
BS12 トゥエルビで放送中の『ザ・カセットテープ・ミュージック』で、80年代歌謡曲の優れた論評をくり広げるマキタスポーツ氏とスージー鈴木氏が、同世代のビジネスパーソンに「歌う処方箋」を紹介するこの企画。奥田民生と吉田拓郎の「旅歌のDNA」から「ビジネス嗅覚の鋭い広島出身アーティスト」の話題まで深められた前回を受けて、今回は、あの『銀河鉄道999』のテーマ曲に乗せて、宇宙を駆け巡る壮大なロマンにも負けない“オヤジ世代の旅の醍醐味”に迫る!
――今度は、マキタさんの好きな「旅」の歌をお願いします。
マキタスポーツ(以下:マキタ):べたですけど、GODIEGO(ゴダイゴ)の1979年のヒット曲、『銀河鉄道999』(作詞:奈良橋陽子/山川啓介、作曲:タケカワユキヒデ)です。
――オヤジ世代は、みんな大好き「スリー・ナイン」ですね。
マキタ:僕は人生的にずっと“さすらってる”と思われがちです。でも、意外と僕の中ではさすらっているつもりはなくて、実は逆に“独身”っていう“さすらい”に一番憧れてる人間なんですよ。
一同:(笑)
スージー鈴木(以下:スージー):今日もマキタさん、面白いなぁ!
マキタ:結婚して、家を持って、そこにデンと構えて、根を下ろしちゃってる感じなんですけど、ほんとは、まだまだ、うろうろしたいんですよね。
――はい。
マキタ:うろうろしたいんですけど、それはもう「かなわぬ夢」なんです。だから、なんでしょうかね……『The Hangover』っていう映画があるんですけど。
――2009年にアメリカで公開されて、翌年、日本でも劇場公開された『ハングオーバー! 消えた花 ムコと史上最悪の二日酔い』ですね。1作目がヒットして、同じトッド・フィリップス監督で、第2弾、第3弾がつくられ人気シリーズになりました。
マキタ:この映画の主人公のように、結婚する直前の独身生活最後の日に、男友達とベロベロに酔っ払って、バカ騒ぎする旅っていうのにすごく憧れるんですよ。
――分かります!
マキタ:でも、実際にはそこまでのバカはできないし、妻子を置いてどこかに行くっていうことも、物理的にも精神的にも難しいと。
スージー:(深くうなずく)
マキタ:たとえ、その夢をかなえられる日が来たとしても、それまでにだんだん足腰も弱ってくる。
スージー:(真面目な口調で)分かりますよ。
マキタ:たとえば「歩き旅」。四国八十八カ所をお遍路で巡りたいとかって思っても、果たして自分の膝がもつかどうか、心配になってくる。
スージー:あぁ、あれは心配ですね。
マキタ:もし時間があったとしてもですよ、「そんなことする膝じゃねぇだろう、おめぇは」となる。
一同:(笑)
マキタ:さっきのスージーさんの話じゃないけど、銀河鉄道に乗って移動するのはロマンですけど、「そんな長旅に耐えられるような腰してんのか、おめぇは」っていう問題がある。
スージー:ありますねぇ。さっき話した「鉄旅」は確かに腰にきます。
マキタ:でしょ! 正直な話、そんなに長い間、座っていられるはずねぇじゃん。全部、ない、ない、できない、できない……だから、ロマンなんですよ。
――なるほど。
マキタ:『銀河鉄道999』の主人公の星野鉄郎は、タダで機械の体をくれるっていわれて、旅に出るわけじゃないですか。僕もタダで壊れない膝をもらえるなら……。
一同:(笑)
マキタ:タダで、長く座ってても疲れのこない、痛みのこない腰をくれるんだったら、そういう旅、してみてぇなぁ!
