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2018年12月23日掲載 佐野元春と森山直太朗が教えてくれた「お金」の意味

佐野元春と森山直太朗が教えてくれた「お金」の意味

日経トレンディ2018/12/23掲載
BS12 トゥエルビで放送中の『ザ・カセットテープ・ミュージック』で、80年代歌謡曲の優れた論評をくり広げるマキタスポーツ氏とスージー鈴木氏が、同世代のビジネスパーソンに「歌う処方箋」を紹介するこの企画。今回のテーマは、ずばり「お金」。家族の生活費や子どもの教育費、さらには自分の老後の準備など、何かと「お金」が必要になるアラフィフのオヤジ世代は、お金とどんな付き合い方をすればいいのか。折り返し地点を過ぎた残りの人生を豊かにするために、お金との付き合い方のヒントをくれる曲について、マキタ&スージーが伝授してくれた。

表現するのにお金のかからない時代

――今回のテーマは「お金」です。どちらから始められますか?

スージー鈴木(以下:スージー):では、私から。1曲、ご用意しました。1986年に発表された佐野元春のアルバム『Café Bohemia』に収録された『月と専制君主』(作詞・作曲:佐野元春)です。

マキタスポーツ(以下:マキタ):あぁー! そうきたかぁ。

スージー:そんなにメジャーな曲じゃないですけどね。

マキタ:マニアックですよね。僕は好きですけど。

スージー:この曲のお薦めポイントは何かというと、アラフィフになってくると、お金のことがしんどくなっていくんで、お金がかからない喜びというものを知れば、大切なお金を担保しながら、人生を楽しめるんじゃないかって。

――ほぉ。

スージー:こういう歌詞です。

〽 眠りにつく
 あの専制君主の目を盗み
 今が、チャンスだぜ
 思いのたけ
 奴らの悪口をたたけよ
 言葉に税はかからない

マキタ:あぁ、出たね。

スージー:この歌で私が伝えたいことは、アラフィフ世代が定年を迎えた後も、お金をかけずに、もっとしゃべっていいんじゃないか、メッセージを発信してもいいんじゃないか、ツイートしてもいいんじゃないですかっていう、これまでにもこの対談で語られてきた「オヤジ世代は、もっと表現しようよ!」っていうメッセージです。

マキタ:うん。

オヤジ世代は“怒れるジジィ”を目指せ!

スージー:歌詞のなかで特に注目したいのは、「言葉に税はかからない」です。お金はなくてもメッセージは発信できる。多忙な仕事から解放されて、時間があるならば、ツイートするなり、フェイスブックを書くなり、好きなように表現できる。自作の曲をユーチューブに乗せるのも簡単ですよ、と。

マキタ:うん、うん。

スージー:オヤジ世代は今こそクリエイティブするべきだ、お金はかかりませんよ、と。

マキタ:(佐野元春風の歌い方で)こぉとぉばぁに、ぜぇいは、かかぁらぁなぁいぃ~……ですよね。

スージー:その前に「思ぉいのたけ、やつぅらの悪口をたぁたぁけよ」とか、歌ってる。

マキタ:そう、そう。

スージー:団塊の世代の定年後の話って、ともするとなんか保守的になりがちなんですけど、かつては学園紛争で、ゲバ棒とか持って、めっちゃ怒ってたわけじゃないですか。

マキタ:うん、うん。

スージー:そのゲバ棒が、今はそば打ち棒に変わってる人もいる。“怒れる若者”がなんで“怒れるジジィ”にならないのかって。

佐野元春と森山直太朗が教えてくれた「お金」の意味

今回のテーマは「これ!」

――では、マキタさんが読者にお薦めする「お金にまつわる曲」は、なんですか?

マキタ:僕は、2010年にリリースされた森山直太朗の未発表曲集『レア・トラックスvol.1』に収録されている曲です。

――マニアックなところを突いてきましたね。

マキタ:実に美しいメロディーでね(と言うと、森山直太朗風に、澄んだ爽やかな声でバラードを歌い始める)さぁ~あ~っきぃ~~まで~~。

一同:(聴きほれる)

――さすがは森山直太朗、すてきな歌い出しですね。で、マキタさんが「お金」というテーマで読者にお薦めしたい、その曲のタイトルは?

マキタ:「うんこ」(作詞・作曲:森山直太朗、御徒町凧)です。

――えっ?……うん……こ!?

スージー:いやぁ、知らない曲だなぁ。

マキタ:知りません?

