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2018年07月06日掲載 心折れそう…「役職定年」に打ち勝つ応援歌(前半戦)

心折れそう...「役職定年」に打ち勝つ応援歌(前半戦)
心折れそう...「役職定年」に打ち勝つ応援歌(前半戦)
心折れそう...「役職定年」に打ち勝つ応援歌(前半戦)

日経トレンディ2018/7/6掲載
40代、50代のビジネスパーソンにとって、かつて夢中になった80年代を中心とする歌謡曲は、癒やしを与えてくれる心の拠り所。そっと口ずさむだけで勇気が湧き、大事なものに気付かせてくれる深遠なメッセージが隠されている。この連載では、BS12 トゥエルビで放送中の『ザ・カセットテープ・ミュージック』で80年代歌謡曲の優れた論評をくり広げるマキタスポーツ氏とスージー鈴木氏に、厳しい世の中をしたたかに生き抜くための「歌う処方箋」について語ってもらう。

二つの若い才能に追われた阿久悠渾身の一曲

――この連載は、40代、50代の読者が青春時代に聴いた80年代を中心とする歌謡曲から、我々オヤジ世代がこれからの人生をしたたかに生き抜くためのヒントやエール、いわば“処方箋”を読み解いていこうという企画です。お二人の番組『ザ・カセットテープ・ミュージック』では、歌手やグループに着目して構成されていますが、こちらはオヤジ世代の「悩み」を毎回のテーマに据えています。そして、第1回のテーマは「役職定年」です。

マキタスポーツ(以下、マキタ):定年かぁ……。僕は悲しきフリーランスなので、いつも、ずうっと肩たたかれているようなもんだからなぁ。

――そのように、よく「肩たたき」で表現される「定年」とは、また違った意味合いのものなのですが……。

スージー鈴木(以下、スージー):企業に勤める会社員って「定年」で退職する何年か前に、もうひとつ「役職定年」というのがあるんですよ。

マキタ:なんか切ないね。

スージー:定年を迎える前に、部長とか課長といった役職から外されてしまう。もうすぐ会社を辞めるんだから、若い人たちのために管理職とかやめてくれってやつですね。

マキタ:きっついな。

マキタスポーツ:1970年山梨県生まれ。ミュージシャン、芸人、俳優。2013年、映画「苦役列車」の好演をきっかけに、役者として活躍の場を広げる。文筆家としても鋭い時評・分析を展開。著書『すべてのJ-POPはパクリである 現代ポップス論考』『越境芸人』『決定版 一億総ツッコミ時代』など

スージー:私は、そういう方々に贈る曲を事前に考えてまいりました。一周回って、河島英五の『時代おくれ』(作詞:阿久悠、作曲:森田公一)。

マキタ:心に染みますねぇ。

スージー:この連載では、真面目にいい曲を取り上げようと思って(笑)。86年の歌なんですけど、70年に徹底的なモダニズムをやった阿久悠という作詞家が、若くて才能豊かな作詞家の松本隆に追いやられ、秋元康に追いやられ、ついに第一線から押し出されるわけですよ。追い詰められて、土俵際っていうときに、自ら『時代おくれ』ってタイトルを付けて、そうなった時のあるべき心情を綴った曲を作った。

マキタ:すごい人ですね。

スージー:はい。

〽 目立たぬように はしゃがぬように
似合わぬことは 無理をせず
人の心を見つめつづける
時代おくれの男になりたい


マキタ:(朗々と)目立たぁ~ぬよぉ~にぃ~!

――おぉっ!

マキタ&スージー:(朗々と)はしゃがぁ~ぬよぉ~にぃ~!