スージー:確かに「腰」ね……腰……。
マキタ:結婚して、ちょっとした旅すらできやしない、いい年したおっちゃんたちと一緒に、せめて2日でもいいわけ。スージーさんが言ったときにドキッとしたけど、目的地を決めるわけじゃなく、鉄道に乗って、次から次へと乗り継いでいく旅に出たいんですよ。「青春18きっぷ」ならぬ「おじさん48きっぷ」で。
スージー:あぁ……48きっぷ……いいですねぇ。
マキタ:みたいな感じで、安いチケット代で、行けるところまで行ってさ。そこでちょっと気が向いたところで降りて、酒でも飲んで。
スージー:いいですねぇ。
マキタ:どうせ、疲れちゃうから、適当なところで寝ちゃったりするわけですよ。
スージー:はい、はい。
マキタ:で、起きたらまた、気の置けない仲間とバカな話とかして……ほんのつかの間でいいから、そんな鉄道旅をしてみたいというのが、願望としてあるわけです。
スージー:うん、うん。
マキタ:で、みんな会社であるとか家庭であるとか、縛るものというか帰る場所があるので、結局はそこに帰るんですけど、一瞬だけ、そうやって自由奔放な旅をしてみたい。そのときのテーマソングが『銀河鉄道999』なんです。
――なるほどね。
マキタ:どうせ“ひととき”の楽しみと分かっていながら、この曲の「永遠性」にひたりたいとでも言うか。
スージー:そういうとき、独身時代だったら「若くてきれいな女子が隣にいてくれたらいいな」と思ったもんですけど、この年になると、男の大人旅に「若い女子」は不要ですね。
――(しみじみ)分かるなぁ。
スージー:もし、女子と一緒に旅するなら、車窓から外を眺めている彼女が「ゴダイゴの『銀河鉄道999』のイントロっていいわよねぇ」とつぶやいて、僕が「あぁ、途中、転調するよね」と答える……そんな会話ができるような女の子がいいですよねぇ。
マキタ:それもさぁ、「そう、あそこの転調、いいのよねぇ」って、すぐに返してくれて……。
マキタ&スージー:(マキタ氏が歌詞のない間奏部分を歌い出すと、スージー氏が間髪入れずに合わせて、ユニゾンで)テッテー、レレ、テーーー、レレッ。テッテー、レレ、テーレ、テレ、テレ、テレ!
一同:(爆笑)
マキタ:こうやって歌った後、「かんぱーい!」って、缶酎ハイを飲む。
スージー:それと、「ここのオルガン・ソロ、いいわね?」くらいは言ってほしいですね。
マキタ:おぉ。
スージー:すると、私が「このプレーヤーは『ミッキー吉野』っていってね」って。
マキタ:ねぇ。
スージー:「この人は、元は『ザ・ゴールデン・カップス』っていう伝説のバンドのキーボードで」って語り始める……そういう旅、したいですねぇ。
――ちなみに、『銀河鉄道999』のどのあたりの歌詞が特に響きますか。
マキタ:どのフレーズもいいんだけど、たとえば、
〽 新しい風に 心を洗おう
古い夢は 置いて行くがいい
スージー:ああ、素晴らしい詞ですね。
マキタ:いいですよね。でも、なんだろう、新しい風に心を洗ったり、古い夢を置いてったり、そんなことって、やっぱできないでしょう? だから、帰るべき場所がある。
――帰るべき場所?
マキタ:たとえば、音楽的な話だと「トニック」ってあるじゃないですか。
スージー:シャンプーじゃないですよ。
マキタ:そう、トニック・シャンプーじゃない。トニック・シャンプーは、僕、もう必要ねぇくらいの毛量になってきたけど。
一同:(そっと顔をそむける)
マキタ:その2つのトニックコードの間に、一瞬でも「子ども」とか「奥さん」っていう「サブドミナント」が頭をかすめないっていうのが、理想の旅だよなぁ。
スージー:あっはっはっは!
――サブドミナント?
