えっ?……うん……こ!?
スージー:いやぁ、知らない曲だなぁ。
マキタ:知りません?
――はぁ、私も知りません。
マキタ:割と哲学的な歌詞でね。
〽 さっきまで
体の中にいたのに
出てきた途端
いきなり嫌われるなんて
一同:(なんなんだ……)
マキタ:そして、こう続きます。
〽 やっぱりお前は
うんこだな
これで終わるんですけど。
スージー:なるほどぉー。
マキタ:1分20秒くらいの短い曲で、本編よりも、歌の部分が終わってからのアウトロの方が長いんです。そのアウトロのストリングスとかが、グワァーっときれいに流れていくんですけど、それが、最後、うんこがきれいに流れていくみたいに感じさせる。
一同:(笑)
マキタ:この歌詞については、哲学的に考えてほしいんです。
――と言いますと?
マキタ:そもそも、「うんこ」っていうのは、出ないといけないですよね。
スージー:出ないといけないです。
マキタ:生物は、食べるだけじゃなくて、出さないといけないですからね。
――もちろん。
マキタ:ちょっと尾籠(びろう)な話になってしまうかもしれませんけど、なんか、良き食事をとらないと、良き排便ってできないらしいんですね。
スージー:(小さくうなずく)
マキタ:営みとして、人間もこれを避けて通ることができないわけです。
スージー:(大きくうなずく)
マキタ:この歌では「さっきまで体の中にいたのに、体の外に出てったら『うんこだぁ!』って嫌われる存在」って、ちょっと懐疑的な感じで歌われる。
――はい。
マキタ:なんか、うんこって、ただ“汚いもの”として語られるべきものじゃないんじゃないかって。ほら、ありません? 長い暮らしの中で見事なうんこができたときって。
スージー:最近は、洋式便所だから、形を確認しにくいですが、昔の和式時代に、ありましたよね。
マキタ:あったでしょ? 素晴らしい……なんていうのかな……。
スージー:造形的に美しいうんこ。
マキタ:そう。そんとき「うんこが俺を脱いだ!」みたいな感じがするんですよ。
スージー:うわぁ、哲学的だ。サルトルの世界ですね。ジャン=ポール・サルトルの実存主義だ。
マキタ:なんかね、“僕”っていう存在は“観念的な生き物”なんですけど、実はそうじゃなくて、実在する僕は単なる「うんこの通り道」みたいな。
一同:(感嘆して)ほほぉ~。
スージー:実存的だなぁ。
僕は単なる「うんこの通り道」みたいな……
マキタ:でね、「お金」の話なんですけど、「お金」っていうのは、人間の脳が作り出した概念じゃないですか。
スージー:はい。
マキタ:「お金」と「うんこ」って、両方とも「人間が作り出したもの」なんです。だから、「お金」も入ってこなくちゃいけないけど、出していかなくちゃいけないものでもあるわけです。
スージー:うん、うん。
マキタ:そして、人間は「お金」を稼いで、それを「栄養」に変えて、自分の体に与えている。
スージー:うん、うん。
マキタ:「お金」は、稼ぐばっかりじゃなくて、ちゃんと使わないといけない。だから、「人間は、いいお金の使い方をするために働く」っていう考え方のほうが良くないですか?
――なんとなく、分かります。
マキタ:不景気だからって、財布のひもを締めて、そんなに稼げねぇからって、なるべくためて、ためて……なんて考えないで、「お金」自体を「いいうんこ」だと思って、自分が好きなものに全賭けするかのように、大きな買い物をしたっていいと思うんです。
スージー:(黙って深くうなずく)
マキタ:そういう気持ち良さって、大切なんじゃないかな。自分の体を「お金の通り道」だと考えた方が、いい経済の循環を生み出すんじゃないかと思うんです。
――いいうんこを出さないと、いいものは食べられない……とすれば、いいお金の使い方をしないと、いいお金を稼ぐことができない、ということですね。
マキタ:そうそう。
スージー:そうですよね。
マキタ:「お金」って、なんか“汚いもの”っていうイメージもありますよね。
スージー:ありますね。
マキタ:「お金」に対するコンプレックスが、そうしているだけかもしれない。
――はい。
マキタ:でも、今の世の中で生きていくためには、人間の生活にとって経済は切り離せないものですよ。僕もある程度「お金」を稼ぐようになったとき、「将来のためにお金をためよう」とかって、すごく思ってた時期があったんです。
スージー:うん。
マキタ:だけど、しばらくして、「やっぱり、少しちがくねぇか?」って思いました。
――アラフィフのオヤジ世代にとって「お金をためることが必ずしも“いい選択”ではない」ということでしょうか。
マキタ:なんか「いい消費」っていうか、自分にとって「いい買い物」とかしてるほうが、経済の中で「自分がお金の通り道」だと実感できて、健康的な感じがするんですよ。
スージー:確かになぁ……。
(つづく)
(構成/佐保 圭)
日経トレンディ2018/12/23掲載
前回は、クイーンの『Somebody To Love』のなかで、フレディ・マーキュリーがピュアな思いを歌い上げることの中にこそ「希望」がある、とマキタ氏が熱弁した。後半は、スージー氏が名曲『ボーイズ・オン・ザ・ラン』に喚起される「オヤジ世代の永遠の少年性」の中に「希望」を見いだす。
80年代歌謡曲の優れた論評をくり広げるマキタスポーツ氏とスージー鈴木氏が、同世代のビジネスパーソンに「歌う処方箋」を紹介するこの対談も、いよいよ最終回を迎える
「お金」をテーマとした対談の前半戦は、スージー氏の「アラフィフは、お金をかけずにもっと発信しよう!」というメッセージのあと、マキタ氏の「人間は単なる“うんこの通り道”」という問題提起によって、一気にヒート・アップ! 対談の後半戦では「お金」と「うんこ」の類似性に触れながら「オヤジ世代の理想の“お金の使い方”」へと議論が深化する。
前半では、スージー氏が「騒動の理由は沢田研二が筋の通らないことに激怒したから」という持論を展開。それを受けて、後半では、マキタ氏が「ある程度の年齢に達した人間は、ジュリーのように生き方をシンプルにするべきではないか」という“オヤジ世代が学ぶべき人生論”を読者に問いかけた。
今回のテーマは「沢田研二に“オヤジ世代の美学”を学ぶ」。2018年10月17日、70歳記念全国ツアーのさいたまスーパーアリーナ公演を直前になって突如中止したジュリーについて、世間ではさまざまな批判が飛び交い、騒動となり、ジュリーは謝罪会見まで開くことに……。しかし、本当にそれで良かったのか? オヤジ世代の代表として、ジュリーを応援するマキタ&スージーが、軽々しく「沢田研二」を批判する風潮に物申す!
前回の「レベッカの『MOTOR DRIVE』に刺激を受けて、やりたいことをやって健康になろう!」というスージー氏の話とはうって変わって、マキタ氏は山下達郎の名曲から受け取る「祈り」や「感謝」の話を基に、情報が氾濫する現代社会の病理に鋭く切り込み、オヤジ世代が求めるべき「健全な感性」の大切さを訴えた。
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