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2018年11月17日掲載 「機械の膝と腰」を求め、マキタは『銀河鉄道999』で旅に出る?

「機械の膝と腰」を求め、マキタは『銀河鉄道999』で旅に出る?

日経トレンディ2018/11/17掲載
BS12 トゥエルビで放送中の『ザ・カセットテープ・ミュージック』で、80年代歌謡曲の優れた論評をくり広げるマキタスポーツ氏とスージー鈴木氏が、同世代のビジネスパーソンに「歌う処方箋」を紹介するこの企画。奥田民生と吉田拓郎の「旅歌のDNA」から「ビジネス嗅覚の鋭い広島出身アーティスト」の話題まで深められた前回を受けて、今回は、あの『銀河鉄道999』のテーマ曲に乗せて、宇宙を駆け巡る壮大なロマンにも負けない“オヤジ世代の旅の醍醐味”に迫る!

「妻子を置いて男友達とバカ騒ぎする旅」のロマン

――今度は、マキタさんの好きな「旅」の歌をお願いします。

マキタスポーツ(以下:マキタ):べたですけど、GODIEGO(ゴダイゴ)の1979年のヒット曲、『銀河鉄道999』(作詞:奈良橋陽子/山川啓介、作曲:タケカワユキヒデ)です。

――オヤジ世代は、みんな大好き「スリー・ナイン」ですね。

マキタ:僕は人生的にずっと“さすらってる”と思われがちです。でも、意外と僕の中ではさすらっているつもりはなくて、実は逆に“独身”っていう“さすらい”に一番憧れてる人間なんですよ。

一同:(笑)

スージー鈴木(以下:スージー):今日もマキタさん、面白いなぁ!

マキタ:結婚して、家を持って、そこにデンと構えて、根を下ろしちゃってる感じなんですけど、ほんとは、まだまだ、うろうろしたいんですよね。

――はい。

マキタ:うろうろしたいんですけど、それはもう「かなわぬ夢」なんです。だから、なんでしょうかね……『The Hangover』っていう映画があるんですけど。

――2009年にアメリカで公開されて、翌年、日本でも劇場公開された『ハングオーバー! 消えた花 ムコと史上最悪の二日酔い』ですね。1作目がヒットして、同じトッド・フィリップス監督で、第2弾、第3弾がつくられ人気シリーズになりました。

マキタ:この映画の主人公のように、結婚する直前の独身生活最後の日に、男友達とベロベロに酔っ払って、バカ騒ぎする旅っていうのにすごく憧れるんですよ。

――分かります!

マキタ:でも、実際にはそこまでのバカはできないし、妻子を置いてどこかに行くっていうことも、物理的にも精神的にも難しいと。

スージー:(深くうなずく)

マキタ:たとえ、その夢をかなえられる日が来たとしても、それまでにだんだん足腰も弱ってくる。

スージー:(真面目な口調で)分かりますよ。

マキタ:たとえば「歩き旅」。四国八十八カ所をお遍路で巡りたいとかって思っても、果たして自分の膝がもつかどうか、心配になってくる。

スージー:あぁ、あれは心配ですね。

マキタ:もし時間があったとしてもですよ、「そんなことする膝じゃねぇだろう、おめぇは」となる。

一同:(笑)

マキタ:さっきのスージーさんの話じゃないけど、銀河鉄道に乗って移動するのはロマンですけど、「そんな長旅に耐えられるような腰してんのか、おめぇは」っていう問題がある。

スージー:ありますねぇ。さっき話した「鉄旅」は確かに腰にきます。

マキタ:でしょ! 正直な話、そんなに長い間、座っていられるはずねぇじゃん。全部、ない、ない、できない、できない……だから、ロマンなんですよ。

――なるほど。

“転調が分かる女子”とゴダイゴで盛り上がる

マキタ:『銀河鉄道999』の主人公の星野鉄郎は、タダで機械の体をくれるっていわれて、旅に出るわけじゃないですか。僕もタダで壊れない膝をもらえるなら……。

一同:(笑)

マキタ:タダで、長く座ってても疲れのこない、痛みのこない腰をくれるんだったら、そういう旅、してみてぇなぁ!

