
BS12 トゥエルビで放送中の『ザ・カセットテープ・ミュージック』で、80年代歌謡曲の優れた論評をくり広げるマキタスポーツ氏とスージー鈴木氏が、同世代のビジネスパーソンに「歌う処方箋」を紹介するこの企画。沢田研二と山下達郎で“かっこいいオヤジの生き方”論を展開した両氏のトークはさらにヒートアップ! 「“おじいさん”にならない団塊世代のせいで、40代、50代が“おじさん”になれない」という現代特有の悲劇に言及し、この受難の時代をオヤジ世代が生き延びるための処方箋(対処法)が模索された。早く“おじさん”になりたいビジネス・パーソンは必読!
――30歳で、かつてオヤジがかっこよく生きられた時代を歌い、70歳になっても「かっこいいオヤジ」であり続ける沢田研二と、「オヤジとしてかっこよく生きましょう!」とエールを送り続ける山下達郎。この2人が“かっこいいオヤジ”の代表であることは分かりましたが、では、読者のみなさんが2人のように「年を取っても、かっこよく生きる」ためには、どうすればいいのでしょうか。
スージー鈴木(以下:スージー):どうでしょうね。
マキタスポーツ(以下:マキタ):なんか、ユーモアみたいなこととか、受け入れる姿勢みたいなもの、いわゆる“処世術”とかも大事だと思うんです。たとえば、山下達郎さんだってすごく勤勉な人だと思いませんか。
スージー:勤勉でしょ!
マキタ:本当に勤勉に確かな仕事をやり続けるってことを、普通の人たちがどれだけできるんだろうって。
――そうですね。
マキタ:年を取ると、どっか不真面目だったりすると思うんです。達郎さんみたいな生き方には憧れるけれど、達郎さんみたいなクオリティーの仕事って、なかなかできない。
スージー:推測ですけど、たぶんサラリーマンよりも残業してますよ。
マキタ:会社にたとえたら「ひとりブラック企業」ですよ。
スージー:自身のラジオ番組でも、単に「棚からひとつかみ」じゃなくて、最高の曲を選んで、最高の音質を追求して、それをマスタリングして……。
マキタ:全部、自分でね。
スージー:あんなに忙しい人は、65歳でいないと思います。
マキタ:日々たゆまずやっていることをずっと続けられる特別な人っているじゃないですか。そういう人だと思うんです。そういうことはなかなか普通の人にはできないし、その人がそのまんま、高い評価を得ているのは当然のことだと思うんですよ。しかも、かっこいいし。
スージー:うん、うん。
マキタ:だけど、どっか油断とかスキみたいなものもあってほしい。たとえば、今の沢田研二。テヘペロじゃないですけど、「なんだかんだ言っても太っちゃったわ」みたいな“受け入れ方”もできる。
スージー:はい。
マキタ:だけど、「俺は人前に立つときはバチッと決めるぜ!」みたいな“張り方”もできる。
スージー:はい。
マキタ:大人になってお腹がだぶついちゃったかもしれないけれども、やるときはかますぜっていう態度。そういうことをやってくれる大人にはなりたいな。
スージー:「沢田研二=ミック・ジャガー」みたいな話もありますけど、ちょっと違うと思うんですよ。ミック・ジャガーはマラソンして、体をしぼって。
マキタ:そう。
スージー:でも、沢田研二はどっちかっていうと、やっぱり音楽だけを大事にしている。白髪も染めないし、体もしぼらない。でも、音楽だけは、びしっと決める。
マキタ:そうそう。
スージー:沢田研二は、より「音楽主義」っていうかね。エネルギーのすべてを音楽に費やしている感じがします。ミック・ジャガーは西洋の「教条主義」的な感じ。
マキタ:確かにミック・ジャガーと沢田研二はちょっと違ってる。
――では、お二人は「かっこいいオヤジになるため」に、何か気をつけていることとか、かっこよくなるために努力していることはありますか。
マキタ:かっこいいオヤジっていうか、かっこいい“おじさん”になりたい云々を考える前に、そもそも今の日本では“おじさん”になること自体が、かなり難しくなってきてるんじゃないかって、そう思っているんです。
――“おじさん”になるのが難しい?
