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2018年12月15日掲載 沢田研二は宮崎駿! 黙して語らず、ジュリーの”行間”を味わう

沢田研二は宮崎駿! 黙して語らず、ジュリーの

日経トレンディ2018/12/15掲載
BS12トゥエルビで放送中の『ザ・カセットテープ・ミュージック』で、80年代歌謡曲の優れた論評をくり広げるマキタスポーツ氏とスージー鈴木氏が、同世代のビジネスパーソンに「歌う処方箋」を紹介するこの企画。前半では、スージー氏が「騒動の理由は沢田研二が筋の通らないことに激怒したから」という持論を展開。それを受けて、後半では、マキタ氏が「ある程度の年齢に達した人間は、ジュリーのように生き方をシンプルにするべきではないか」という“オヤジ世代が学ぶべき人生論”を読者に問いかけた。

沢田研二はカーネル・サンダースじゃない、宮崎駿だ!

――では、マキタさんが考える「沢田研二に学ぶ“オヤジの美学”」にぴったりの歌とは、なんでしょうか。

マキタスポーツ(以下:マキタ):僕はあえてジュリーの曲の中から選ぶんじゃなくて、ジュリーの美学に最も近いんじゃないかと思える曲、オヤジの美学を貫き通したジュリーを応援するための曲として、町田義人さんの『戦士の休息』(作詞:山川啓介、作曲:大野雄二)を紹介します。

一同:おぉっ。

マキタ:この曲の歌詞を改めて読み込むと、僕は「ジュリー」を感じるんです。

スージー鈴木(以下:スージー):なるほど。

マキタ:言い訳しない、というか。

スージー:あぁ、そうですね。

マキタ:たとえば、歌詞でいうとこの部分。

〽男は誰もみな 無口な兵士
 笑って死ねる人生
 それさえ あればいい

――なるほど。
マキタ:今回、記者会見もされましたが、言い訳っぽいことは1つも言わなかった。そのときのジュリーの見た目について、カーネル・サンダースがどうのこうのと、半笑いで突っ込んでいる人とかいたでしょ?

――謝罪会見のときの沢田研二さんの白い髪に白い髭、メガネに蝶ネクタイ、明るい色のジャケットという出で立ちが、カーネル・サンダースに似ていると話題になりましたね。

マキタ:僕はそういう小馬鹿にできるような話じゃなくて、非常にジュリーらしく正々堂々と、妙な言い訳もすることなく、毅然として釈明したと思いました。あと、ジュリーらしいなぁと思ったのは、ちょっと冗談を言うんだよね。

スージー:言いましたね。

広報のT女史:あの会見でも「ここはヤブ蚊がいっぱいいますけど」みたいなこと、言ってましたよね。

マキタ:ちょっとだけ、冗談を言うわけ。落ちをつけるような言い方をする。僕には、ああいうのが照れ隠しじゃないけど、すごくダンディに思えてしまう。

スージー:あれも、京都人っぽいっていうか、関西人の性ですよね。

マキタ:「ヤブ蚊がいっぱいいますけど」なんて、あの場では必要ないけど、ああいうこと言っちゃうジュリーの人間的なところが好きだから、ファンはジュリーを生で見に行くんじゃないですか?

一同:
(うなずく)

消費の対象ではなく、生で出会ってこそ

マキタ:なんか、ジュリーって「生で見てこそ」って感じがします。テレビとかのメディアで間接的に見てどうのこうのっていう消費の仕方じゃなくて、ファンと生の出会い方を大切にするためにライブ活動をずっとやっている。だから、ライブを見たファンは「やっぱりジュリーだ!」って思わせてもらえるんじゃないかな。

スージー:あのときの沢田さんの姿を「カーネル・サンダース」に見立てちゃだめなんです。あの「メガネに髭に蝶ネクタイ」っていうスタイルは「宮崎駿」とみるべきなんです。

――なるほど!

スージー:自分っていうものをしっかりと持っていて、筋もきっちり通す。逆に、筋を通さないことは一切受け付けないっていう。

マキタ:うん、うん。

スージー:だから、あの沢田さんの姿に「カーネル・サンダース」を読み取るのは、甘いんです。「宮崎駿」なんです。そう思いながら、僕は見ていました。

沢田研二は宮崎駿! 黙して語らず、ジュリーの

――では、読者が沢田研二に学んで、少しでも筋を通してダンディになっていくためには、どうすればいいんでしょうか。

スージー:沢田研二さんの「上司を尊敬し、周りの人間や友との絆を大事にする」という義理堅い一面は、ビジネスパーソンの世界でもよくあることです。ただ、50歳を超えたら、筋を通さないものとか、あさっての方向から来る失礼な行いに対して、もう疑義を唱えてもいいんじゃないか、と。

マキタ:なるほど、なるほど。

スージー:沢田研二さんはティーンの頃から「自分がやらなければ誰がやるんだ!」って、大衆が、そして事務所の人間が喜ぶように、責任感で生きてきたところがあったと思います。ですが最近、やっと宮崎駿の境地に達したといいましょうか。

マキタ:うん、うん。

スージー:「大衆のオモチャだったジュリーが、今になって、なんでキレてるねん」って思う人は、いまだに頭の中で『勝手にしやがれ』とか『TOKIO』を歌っていた頃のイメージでジュリーを見ているからです。その頃から現在までの間に「ジュリー」は「沢田研二」というしっかりとした“自己”を持って、「宮崎駿」になっていたわけですよ。

