ジャンル別番組一覧

ザ・カセットテープ・ミュージックメインビジュアルザ・カセットテープ・ミュージックメインビジュアル

2018年08月03日掲載 『ジェニーはご機嫌ななめ』で妻の機嫌が上向きに?

『ジェニーはご機嫌ななめ』で妻の機嫌が上向きに?

日経トレンディ2018/8/3掲載
40代、50代のビジネスパーソンにとって、かつて夢中になった80年代を中心とする歌謡曲は、癒やしを与えてくれる心の拠り所。そっと口ずさむだけで勇気が湧き、大事なものに気付かせてくれる深遠なメッセージが隠されている。この連載では、BS12 トゥエルビで放送中の『ザ・カセットテープ・ミュージック』で80年代歌謡曲の優れた論評をくり広げるマキタスポーツ氏とスージー鈴木氏に、厳しい世の中をしたたかに生き抜くための「歌う処方箋」について語ってもらう。

アナログ・シンセのピコピコは人類の原始的な祝祭に通じる

――定年後も夫婦仲良く暮らしていくために、妻に捧げる「二度目のラブソング」という今回のテーマ。スージーさんが浅香唯の『セシル』(作詞:麻生圭子、作曲:NOBODY)を推薦されたのに対し、マキタさんはジューシィ・フルーツの『ジェニーはご機嫌ななめ』(作詞:沖山優司、作曲:近田春夫)をプッシュされました。80年代のニューウェイブなサウンド、ちょっとキッチュな世界観、シンセサイザーのピコピコした電子音には、我々オヤジ世代の精力を蘇らせ、夫婦生活に刺激を与える効果があるから、定年前に聴くべきだということですか。

マキタスポーツ(以下:マキタ):それくらい、当時の電子音には、何か、感じさせるものがあったんですよ。たとえば、時代的にいえば『ラムのラブソング』(作詞:伊藤アキラ、作曲・編曲:小林泉美、歌:松谷祐子)とか。

スージー鈴木(以下:スージー):あ、あれね。

マキタ:(イントロをクチ三味線で)テッ、テッ、テッ、テッ、テッ、テッ……。

――それって、1981年から86年まで放送されたテレビアニメ『うる星やつら』のオープニング・テーマですね。

マキタ:あと、『ハイスクール ララバイ』(※作詞:松本隆、作曲・編曲:細野晴臣、歌:イモ欽トリオ)とか。

――(イントロをクチ三味線で)ティラルゥ~~!

マキタ:ね、あのへんの、YMOがらみの。

スージー:アナログ・シンセの音ですね。

『ジェニーはご機嫌ななめ』で妻の機嫌が上向きに?

マキタ:そうそう。あの辺の音とかを聞くと、なんか、リビドー!っていうか。意志の力でどんなに抑えようとしても、ムクムクムクってなるんですよ。

スージー:てっきり『時には娼婦のように』(作詞:なかにし礼、作曲:なかにし礼、編曲:萩田光雄)がくるかと思ったら、ちがいましたね。

マキタ:ちがいます。

スージー:意外な方向からきました。

マキタ:サウンドの、なんかね……なんか、あるんですよ、人間の原始的な祝祭の部分というか。こう、祝福してくれるような、本当に根源的な欲求の……。

スージー:シンセの音色ですか。それとも、ニューウェイブ特有の(イントロをクチ三味線で)タッ、タッ、タッ、テッ、テッ、テッっていう独特のリズム?

マキタ:どっちも、なんかくるんですよ、そういうのが。

ショートカットとウィスパーボイスでセクシャルパンク

スージー:『ジェニーはご機嫌ななめ』には、(イントロをクチ三味線で)タ、ティ、ト、ティ、テ、ティ、テ、ヒィィーン!って、ストリングスが入りますよね。

マキタ:そう、ああいう「ヒィィーン!」とかも、痛いけど気持ちいい、みたいな。分かんないけど(笑)。

――なんだか、分かるような気がします。

マキタ:夫婦生活に悩んでいらっしゃる方は、ああいう曲を改めて聴きこんでみてください。当時のジューシィ・フルーツのボーカルのイリア(奥野敦子)さんは、非常にコケティッシュであり……。

スージー:かわいい方ですよね。

『ジェニーはご機嫌ななめ』で妻の機嫌が上向きに?

マキタ:ショートカットでね。僕、ショートカットの女性がそもそも大好きなんです。本格的には小泉今日子さんのショートカットで直撃されるんですけれど、ショートカット好きの原型はイリアさんからだと思っている。イリアさんって、日本人なのか、外国人なのか、よく分からない謎のカタカナの名前で、そんな謎めいたショートカットのかわいこちゃんが、バックバンドを従えて、

〽 君とイチャイチャしてるところを見られちゃったわ

なぁんて、オノマトペ混じりの刺激的な歌詞を、あの媚び媚びな感じで歌うわけですよ。

スージー:はい。

マキタ:

〽 抱き合って眠るの 抱き合って眠るの

なぁんて、あのウィスパーボイスで。

スージー:ウィスパーボイスですよね。

マキタ:音程も不安定。ああいうところが、なんかこう、すごく守ってあげたいというか。トータルで見てもあの曲はよくできた……なんだろうな、なんか、セクシャルなパンクみたいな。

一同:はっはっは!

『ジェニーはご機嫌ななめ』で妻の機嫌が上向きに?

セシルとジェニーで弱くなるたび抱き合って眠ろう

マキタ:まあ、あれですよ。当時の歌謡曲って、いろんなものが成分として入ってると思うんです。僕にとっては、エッチィ部分というのもそう。で、ジューシィ・フルーツっていうユニットがなんであんなにはやったかっていうと、イリアさんの存在も、あの世界観も大きかったと思うし、まあ、50代の人たちは、絶対にあの曲、覚えているはずですから。

スージー:それで『ジェニーはご機嫌ななめ』なんですね。

マキタ:若いころのなんかそういうことを語ることによって、自分の中に眠っていた部分を今まさに刺激しています。

――なるほど。

マキタ:それで、自分で「あぁっ!」ってなって、奥さんと、抱き合って眠ってください。

――つまり、マキタさんの選んだ曲は、夫の側が聴く曲ですね。

マキタ:そう。自分で聴いて、盛り上げて、盛り上げて……で、もういきなり「いくぞ!」って言ったら、奥さんから「あんた、どうしたの?」って言われて(笑)

――まるで落語の世界ですね。

スージー:それで、奥さんが、ご機嫌ななめになっちゃう。

マキタ:そう、ご機嫌ななめになっちゃうときもある。でも、こっちも“ななめ”な状態なら負けないぞって(笑)

――それでは、最後に、このテーマのまとめとして、読者にメッセージをお願いいたします。

スージー:はい。じゃあ、最後に一言……人は大人になるたび弱くなる。

マキタ:いろんな想像力をたくましくして、人生をもう一回、生き直していただきたい。で、とにかく練習してください。いつか、次の打席に立つかもしれませんから、そのときのために、また勝負できるように、自分を磨いていただきたい。

――ありがとうございました。

(構成/佐保 圭)

激論!歌謡曲

BS12 特選情報

あなたへのおすすめ番組

お知らせ

ページTOP

視聴方法