マキタ:今の時代って、“おじさん”が初めて自分の像を鏡で見ちゃってる状態だと思うんです。
――「初めて自分の像を見る」とは、どういうことですか。
マキタ:少し前までは、ただ普通に年を取れば“おじさん”になっていく……というか、自然に“おじさん”になっていけた。そういう時代が長い間“おじさん”たちにはあったんだけど、現代の“おじさん”は自分のことを「“おじさん”なんだ」って客観的にみつめなくちゃいけない時代になってるんです。
スージー:ほぉ。
マキタ:理由は、ネット時代になって、“おじさん”もネット上の存在としてキャラ化してしまったからなんです。
スージー:たしかに、そういう面はありそうです。
マキタ:自分自身のリアルな“おじさん”の部分と、客観的に捉えなければいけないキャラとしての“おじさん”っていう2つの別々の“おじさん”に対して、すり合わせとか、自己演出を含めて、“おじさん”であることをどうやって乗りこなすかっていう命題が、初めて“おじさん”たちに突きつけられている時代なんです。
――なるほど。
マキタ:実は、女性のほうがコミュニティとか、女性社会の中で、早くからそういう市場の目にさらされていたんです。
スージー:ほぉ。
マキタ:女の人って、たとえば社会の中でのふるまいとか、身につけているものとか、御髪(おぐし)とか、そういうことに関しては、なんというかな、「出る杭が打たれないように」とか「決められた範囲のなかで自分を表現する」とか、訓練することに慣れているんです。
スージー:うん、うん。
マキタ:男の人は、そういう経験があんまりなくて……でも、今の時代は“おじさん”もタカノフルーツパーラーで無意識にパフェとか食べてるところを女子高生に写真撮られたり、そのとき「カワイイ!」って言われたりもする。
――ありますね。
マキタ:ところが“おじさん”がその気になって、そっちのほうを見て「カワイイ?」って食べるまねとかしたら、途端に「気持ち悪い!」って言われちゃう。
――でしょうね。
マキタ:そういう状況をどこまで冷静に客観視できるかが、重要になってくる。
――うわぁ、つらいなぁ。
マキタ:つらいですよ。“おじさん”が、初めて鏡に映った自分を見せつけられちゃったんですよ。そんななかで、なんかやらなくちゃいけない。
――冷静に考えてみると、ゾッとしますね。
マキタ:そんな状況のうえに、“おじさん”にとってさらに追い打ちをかけるような時代の変化も起こってるんです。
――どんな変化ですか?
マキタ:「団塊の世代」って、実年齢としては“おじいちゃん”なんだけど、あの人たちって“オヤジ”っぽくないですか?
スージー:はい。
マキタ:あの人たちがまだ“オヤジ”然としていることで、実年齢が“オヤジ”の我々“おじさん”たちの世代が、渋滞状況を起こしている。
スージー:まさしく「渋滞」ですね。
マキタ:“若者”から“おじさん”に繰り上げられない人たちってのが、僕らの世代には、まだいるんですよ。
スージー:その通り。
マキタ:で、アラウンド40のやつらとかで、早く“おじさん”になりたいって思ってる人もいるんですけど、団塊の世代の“おじさん”たちが「こいつらまだハナ垂れ小僧だから、絶対に“おじさん”になんてしたくない!」って思ってるんですよ。
スージー:平均年齢が上がってるぶん、「年齢の偏差値」が高くなった。
マキタ:そう、偏差がある。
スージー:今、日本の平均年齢が47歳くらい(国立社会保障・人口問題研究所の平成29年推計では2018年で47.2歳)ですから、その年齢が「偏差値50」なんですよね。
マキタ:そうですね。
スージー:昭和22年生まれのビートたけしさんは、いま71歳。なのに、まだまだ元気ですもんね。
マキタ:全然元気。あの人、ほんとは“おじいちゃん”なんだよ。なのに、まだ“オヤジ”なんですよ。
笑いの絶えないBS12 トゥエルビ『ザ・カセットテープ・ミュージック』の収録。中央は河村唯さん
――ミュージシャンの方々も、そうですよね。50とか60とかでも、バリバリ現役で……。
マキタ:(真剣な表情で)僕ね、1970年生まれで「Mr.Children」の桜井和寿さんと同い年なんですよ。
一同:(水を打ったように静まり返る)
マキタ:あの人、“オヤジ”に見えます?
スージー:1969年生まれの福山雅治もほぼ同じくらいの年ですね。
マキタ:あの人たちが“おじさん”予備軍として、まだ1軍にも上がれてないみたいな状況にある。だけどあの人たちは新しい“おじさん”像を自分で、自己演出してるじゃないですか。
――たしかに。
マキタ:要するに、“おじさん”像っていうのは自分でカスタマイズして、編集して、まとめあげて、個人的なリアルの“おじさん”性と、公でのパブリックな「福山雅治」をうまく乗りこなして、両立させているから尊敬されているわけなんです。
――なるほど。
マキタ:以前は“おじさん”像も自由化していたから、一般の人たちがほっといても“おじさん”になれた時代があったんだけど……今は、なれない。
スージー:なれない、なれない。
マキタ:定年退職とともに、誰もが自然と“おじさん”になれる古き良き時代は、もうないんですよ。
――言われてみると、昔の“おじさん”と今の“おじさん”のイメージって、全然違いますね。
スージー:だって、「バカボンのパパ」は41歳。キムタクより年下ですから。
一同:ええっ?