マキタ:いい曲ですねぇ。

無理もせず人の話を聞く『時代おくれ』が晩年を輝かせる

スージー:この曲で、一番いいところが、

〽 上手なお酒を飲みながら
一年一度 酔っぱらう
一日二杯の酒を飲み
さかなは特にこだわらず
マイクが来たなら 微笑んで
十八番を一つ 歌うだけ


マキタ:いまぁ~、船出がぁ~、なんつってね(笑)。

スージー:役職者っていうのは、接待とかで飲みたくない酒をむりやり飲まされたりします。そうじゃなくて、自分は時代おくれでいいじゃないか、一日二杯でいいじゃないかって。僕、この曲を聴いて、変な話、「もういっか」って。

マキタ:二番なんてこうだよ。

〽 不器用だけど しらけずに
純粋だけど 野暮じゃなく
上手なお酒を飲みながら


……お酒を飲むときのこんな振る舞い方、これって極意ですよ。

スージー:ねぇ。

スージー鈴木:1966年大阪府生まれ。音楽評論家、昭和歌謡から最新ヒット曲まで邦楽を中心に幅広い領域で、音楽性と時代性を考察する。著書『イントロの法則80's 沢田研二から大滝詠一まで』『1984年の歌謡曲』『サザンオールスターズ1978-1985』など
マキタ:こういう歌を知らないんじゃ、だめだね。

スージー:86年、作詞が阿久悠、作曲は森田公一ですから、その14年前に同じ二人で『あの鐘を鳴らすのはあなた』を作っている。

マキタ:そうだ!

スージー:その阿久悠、森田公一っていうのが、十数年たって、これですよ。

――やっぱり、すごい人たちなんですね。

スージー:阿久悠っていう人は、全盛期が70年代で、80年代以降、まあ、見かけは不遇な感じになるんですけれど、79年の『舟歌』とともに、この『時代おくれ』で晩年を輝かしくしていますね。

マキタ:へぇえ。

スージー:役職定年の方には『時代おくれ』でいいんじゃないかと。名曲中の名曲ですよねぇ。

勝手にしやがれ+渚のシンドバッド=勝手にシンドバッド

マキタ:いやぁ、僕は悲しきフリーランスなので、役職定年自体はイマイチぴんときていないですけど、

〽 似合わぬことは無理をせず
人の心を見つめつづける


……っていうのは、マジでちょっと、今、リアルに考えているところなんで。

――どういうことですか。

マキタ:いや、マジで、50手前にして、結局、無理もしてきたし、見栄もはってきたし、いっぱい嘘もついてきたし。

スージー:(深くうなずく)

マキタ:あと、無理がきかなくなってきたっていうことが、前提としてありますね。

スージー:はい。

マキタ:でも、突っ走ってきたぶん、人の話をちゃんと聞くとかって疎かにしてきたから、そういうことをするしかもうなくなってきている。だから、これ、すごく染みるね。こんなことを書いてたのね、この歌。

スージー:80年に阿久悠は『雨の慕情』でレコード大賞を獲るんですけど、相前後して、松本隆がくる。80年の日本レコード大賞が『雨の慕情』で、81年が『ルビーの指環』ですよ。阿久悠から松本隆へ。

マキタ:うん、うん。

スージー:あと、阿久悠のインタビューを読むと、桑田佳祐の存在があまりにも新しくて、まぶしかったみたいですね。『勝手にしやがれ』と『渚のシンドバッド』という自分が書いた歌詞を換骨奪胎(かんこつだったい)した『勝手にシンドバッド』っていう曲を書かれてしまった。新しい才能が出てきて、追いやられながらも、この『時代おくれ』をつくるっていうのが、役職定年の方の心にも響くんじゃないかと。

マキタ:うぅ~ん。

スージー:時代おくれでいいんじゃないか、と。

マキタ:これはいいんじゃないですか。いきなり100点の答えですよ。

「50手前にして、結局、無理もしてきたし、見栄もはってきたし、いっぱい嘘もついてきたし……」(マキタ)。「……」(スージー)

――では、マキタさんは、どんな歌を挙げられますか。

マキタ:これね、事前に打ち合わせしてないんですけど、僕も阿久悠の詞の曲を選んでましてね。

――ほぉ。

マキタ:でも、スージーさんとは、選んだ理由が全然違います。しかも、年代的にも80年代とかじゃないですよ。

――なんという曲でしょうか。

マキタ:『ざんげの値打ちもない』です。

スージー:おぉ!

(次回、後半戦へつづく)

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