スージー:確かに「腰」ね……腰……。

マキタ:結婚して、ちょっとした旅すらできやしない、いい年したおっちゃんたちと一緒に、せめて2日でもいいわけ。スージーさんが言ったときにドキッとしたけど、目的地を決めるわけじゃなく、鉄道に乗って、次から次へと乗り継いでいく旅に出たいんですよ。「青春18きっぷ」ならぬ「おじさん48きっぷ」で。

スージー:あぁ……48きっぷ……いいですねぇ。

マキタ:みたいな感じで、安いチケット代で、行けるところまで行ってさ。そこでちょっと気が向いたところで降りて、酒でも飲んで。

スージー:いいですねぇ。

マキタ:どうせ、疲れちゃうから、適当なところで寝ちゃったりするわけですよ。

スージー:はい、はい。

マキタ:で、起きたらまた、気の置けない仲間とバカな話とかして……ほんのつかの間でいいから、そんな鉄道旅をしてみたいというのが、願望としてあるわけです。

スージー:うん、うん。

マキタ:で、みんな会社であるとか家庭であるとか、縛るものというか帰る場所があるので、結局はそこに帰るんですけど、一瞬だけ、そうやって自由奔放な旅をしてみたい。そのときのテーマソングが『銀河鉄道999』なんです。

――なるほどね。

マキタ:どうせ“ひととき”の楽しみと分かっていながら、この曲の「永遠性」にひたりたいとでも言うか。

スージー:そういうとき、独身時代だったら「若くてきれいな女子が隣にいてくれたらいいな」と思ったもんですけど、この年になると、男の大人旅に「若い女子」は不要ですね。

――(しみじみ)分かるなぁ。

スージー:もし、女子と一緒に旅するなら、車窓から外を眺めている彼女が「ゴダイゴの『銀河鉄道999』のイントロっていいわよねぇ」とつぶやいて、僕が「あぁ、途中、転調するよね」と答える……そんな会話ができるような女の子がいいですよねぇ。

マキタ:それもさぁ、「そう、あそこの転調、いいのよねぇ」って、すぐに返してくれて……。

マキタ&スージー:(マキタ氏が歌詞のない間奏部分を歌い出すと、スージー氏が間髪入れずに合わせて、ユニゾンで)テッテー、レレ、テーーー、レレッ。テッテー、レレ、テーレ、テレ、テレ、テレ!

一同:(爆笑)

マキタ:こうやって歌った後、「かんぱーい!」って、缶酎ハイを飲む。

スージー:それと、「ここのオルガン・ソロ、いいわね?」くらいは言ってほしいですね。

マキタ:おぉ。

スージー:すると、私が「このプレーヤーは『ミッキー吉野』っていってね」って。

マキタ:ねぇ。

スージー:「この人は、元は『ザ・ゴールデン・カップス』っていう伝説のバンドのキーボードで」って語り始める……そういう旅、したいですねぇ。

「サブドミナント(支配力のある妻)」のない旅

――ちなみに、『銀河鉄道999』のどのあたりの歌詞が特に響きますか。

マキタ:どのフレーズもいいんだけど、たとえば、

〽 新しい風に 心を洗おう
 古い夢は 置いて行くがいい

スージー:ああ、素晴らしい詞ですね。

マキタ:いいですよね。でも、なんだろう、新しい風に心を洗ったり、古い夢を置いてったり、そんなことって、やっぱできないでしょう? だから、帰るべき場所がある。

――帰るべき場所?

マキタ:たとえば、音楽的な話だと「トニック」ってあるじゃないですか。

スージー:シャンプーじゃないですよ。

マキタ:そう、トニック・シャンプーじゃない。トニック・シャンプーは、僕、もう必要ねぇくらいの毛量になってきたけど。

一同:(そっと顔をそむける)

マキタ:その2つのトニックコードの間に、一瞬でも「子ども」とか「奥さん」っていう「サブドミナント」が頭をかすめないっていうのが、理想の旅だよなぁ。

スージー:あっはっはっは!

――サブドミナント?

マキタ:「支配力のあるコード」があるんです。Cのコードから始まったら、いくつかのコードに移った後、最後にまたCのコードに戻るんですけど、その間に「ドミナント」とか「サブドミナント」と呼ばれるコードがある。それらが「支配力のあるコード」です。

スージー:Cから始まる場合、間に出てくるFとか、G7とかですね。

マキタ:この「支配力のあるサブドミナントのG7」が、たぶんオヤジ世代の現実にたとえると「奥さん」なんですけどね。

スージー:なるほどぉー。

マキタ:この「支配力のある存在」に出会ってしまうと、どうしても家に帰りたくなるんですよね。

スージー:ただ移動するだけの旅でも、案外、体力いりますからね。ちなみにCが家ですね。

マキタ:そう、自分の家です。このCが自宅、俺を縛ってるもの。

スージー:Cが自宅だとすれば、FとかG7に移ってくると、「もうCに帰りたぁい!」ってなる。

マキタ:そう、そう。Cに帰りたくなる。だから、G7になると家に近づいてくるから、カミさんの顔が見えてくるんだけど、Fくらいですね、旅立ったくらいのところがいいんですね。男同士で缶酎ハイをプシュッって開けて「新しい風に心を洗おうぜ」「古い夢なんて置いてっちゃえよ」なぁんて言い合ったあと、「そんで、どこ行く?」って、気分が高まってくる。それがFです。

スージー:Fで、男たちは「特急あずさ」に乗りましたね。

マキタ:そう、「特急あずさ」に……いや、「あずさ」だったら、ちょっと山梨くせぇな。

スージー:あっ、東京を出発してすぐマキタさんの故郷や。

マキタ:すぐに実家だよ! 山梨に帰るのは、全然、旅じゃない。

スージー:じゃあ、山梨を越えて松本まで行きましょう!