マキタ:「サザエさん」に出てくるマスオさんの同僚の「あなごさん」なんか、あんなに“おじさん”っぽいのに、27歳ですよ。
一同:えええっ!?
マキタ:おかしいじゃないですか! だから、今の僕らの世代は青年期とかを長く生きなくちゃいけなくなって、実年齢が過ぎても“おじさん”に繰り上げてもらえないっていう、ちょっとおかしなことになってるんです。
――じゃあ、我々“オヤジ世代”の人間は、いったい、どうすればいいんでしょうか。
スージー:山下達郎さんのステージから学ぶと、「好きなことだけ集中してやる」ってことじゃないですか。
マキタ:あはははっ! その通り!!
スージー:50年、60年とやり続けていると、とてつもないものができる。
マキタ:うん。
スージー:沢田研二みたいに70歳まで歌い続けていれば、あの境地に達する。山下達郎みたいにレコードばっかり聴いてると、ああいう素晴らしい番組ができる。
マキタ:それはスージーさんも同じかもね。しつこい性格の人だから(笑)。
一同:(爆笑)
マキタ:ほかの人って、趣味とかみんなやめていっちゃったり、適度な付き合い方とかするけれど、ずっと、ある種、極道っていうか……。
スージー:誰からもほめられないのに、コード進行の研究を何十年も続けてきた。
マキタ:誰からもお願いされてるわけじゃないのに、一人で粛々とやり続けられるかどうかってことは、“おじさん”の生き物としての存在価値、プレゼンスにとって、すごく重要だと思いますよ。
――では、最後に改めて読者に一言ずつ、推薦してもらった曲をからめて“おじさん”へのエールをお願いします。
スージー:「市井のおじさん」が一番偉い。より偉くなるためには、好きなことをやり続けようというのが、山下達郎から学ぶ“おじさん”論です。
マキタ:『カサブランカ・ダンディ』から学ぶ「ダンディズム」の本質は、立ちはだかったり、ガンとはね付けるような気分ではなくて、もうちょっとしなやかに、柔軟に、情けない自分を受け入れる前提で、それでも「やるときはやるんだよ!」っていうこと。言い訳はしない。言い訳して、そっちの方に目線を送っちゃうと、周りにいろいろとバレちゃう。それこそ、恥ずかしくて、みっともないことなんで、情けないけど、でも生きるんだっていうのが、オヤジの強さじゃないでしょうか。
――ありがとうございました。
(構成/佐保 圭)
日経トレンディ2018/9/7掲載
前回は、クイーンの『Somebody To Love』のなかで、フレディ・マーキュリーがピュアな思いを歌い上げることの中にこそ「希望」がある、とマキタ氏が熱弁した。後半は、スージー氏が名曲『ボーイズ・オン・ザ・ラン』に喚起される「オヤジ世代の永遠の少年性」の中に「希望」を見いだす。
80年代歌謡曲の優れた論評をくり広げるマキタスポーツ氏とスージー鈴木氏が、同世代のビジネスパーソンに「歌う処方箋」を紹介するこの対談も、いよいよ最終回を迎える
「お金」をテーマとした対談の前半戦は、スージー氏の「アラフィフは、お金をかけずにもっと発信しよう!」というメッセージのあと、マキタ氏の「人間は単なる“うんこの通り道”」という問題提起によって、一気にヒート・アップ! 対談の後半戦では「お金」と「うんこ」の類似性に触れながら「オヤジ世代の理想の“お金の使い方”」へと議論が深化する。
今回のテーマは、ずばり「お金」。家族の生活費や子どもの教育費、さらには自分の老後の準備など、何かと「お金」が必要になるアラフィフのオヤジ世代は、お金とどんな付き合い方をすればいいのか。折り返し地点を過ぎた残りの人生を豊かにするために、お金との付き合い方のヒントをくれる曲について、マキタ&スージーが伝授してくれた。
前半では、スージー氏が「騒動の理由は沢田研二が筋の通らないことに激怒したから」という持論を展開。それを受けて、後半では、マキタ氏が「ある程度の年齢に達した人間は、ジュリーのように生き方をシンプルにするべきではないか」という“オヤジ世代が学ぶべき人生論”を読者に問いかけた。
今回のテーマは「沢田研二に“オヤジ世代の美学”を学ぶ」。2018年10月17日、70歳記念全国ツアーのさいたまスーパーアリーナ公演を直前になって突如中止したジュリーについて、世間ではさまざまな批判が飛び交い、騒動となり、ジュリーは謝罪会見まで開くことに……。しかし、本当にそれで良かったのか? オヤジ世代の代表として、ジュリーを応援するマキタ&スージーが、軽々しく「沢田研二」を批判する風潮に物申す!
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