一同:ほぉ。

スージー:「ジュリーの宮崎駿化」を知らないから、カーネル・サンダースと比べたりするんです。

マキタ:うん、うん。

スージー:宮崎駿さんが「ヤブ蚊がどうこう」っていうのは、あり得ることですよね。

――確かに、宮崎監督ならあの場で言いそうですね。

スージー:「自分を通す」ことを少しずつやらないと、逆に沢田研二さんの境地には行けないわけです。

「自分は何がしたいか」で決めるシンプルな生き方

――ただ、普通のビジネスパーソンが会社や家庭で自分を通そうと思っても、なかなか、分かってもらえないんじゃないでしょうか? 天下のジュリーでさえ、そうだったわけですから。

スージー:でも、そうしないと70歳まで現役でいられないですよ。

マキタ:(うなずく)

――オヤジ世代に入ったら、分かってもらえなくても、自分を通すべきだと。

スージー:私なんかも、なかなか「宮崎駿」にはなれないですけど、それでも、やり続けなければいけない……この連載で、よく出てくる話です。「山下達郎」にも「沢田研二」にも、やり続けなければなれないっていう。

マキタ:うん、うん。

スージー:『STEPPIN’ STONES』でいかなければいけないっていう。

一同:(うなずく)

――それでは、読者が沢田研二から“オヤジの美学”を学ぶとすれば、マキタさんからはどんなアドバイスがあるでしょうか。

マキタ:やっぱり、「もうシンプルでいいんじゃないですか」って思うんですよね。70歳くらいになって、シンプルになってないとおかしいと思うんです。

スージー:そう、シンプルですよね。

マキタ:ジュリーには、自分が「大衆の生贄(いけにえ)」だった時代があるわけですよ。それで、マスの頂点に君臨して、もう右から左、縦横斜めまで、全部網羅するような“時代の寵児”だった期間があった。でも、誰も彼もみんな満足させることなんて、体力的に、いつもまでもできるはずない。だから、その役目を終えた後に、まだ音楽活動というか、アーティストとしての活動をやっているわけですから、きっと心がシンプルになっていると思うんです。

スージー:うん、うん。

マキタ:マスを相手にするんじゃなくて、「自分は何したいんだ?」という根源的なことに向き合っている。それが大事なんじゃないでしょうか。

――なるほど。

マキタ:ある程度、年をとったら残りの人生とか考えますよね。僕は食べることが好きなんですけど、「人生の残りの時間で、あと何回飯食えるんだろう?」とかって思ってしまう。そしたら、余計なものとか無駄なものとかは食べたくない。「本当に食べたいものを食べたい!」って、結構、シンプルに考えてしまうんです。

スージー:はい。

マキタ:だから、交際したい相手を選ぶとか、今会っておかなくちゃいけないっていうことに関しては、あんまりストップもかけないし、我慢もしたくないんです。

スージー:うん、うん。

マキタ:この歳になると、いろんなことを全部、隅から隅までリーチすることなんて、できないですもん。結構、絞って、削いで、落として……。

沢田研二は宮崎駿! 黙して語らず、ジュリーの

「もうシンプルでいいんじゃないですか」って思うんですよね

削いで落として裸一貫、丸腰で勝負する美学

スージー:そうですね。ジュリーは、削いで、落としてますね。今回のツアーでも、エレクトリック・ギター1本とボーカルだけですからね。

マキタ:一番怖いこと、やってるんですよ。

スージー:それをあるメディアでは「手抜き」とかって書くんですけど、いや、違う。逆に今までバンド編成でやっていた曲をエレクトリック・ギター1本で編成するって、どんだけハードな、ディフィカルトな設定なのかってことを考えると、いやぁ、これはもう、裸一貫、丸腰で勝負しているって感じがしますよね。

マキタ:そうだと思いますね。

スージー:もう、最高ですよ。

マキタ:我々オヤジ世代は、削いでいくのが、いいんじゃないですかね。八方美人でやれるのは、若いうちだけですよ。体力があるからできるんです。

スージー:そうですよね。

マキタ:八方美人に、いろんなところに口八丁手八丁、反復横跳びしてやるのは脚力があるからです。アラフィフは、シンプルにしていかないと動けないですよ。だから、シンプルになって生きていくほうがいいんです。

――では、最後に、今回のテーマのまとめの言葉をお願いします。

スージー:(突然、甲高い声で)Keep on Keep on running!

一同:(ぽかんとする)

スージー:いや、これは、私が歌ったらアホみたいですけど。

一同:(爆笑)

スージー:「沢田研二」というアーティストは30年前に、もうそういう境地に達していたわけです。ナベプロから離れて、「Keep on Keep on running」と歌いながら、30年間、走り続けて、いまだに『STEPPIN’ STONES』、つまり飛び石を飛んでいる。

一同:(無言でうなずく)

スージー:俳優活動は多少やっていますけど、演歌にもいかずに、基本的にはテレビとかCMじゃなくて、ライブでやっていく。そのライブの会場が武道館とか横浜アリーナですよ。「7000人しか集まらない」って言われましたが、よく考えれば、70歳になった今でもファンを7000人も集めてるわけですからね。

――読者にも、ジュリーのようにやり続けられるのでしょうか?

スージー:そういうことを目指してもいいんじゃないか、と。

――では、マキタさんもまとめていただけますか。

マキタ:僕はすごくいっぱいしゃべっちゃう人間だけど、黙っているほうが、逆に情報量が多くなるってこと、ありません?

スージー:(黙ってうなずく)

マキタ:黙して語らずの沢田研二さんの味わいも、その無口性というか、黙ってライブだけやることの行間を感じたほうが、いいんじゃないかと思います。

――ジュリーの行間……ですか。

マキタ:ある程度の年齢に達したオヤジ世代は、行間とか、想像力を働かせていく楽しみ方に行くほうがいい。その1つの試金石として「ジュリー」っていうアーティストをどうとらえるべきか、考えてみるのがいいんじゃないですかね。

――ありがとうございました。

(構成/佐保 圭)

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