マキタ:「支配力のあるコード」があるんです。Cのコードから始まったら、いくつかのコードに移った後、最後にまたCのコードに戻るんですけど、その間に「ドミナント」とか「サブドミナント」と呼ばれるコードがある。それらが「支配力のあるコード」です。
スージー:Cから始まる場合、間に出てくるFとか、G7とかですね。
マキタ:この「支配力のあるサブドミナントのG7」が、たぶんオヤジ世代の現実にたとえると「奥さん」なんですけどね。
スージー:なるほどぉー。
マキタ:この「支配力のある存在」に出会ってしまうと、どうしても家に帰りたくなるんですよね。
スージー:ただ移動するだけの旅でも、案外、体力いりますからね。ちなみにCが家ですね。
マキタ:そう、自分の家です。このCが自宅、俺を縛ってるもの。
スージー:Cが自宅だとすれば、FとかG7に移ってくると、「もうCに帰りたぁい!」ってなる。
マキタ:そう、そう。Cに帰りたくなる。だから、G7になると家に近づいてくるから、カミさんの顔が見えてくるんだけど、Fくらいですね、旅立ったくらいのところがいいんですね。男同士で缶酎ハイをプシュッって開けて「新しい風に心を洗おうぜ」「古い夢なんて置いてっちゃえよ」なぁんて言い合ったあと、「そんで、どこ行く?」って、気分が高まってくる。それがFです。
スージー:Fで、男たちは「特急あずさ」に乗りましたね。
マキタ:そう、「特急あずさ」に……いや、「あずさ」だったら、ちょっと山梨くせぇな。
スージー:あっ、東京を出発してすぐマキタさんの故郷や。
マキタ:すぐに実家だよ! 山梨に帰るのは、全然、旅じゃない。
スージー:じゃあ、山梨を越えて松本まで行きましょう!
マキタ:松本も越えて、日本海側まで……どうせなら、ほかのところに逃げていきたい。
山梨に帰るのは、全然、旅じゃない!
――『銀河鉄道999』って聞いたときには、宇宙の大冒険とか、壮大な旅をイメージしていたのですが、そんな遠くまで行く話でもなくて、しかも主人公の鉄郎が機械の体を求めた理由は「永遠の命」が欲しかったからなのに、そんなのには興味がなくて、ただ「歩いても痛まない機械の膝」とか「座っていても痛まない機械の腰」が欲しいって……なんか、あの物語の壮大さとは、かけ離れてますね。
マキタ:「永遠の命」なんて、ない。だって、われわれオヤジ世代はもう「終活」ですから。
スージー:はい。
マキタ:「永遠」なんて言ったって、僕たち、もう50ですよ。
スージー:はい、はい。
マキタ:生きられても、せいぜい20~30年くらいじゃないですか。男同士でバカ言いながら旅する気分って、しばらく味わってないから……。
スージー:オヤジ世代の仲間たちで。
マキタ:海外とか、そんな遠いところじゃなくていい。
スージー:しかも、新幹線じゃない。
マキタ:そう、そう。在来線がいいですね。
スージー:岐阜まで行かなくても、大月、甲府、韮崎、諏訪、松本……みたいな世界で、十分じゃないですかね。
マキタ:やっぱり中央本線ラインじゃないですか。
――「オヤジ世代の仲間たち」ってことは、女性は一緒じゃなくてもいい?
マキタ:そう。
スージー:それで、男同士で酒飲むんですよ。ただね、2つ横くらいの向こう側に、雰囲気のいい大人の女性がいる。
マキタ:いいねぇ。
スージー:見た目が大塚寧々に似てて(笑)。
マキタ:バカなこと言って(笑)。
スージー:いるだけでいいんです。しゃべりかけずに、こちらは男同士でゴダイゴの話をする。
マキタ:あぁ、いいねぇ。
――いいですね。
マキタ:でも、途中で、冷凍みかんとか、届けるかな。
――え?
マキタ:届けちゃったりして。
――はぁ?
