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2021年5月9日放送 第88回ボーナス・トラック:「浜田省吾をマジメに考える!」

第88回ボーナス・トラック:「浜田省吾をマジメに考える!」

■浜田省吾『路地裏の少年』
作詞:浜田省吾
作曲:浜田省吾
1976年4月21日

第88回「マキタカラオケ教室2」では、大変お恥ずかしい、私が浜田省吾になりきるという、「そんなもの公共の電波で流していいのか」という代物、いや「色物」がオンエアされてしまった。失礼しました。そこで、今回のボーナス・トラックは、浜田省吾について、「色物」ではなく、まじめに考え直してみたいと思う。

『路地裏の少年』は、個人的によく聴いた曲である。浜田省吾と同じく、西日本から東京に出て来た身として、この曲で語られているストーリーは、まさに自分のストーリー。まるで我が事のように聴こえて来たものだ。

歌詞は全編素晴らしいが、あえてワンフレーズ選ぶなら、「♪狭い部屋で仲間と夢描いた いつかは この国 目を覚ますと」。ここだろう。音楽を志した少年が、下宿の窓際で、「この国の目を覚まさせてやる!」という野望を持つ感じ。いいじゃないか。

ただ、この曲のポイントは、音が垢抜けていることだ。歌詞のウェットさに比べて、音が西海岸風で、ビーチ・ボーイズ風で、ドライでさらっとしている。これを不具合と見るかどうか。浜田省吾が、ブレイクまでに時間を必要としたのは、「広島フォーク村」風のウェット感と、西海岸風のドライ感の組み合わせが、チグハグに感じられたからだと思う。

「チグハグ」と書いたが、それは70年代の音楽シーンの中での話。80年代になって、時代の風が、その「チグハグ」さを吹き飛ばし、浜田省吾を、シーンのど真ん中に転がしていった。そして浜田は、満を持して、この曲のリメイク盤を発売する。もしかしたら、そちらの方が有名かもなのだが。

でも私は、76年盤、アルバム『生まれたところを遠く離れて』のA面1曲目バージョンを推す。ここは理屈じゃない。白状すれば、何を勘違いしたのか、私にも、下宿の窓際で「この国の目を覚まさせてやる」という野望を燃えたぎらした日があったのだ。そのときに聴いていた音源を、リメイク盤が超えることなどはあり得ない。

 

 

■浜田省吾『I am a father』
作詞:浜田省吾
作曲:浜田省吾
編曲:星勝
2005年6月8日

『路地裏の少年』に加えて、浜田省吾でもう1曲挙げるとすれば、『片想い』でも『悲しみは雪のように』でもなく、番組の中で歌った『もうひとつの土曜日』でもなく、この曲だ。個人的には、浜田省吾の最高傑作だと思っている。さらに言えば、日本「親父に捧げるロック」界の最高峰だろう。「親父に捧げるロック」界、楽曲は決して多くないのだが。

歌い出し「♪額が床に付くくらい頭を下げ毎日働いてる」から、胸にグーンと響いて来る。正直、そんな頭の下げ方をしたことはないが、それ的な気持ちになったことは何度でもある。言い換えると、そんな気持ちに日々さいなまれることが「日本の親父道」なのだと思う。

さらにいいのは中間部である。「♪子供が幼く尋ねる 『何故人は殺し合うの?』 抱き寄せ 命の儚さに熱くなる胸の奥」。細かい話をするが、13年にNHKで放映された『浜田省吾ライブスペシャル〜僕と彼女と週末に〜』において、「子供が幼く尋ねる」と「何故人は殺し合うの?」の間に浜田省吾は「ねぇ父さん」というワンフレーズを入れた。また、このフレーズの前後で、カメラは、客席にいる何組かの親子の笑顔を映し出した。この段階で、私の眼球はもう水のトラブルである。ダムの大決壊。

吉田拓郎、細野晴臣、矢沢永吉など、戦後すぐに生まれた団塊世代が作り上げた日本のロックは、若い世代に脈々と受け継がれ、若者向けに「Jポップ」と名を変えた。しかし、少子高齢化、日本の平均年齢は上がり続け、現在は40代後半と言われる。だから、「親父(お袋)に捧げるロック」、ひいては「ジジイ(ババア)に捧げるロック」が、もっと発展していいはずだと思うのだ――ロックは若者だけの音楽? それ、いつの時代の話だ?

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