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2021年5月2日放送 第87回ボーナス・トラック:「リズム王:細野晴臣の軌跡!」

第87回ボーナス・トラック:「リズム王:細野晴臣の軌跡!」

■細野晴臣『Pom Pom蒸気』
作詞:細野晴臣
作曲:細野晴臣
編曲:細野晴臣
アルバム『泰安洋行』
1976年7月25日

第87回「開講!ダンス教室」のボーナス・トラックとして、ダンスと言えばリズムということで、日本の「リズム王」=細野晴臣のことを取り上げたい。先に断っておけば、細野晴臣のことを「リズム王」と呼んでいるのは私だけかもで、むしろ『音楽王 細野晴臣物語』(書名)という、より大きな呼称もあるのだが、私は細野のことを、やはり「リズム王」だと思っている

「細野グルーヴ」とでも言うべきノリがある。そうとう初期からで、例えば、はっぴいえんど『はいからはくち』(71年の『風街ろまん』収録)など、細野晴臣によるベースギターがバンド全体のグルーヴを牽引していることが一発で分かる。『春よ来い』『抱きしめたい』然り。

「ティンパンアレイの頃、僕はロックのリズムの秘密を発見した。さまざまなオールディーズを聴いているうちに、ロックのリズムには、微妙な揺れがあることに気づいたのだ。(中略)スウィングをやっていたドラマーは、跳ねるリズムを叩いている。一方でギターは八ビートを刻んでいる。そこでできあがる跳ねているようで跳ねていないリズム――それがロックンロールのノリであり、実はブキウギの基本である」

これは、19年のイベント「HOSONO SIGHTSEEING 1969-2019」で販売されていた同展示会のオフィシャルカタログ『細野観光 1969-2019』における、細野晴臣自身のコメントより。ややこしいことを言っているようだが、リズム/グルーヴを追究する中で細野は、スウィングとエイトビートの中間にある「リズムの黄金律」を発見するのだ。そしてこの黄金律のことを、細野はこうネーミングする――「おっちゃんのリズム」。

『Pom Pom蒸気』の歌詞は、この「おっちゃんのリズム」という言葉から始まっている。演奏は見事に、というか意識的にドンガラガッタ・ドンガラガッタとした、モッチャリ・モッチャリとした、でも、いや、だからこそ気持ちいいリズムになっている。「リズム王」細野晴臣は29歳にして、リズムの奥義、究極のグルーヴを発見していたのだ。

 

 

■イエロー・マジック・オーケストラ『ABSOLUTE EGO DANCE』
作曲:細野晴臣
編曲: イエロー・マジック・オーケストラ
アルバム『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』
1979年9月25日

「リズム王」細野晴臣が、いわゆる「トロピカル三部作」を残した後に、イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)を結成して、世界的な成功を収めたのは有名な事実。YMOの音楽と言えば「テクノポップ」で、コンピュータで、デジタルで、つまりは無機質なリズムだったイメージが強いはずだ。

ただ、大ヒットアルバム『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』の2曲目に用意された『ABSOLUTE EGO DANCE』は、「おっちゃんのリズム」的なアナログなリズムを、デジタルの力で再現しようとした、ちょっと倒錯した発想の作品なのである。

一聴して分かるように、この曲は琉球音楽をモチーフとしている。そこで、琉球音楽のリズム感を分析すると、また、スウィングとエイトビートの中間的なものだったので、そんな中間的なリズム感を数値入力したらしいのだ。具体的には、2つの8分音符が並ぶエイトビートを「♪タタ」=「12:12」、三連符の前の2つをくっつけたスウィングが「♪タッタ」=「16:8」だとすると、『ABSOLUTE EGO DANCE』のリズム感は、この2つの中間=「14:10」で作られているという。

このあたり、実際に聴いても、なかなか分かりにくいのだが、言われてみれば確かに、エイトビートよりはモッチャリしていて、でもスウィングほど揺れていない気がする。デジタルの力でアナログなリズム感を再現するという、「リズム王」細野晴臣の倒錯した発想を、ぜひ確かめてほしい。

なお、今年発売された細野晴臣のライブアルバム『あめりか/Hosono Haruomi Live in US 2019』には、完全アナログ演奏の『ABSOLUTE EGO DANCE』が収録されており、こちらは無論、完璧な「おっちゃんのリズム」になっている。これもぜひ聴いていただきたい。

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