スージー:赤い網に入ってるやつ。
マキタ:そう。「食べます?」なんつって。それから、向こうもなかなか降りないし、しょうがないから「柿ピー、余ってるんだけど、食べます?」って(笑)。
スージー:大塚寧々さん似の女性にね。
一同:(あきれた雰囲気で沈黙)
マキタ:ほんとにアホみてぇな話ですけど、これがいいんですよ。
スージー:そう。こういうバカバカしい話に夢中になるのが「オヤジ世代の旅の醍醐味」ですよね。
――では、今回の「旅」をテーマとした対談の最後に、読者へのメッセージをお願いいします。
スージー:「さすらいもしないで、このまま死なねぇぞ」っていうのを翻訳しますと、「在来線に乗って、大塚寧々さん似の女性に冷凍みかんもあげないで、死ぬわけにはいかねぇぞ」となります。新幹線はダメです。今すぐ在来線、できれば中央本線に乗ってください。
――……では、マキタさん。
マキタ:この曲は「ザ・ギャラクシー・エクスプレス・スリーナイン」って言ってますけど、それを「ザ・ギャラクシー・エクスプレス・あずさ」に変えてもいい。いろんな在来線の名前に変えればいいんですよ。
スージー:英語の名前の列車なら、昔の「雷鳥」、今の「サンダーバード」がありますから、「ザ・ギャラクシー・エクスプレス・サンダーバード」もいいですよね。
マキタ:それが、あの歌の英語の歌詞に出てくる「ネバーエンディング・ジャーニー」、オヤジ世代に必要な“永遠の旅”なんですよ。まぁ、最後は必ず家に帰ってくるんだけど、一瞬でも「ネバーエンディング」感みたいなものを味わってもらえたらいいなぁ。
――ありがとうございました。
(構成/佐保 圭)
日経トレンディ2018/11/17掲載
前回は、クイーンの『Somebody To Love』のなかで、フレディ・マーキュリーがピュアな思いを歌い上げることの中にこそ「希望」がある、とマキタ氏が熱弁した。後半は、スージー氏が名曲『ボーイズ・オン・ザ・ラン』に喚起される「オヤジ世代の永遠の少年性」の中に「希望」を見いだす。
80年代歌謡曲の優れた論評をくり広げるマキタスポーツ氏とスージー鈴木氏が、同世代のビジネスパーソンに「歌う処方箋」を紹介するこの対談も、いよいよ最終回を迎える
「お金」をテーマとした対談の前半戦は、スージー氏の「アラフィフは、お金をかけずにもっと発信しよう!」というメッセージのあと、マキタ氏の「人間は単なる“うんこの通り道”」という問題提起によって、一気にヒート・アップ! 対談の後半戦では「お金」と「うんこ」の類似性に触れながら「オヤジ世代の理想の“お金の使い方”」へと議論が深化する。
今回のテーマは、ずばり「お金」。家族の生活費や子どもの教育費、さらには自分の老後の準備など、何かと「お金」が必要になるアラフィフのオヤジ世代は、お金とどんな付き合い方をすればいいのか。折り返し地点を過ぎた残りの人生を豊かにするために、お金との付き合い方のヒントをくれる曲について、マキタ&スージーが伝授してくれた。
前半では、スージー氏が「騒動の理由は沢田研二が筋の通らないことに激怒したから」という持論を展開。それを受けて、後半では、マキタ氏が「ある程度の年齢に達した人間は、ジュリーのように生き方をシンプルにするべきではないか」という“オヤジ世代が学ぶべき人生論”を読者に問いかけた。
今回のテーマは「沢田研二に“オヤジ世代の美学”を学ぶ」。2018年10月17日、70歳記念全国ツアーのさいたまスーパーアリーナ公演を直前になって突如中止したジュリーについて、世間ではさまざまな批判が飛び交い、騒動となり、ジュリーは謝罪会見まで開くことに……。しかし、本当にそれで良かったのか? オヤジ世代の代表として、ジュリーを応援するマキタ&スージーが、軽々しく「沢田研二」を批判する風潮に物申す!
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