
40代、50代のビジネスパーソンにとって、かつて夢中になった80年代を中心とする歌謡曲は、癒やしを与えてくれる心の拠り所。そっと口ずさむだけで勇気が湧き、大事なものに気付かせてくれる深遠なメッセージが隠されている。この連載では、BS12 トゥエルビで放送中の『ザ・カセットテープ・ミュージック』で80年代歌謡曲の優れた論評をくり広げるマキタスポーツ氏とスージー鈴木氏に、厳しい世の中をしたたかに生き抜くための「歌う処方箋」について語ってもらう。
――定年後も夫婦仲良く暮らしていくために、妻に捧げる「二度目のラブソング」という今回のテーマ。スージーさんが浅香唯の『セシル』(作詞:麻生圭子、作曲:NOBODY)を推薦されたのに対し、マキタさんはジューシィ・フルーツの『ジェニーはご機嫌ななめ』(作詞:沖山優司、作曲:近田春夫)をプッシュされました。80年代のニューウェイブなサウンド、ちょっとキッチュな世界観、シンセサイザーのピコピコした電子音には、我々オヤジ世代の精力を蘇らせ、夫婦生活に刺激を与える効果があるから、定年前に聴くべきだということですか。
マキタスポーツ(以下:マキタ):それくらい、当時の電子音には、何か、感じさせるものがあったんですよ。たとえば、時代的にいえば『ラムのラブソング』(作詞:伊藤アキラ、作曲・編曲:小林泉美、歌:松谷祐子)とか。
スージー鈴木(以下:スージー):あ、あれね。
マキタ:(イントロをクチ三味線で)テッ、テッ、テッ、テッ、テッ、テッ……。
――それって、1981年から86年まで放送されたテレビアニメ『うる星やつら』のオープニング・テーマですね。
マキタ:あと、『ハイスクール ララバイ』(※作詞:松本隆、作曲・編曲:細野晴臣、歌:イモ欽トリオ)とか。
――(イントロをクチ三味線で)ティラルゥ~~!
マキタ:ね、あのへんの、YMOがらみの。
スージー:アナログ・シンセの音ですね。
マキタ:そうそう。あの辺の音とかを聞くと、なんか、リビドー!っていうか。意志の力でどんなに抑えようとしても、ムクムクムクってなるんですよ。
スージー:てっきり『時には娼婦のように』(作詞:なかにし礼、作曲:なかにし礼、編曲:萩田光雄)がくるかと思ったら、ちがいましたね。
マキタ:ちがいます。
スージー:意外な方向からきました。
マキタ:サウンドの、なんかね……なんか、あるんですよ、人間の原始的な祝祭の部分というか。こう、祝福してくれるような、本当に根源的な欲求の……。
スージー:シンセの音色ですか。それとも、ニューウェイブ特有の(イントロをクチ三味線で)タッ、タッ、タッ、テッ、テッ、テッっていう独特のリズム?
マキタ:どっちも、なんかくるんですよ、そういうのが。
スージー:『ジェニーはご機嫌ななめ』には、(イントロをクチ三味線で)タ、ティ、ト、ティ、テ、ティ、テ、ヒィィーン!って、ストリングスが入りますよね。
マキタ:そう、ああいう「ヒィィーン!」とかも、痛いけど気持ちいい、みたいな。分かんないけど(笑)。
――なんだか、分かるような気がします。
マキタ:夫婦生活に悩んでいらっしゃる方は、ああいう曲を改めて聴きこんでみてください。当時のジューシィ・フルーツのボーカルのイリア(奥野敦子)さんは、非常にコケティッシュであり……。
スージー:かわいい方ですよね。
マキタ:ショートカットでね。僕、ショートカットの女性がそもそも大好きなんです。本格的には小泉今日子さんのショートカットで直撃されるんですけれど、ショートカット好きの原型はイリアさんからだと思っている。イリアさんって、日本人なのか、外国人なのか、よく分からない謎のカタカナの名前で、そんな謎めいたショートカットのかわいこちゃんが、バックバンドを従えて、
〽 君とイチャイチャしてるところを見られちゃったわ
なぁんて、オノマトペ混じりの刺激的な歌詞を、あの媚び媚びな感じで歌うわけですよ。
スージー:はい。
マキタ:
〽 抱き合って眠るの 抱き合って眠るの
なぁんて、あのウィスパーボイスで。
スージー:ウィスパーボイスですよね。
マキタ:音程も不安定。ああいうところが、なんかこう、すごく守ってあげたいというか。トータルで見てもあの曲はよくできた……なんだろうな、なんか、セクシャルなパンクみたいな。
一同:はっはっは!