マキタ:松本も越えて、日本海側まで……どうせなら、ほかのところに逃げていきたい。

「機械の膝と腰」を求め、マキタは『銀河鉄道999』で旅に出る?

山梨に帰るのは、全然、旅じゃない!

在来線でバカバカしい旅に出よう!

――『銀河鉄道999』って聞いたときには、宇宙の大冒険とか、壮大な旅をイメージしていたのですが、そんな遠くまで行く話でもなくて、しかも主人公の鉄郎が機械の体を求めた理由は「永遠の命」が欲しかったからなのに、そんなのには興味がなくて、ただ「歩いても痛まない機械の膝」とか「座っていても痛まない機械の腰」が欲しいって……なんか、あの物語の壮大さとは、かけ離れてますね。

マキタ:「永遠の命」なんて、ない。だって、われわれオヤジ世代はもう「終活」ですから。

スージー:はい。

マキタ:「永遠」なんて言ったって、僕たち、もう50ですよ。

スージー:はい、はい。

マキタ:生きられても、せいぜい20~30年くらいじゃないですか。男同士でバカ言いながら旅する気分って、しばらく味わってないから……。

スージー:オヤジ世代の仲間たちで。

マキタ:海外とか、そんな遠いところじゃなくていい。

スージー:しかも、新幹線じゃない。

マキタ:そう、そう。在来線がいいですね。

スージー:岐阜まで行かなくても、大月、甲府、韮崎、諏訪、松本……みたいな世界で、十分じゃないですかね。

マキタ:やっぱり中央本線ラインじゃないですか。

――「オヤジ世代の仲間たち」ってことは、女性は一緒じゃなくてもいい?

マキタ:そう。

スージー:それで、男同士で酒飲むんですよ。ただね、2つ横くらいの向こう側に、雰囲気のいい大人の女性がいる。

マキタ:いいねぇ。

スージー:見た目が大塚寧々に似てて(笑)。

マキタ:バカなこと言って(笑)。

スージー:いるだけでいいんです。しゃべりかけずに、こちらは男同士でゴダイゴの話をする。

マキタ:あぁ、いいねぇ。

――いいですね。

マキタ:でも、途中で、冷凍みかんとか、届けるかな。

――え?

マキタ:届けちゃったりして。

――はぁ?

スージー:赤い網に入ってるやつ。

マキタ:そう。「食べます?」なんつって。それから、向こうもなかなか降りないし、しょうがないから「柿ピー、余ってるんだけど、食べます?」って(笑)。

スージー:大塚寧々さん似の女性にね。

一同:(あきれた雰囲気で沈黙)

マキタ:ほんとにアホみてぇな話ですけど、これがいいんですよ。

スージー:そう。こういうバカバカしい話に夢中になるのが「オヤジ世代の旅の醍醐味」ですよね。

――では、今回の「旅」をテーマとした対談の最後に、読者へのメッセージをお願いいします。

スージー:「さすらいもしないで、このまま死なねぇぞ」っていうのを翻訳しますと、「在来線に乗って、大塚寧々さん似の女性に冷凍みかんもあげないで、死ぬわけにはいかねぇぞ」となります。新幹線はダメです。今すぐ在来線、できれば中央本線に乗ってください。

――……では、マキタさん。

マキタ:この曲は「ザ・ギャラクシー・エクスプレス・スリーナイン」って言ってますけど、それを「ザ・ギャラクシー・エクスプレス・あずさ」に変えてもいい。いろんな在来線の名前に変えればいいんですよ。

スージー:英語の名前の列車なら、昔の「雷鳥」、今の「サンダーバード」がありますから、「ザ・ギャラクシー・エクスプレス・サンダーバード」もいいですよね。

マキタ:それが、あの歌の英語の歌詞に出てくる「ネバーエンディング・ジャーニー」、オヤジ世代に必要な“永遠の旅”なんですよ。まぁ、最後は必ず家に帰ってくるんだけど、一瞬でも「ネバーエンディング」感みたいなものを味わってもらえたらいいなぁ。

――ありがとうございました。

(構成/佐保 圭)

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