――はぁ、私も知りません。

「うんこが俺を脱いだ!」という気付き

マキタ:割と哲学的な歌詞でね。

〽 さっきまで
   体の中にいたのに
   出てきた途端
   いきなり嫌われるなんて

一同:(なんなんだ……)

マキタ:そして、こう続きます。

〽 やっぱりお前は
   うんこだな

 これで終わるんですけど。

スージー:なるほどぉー。

マキタ:1分20秒くらいの短い曲で、本編よりも、歌の部分が終わってからのアウトロの方が長いんです。そのアウトロのストリングスとかが、グワァーっときれいに流れていくんですけど、それが、最後、うんこがきれいに流れていくみたいに感じさせる。

一同:(笑)

マキタ:この歌詞については、哲学的に考えてほしいんです。

――と言いますと?

マキタ:そもそも、「うんこ」っていうのは、出ないといけないですよね。

スージー:出ないといけないです。

マキタ:生物は、食べるだけじゃなくて、出さないといけないですからね。

――もちろん。

マキタ:ちょっと尾籠(びろう)な話になってしまうかもしれませんけど、なんか、良き食事をとらないと、良き排便ってできないらしいんですね。

スージー:(小さくうなずく)

マキタ:営みとして、人間もこれを避けて通ることができないわけです。

スージー:(大きくうなずく)

マキタ:この歌では「さっきまで体の中にいたのに、体の外に出てったら『うんこだぁ!』って嫌われる存在」って、ちょっと懐疑的な感じで歌われる。

――はい。

マキタ:なんか、うんこって、ただ“汚いもの”として語られるべきものじゃないんじゃないかって。ほら、ありません? 長い暮らしの中で見事なうんこができたときって。

スージー:最近は、洋式便所だから、形を確認しにくいですが、昔の和式時代に、ありましたよね。

マキタ:あったでしょ? 素晴らしい……なんていうのかな……。

スージー:造形的に美しいうんこ。

マキタ:そう。そんとき「うんこが俺を脱いだ!」みたいな感じがするんですよ。

スージー:うわぁ、哲学的だ。サルトルの世界ですね。ジャン=ポール・サルトルの実存主義だ。

マキタ:なんかね、“僕”っていう存在は“観念的な生き物”なんですけど、実はそうじゃなくて、実在する僕は単なる「うんこの通り道」みたいな。

一同:(感嘆して)ほほぉ~。

スージー:実存的だなぁ。

佐野元春と森山直太朗が教えてくれた「お金」の意味

僕は単なる「うんこの通り道」みたいな……

“いい消費”が“いい経済”の循環を生み出す

マキタ:でね、「お金」の話なんですけど、「お金」っていうのは、人間の脳が作り出した概念じゃないですか。

スージー:はい。

マキタ:「お金」と「うんこ」って、両方とも「人間が作り出したもの」なんです。だから、「お金」も入ってこなくちゃいけないけど、出していかなくちゃいけないものでもあるわけです。

スージー:うん、うん。

マキタ:そして、人間は「お金」を稼いで、それを「栄養」に変えて、自分の体に与えている。

スージー:うん、うん。

マキタ:「お金」は、稼ぐばっかりじゃなくて、ちゃんと使わないといけない。だから、「人間は、いいお金の使い方をするために働く」っていう考え方のほうが良くないですか?

――なんとなく、分かります。

マキタ:不景気だからって、財布のひもを締めて、そんなに稼げねぇからって、なるべくためて、ためて……なんて考えないで、「お金」自体を「いいうんこ」だと思って、自分が好きなものに全賭けするかのように、大きな買い物をしたっていいと思うんです。

スージー:(黙って深くうなずく)

マキタ:そういう気持ち良さって、大切なんじゃないかな。自分の体を「お金の通り道」だと考えた方が、いい経済の循環を生み出すんじゃないかと思うんです。

――いいうんこを出さないと、いいものは食べられない……とすれば、いいお金の使い方をしないと、いいお金を稼ぐことができない、ということですね。

マキタ:そうそう。

スージー:そうですよね。

マキタ:「お金」って、なんか“汚いもの”っていうイメージもありますよね。

スージー:ありますね。

マキタ:「お金」に対するコンプレックスが、そうしているだけかもしれない。

――はい。

マキタ:でも、今の世の中で生きていくためには、人間の生活にとって経済は切り離せないものですよ。僕もある程度「お金」を稼ぐようになったとき、「将来のためにお金をためよう」とかって、すごく思ってた時期があったんです。

スージー:うん。

マキタ:だけど、しばらくして、「やっぱり、少しちがくねぇか?」って思いました。

――アラフィフのオヤジ世代にとって「お金をためることが必ずしも“いい選択”ではない」ということでしょうか。

マキタ:なんか「いい消費」っていうか、自分にとって「いい買い物」とかしてるほうが、経済の中で「自分がお金の通り道」だと実感できて、健康的な感じがするんですよ。

スージー:確かになぁ……。

(つづく)

(構成/佐保 圭)

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