マキタ:まあ、あれですよ。当時の歌謡曲って、いろんなものが成分として入ってると思うんです。僕にとっては、エッチィ部分というのもそう。で、ジューシィ・フルーツっていうユニットがなんであんなにはやったかっていうと、イリアさんの存在も、あの世界観も大きかったと思うし、まあ、50代の人たちは、絶対にあの曲、覚えているはずですから。
スージー:それで『ジェニーはご機嫌ななめ』なんですね。
マキタ:若いころのなんかそういうことを語ることによって、自分の中に眠っていた部分を今まさに刺激しています。
――なるほど。
マキタ:それで、自分で「あぁっ!」ってなって、奥さんと、抱き合って眠ってください。
――つまり、マキタさんの選んだ曲は、夫の側が聴く曲ですね。
マキタ:そう。自分で聴いて、盛り上げて、盛り上げて……で、もういきなり「いくぞ!」って言ったら、奥さんから「あんた、どうしたの?」って言われて(笑)
――まるで落語の世界ですね。
スージー:それで、奥さんが、ご機嫌ななめになっちゃう。
マキタ:そう、ご機嫌ななめになっちゃうときもある。でも、こっちも“ななめ”な状態なら負けないぞって(笑)
――それでは、最後に、このテーマのまとめとして、読者にメッセージをお願いいたします。
スージー:はい。じゃあ、最後に一言……人は大人になるたび弱くなる。
マキタ:いろんな想像力をたくましくして、人生をもう一回、生き直していただきたい。で、とにかく練習してください。いつか、次の打席に立つかもしれませんから、そのときのために、また勝負できるように、自分を磨いていただきたい。
――ありがとうございました。
(構成/佐保 圭)
日経トレンディ2018/8/3掲載
前回は、クイーンの『Somebody To Love』のなかで、フレディ・マーキュリーがピュアな思いを歌い上げることの中にこそ「希望」がある、とマキタ氏が熱弁した。後半は、スージー氏が名曲『ボーイズ・オン・ザ・ラン』に喚起される「オヤジ世代の永遠の少年性」の中に「希望」を見いだす。
80年代歌謡曲の優れた論評をくり広げるマキタスポーツ氏とスージー鈴木氏が、同世代のビジネスパーソンに「歌う処方箋」を紹介するこの対談も、いよいよ最終回を迎える
「お金」をテーマとした対談の前半戦は、スージー氏の「アラフィフは、お金をかけずにもっと発信しよう!」というメッセージのあと、マキタ氏の「人間は単なる“うんこの通り道”」という問題提起によって、一気にヒート・アップ! 対談の後半戦では「お金」と「うんこ」の類似性に触れながら「オヤジ世代の理想の“お金の使い方”」へと議論が深化する。
今回のテーマは、ずばり「お金」。家族の生活費や子どもの教育費、さらには自分の老後の準備など、何かと「お金」が必要になるアラフィフのオヤジ世代は、お金とどんな付き合い方をすればいいのか。折り返し地点を過ぎた残りの人生を豊かにするために、お金との付き合い方のヒントをくれる曲について、マキタ&スージーが伝授してくれた。
前半では、スージー氏が「騒動の理由は沢田研二が筋の通らないことに激怒したから」という持論を展開。それを受けて、後半では、マキタ氏が「ある程度の年齢に達した人間は、ジュリーのように生き方をシンプルにするべきではないか」という“オヤジ世代が学ぶべき人生論”を読者に問いかけた。
今回のテーマは「沢田研二に“オヤジ世代の美学”を学ぶ」。2018年10月17日、70歳記念全国ツアーのさいたまスーパーアリーナ公演を直前になって突如中止したジュリーについて、世間ではさまざまな批判が飛び交い、騒動となり、ジュリーは謝罪会見まで開くことに……。しかし、本当にそれで良かったのか? オヤジ世代の代表として、ジュリーを応援するマキタ&スージーが、軽々しく「沢田研二」を批判する風潮に物申す!
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