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2021年4月4日放送 第85回ボーナス・トラック:「ロンバケへの苦闘の道!」

第85回ボーナス・トラック:「ロンバケへの苦闘の道!」

■大滝詠一『恋するカレン』
作詞:松本隆
作曲:大瀧詠一
編曲:多羅尾伴内
アルバム『A LONG VACATION』
1981年3月21日発売

ちょうど40年前の1981年を特集した第85回のボーナス・トラックとして、81年3月21日に発売された大滝詠一の傑作中の傑作『A LONG VACATION』(ロンバケ)のことを書いておきたい。

今年の3月21日に発売された『A LONG VACATION VOX』は、CD2『Road to A LONG VACATION』が興味深かった。ロンバケ収録の数々の名曲が作られた経緯が、本人のDJによって紐解かれていくのだが、驚いたのは、多くのロンバケ楽曲が、実は他の音楽家に提供されたものであって、そして売れなかった、もしくはボツになったものだったことである。

『君は天然色』と並ぶ、ロンバケのツートップであるこの曲も、元々は79年に、スラップスティックという男性声優が組んだバンド(『意地悪ばあさんのテーマ』などが有名)に提供されたもので、タイトルは『海辺のジュリエット』(作詞:小林和子)。そしてヒットせず、チャートインは果たせなかった。

『Road to A LONG VACATION』には、スラップスティックに提供する前提での、大滝詠一本人によるデモテープが収録されているのだが、アコースティックギター1本をバックに「♪ラララー」「♪レゲルルー」と、ラ行を中心とした鼻歌で録音しているのが興味深かった。完璧に作り込まれたナイアガラ・サウンドの対極、言わば原石のような音源である。

それにしても『海辺のジュリエット』、売れなくて本当に良かったと思う。もし売れていたら、『恋するカレン』を初めて聴いたときのあの感動がかなり薄味のものになっただろう。『海辺のジュリエット』が売れなかったおかげで、私たちは『恋するカレン』を、濃厚な原液のように味わうことが出来たのだ。

 

 

■大滝詠一『さらばシベリア鉄道』
作詞:松本隆
作曲:大瀧詠一
編曲:多羅尾伴内
アルバム『A LONG VACATION』
1981年3月21日発売

『A LONG VACATION VOX』収録のCD2『Road to A LONG VACATION』には、『さらばシベリア鉄道』に関するエピソードも語られている。ロンバケの収録で、大滝詠一が『さらばシベリア鉄道』を歌っているときに、女性言葉の歌詞のところで、同じく男女のかけ合いの歌詞となっている『木綿のハンカチーフ』を想起して、太田裕美に歌わせるというアイデアをひらめいたという話。

このエピソードはさもありなん、という感じなのだが、私が驚いたのは、この話の後に大滝詠一がぽろっと喋った「太田裕美『さらばシベリア鉄道』が、作曲家としての初のチャートイン作品」という事実にである。

手元の『1968-1997オリコンチャートブック』によれば、80年11月に発売された太田裕美盤『さらばシベリア鉄道』は最高位70位、登場週数10週、売上枚数3.0万枚とのことなので、それほどのヒットには至っていない。しかし、それでもこれが大滝(瀧)詠一の作曲家としての初のチャートイン作品なのである。何と意義深い70位・10週・3.0万枚だろう。

ロンバケ40周年ということで、3月は「ロンバケ祭り」の様相となり、様々なメディアで取り上げられたが、その多くは「シティポップの名盤」という感じに位置付けていて、シティでポップなおしゃれ文脈の中で、ロンバケが語られていた。

別にそのことに疑義を唱えるわけではないが、私がより興味深く感じるのは、そのシティでポップなおしゃれなロンバケに至る苦闘の道のりである。デモテープを作ってはボツになり、首尾よくリリースされても、さしてヒットせずを繰り返していた、78~80年の「大滝詠一どん底期」である。

80年11月に発売された太田裕美盤『さらばシベリア鉄道』。それ聴いた3万人の人々は、4か月後に発売される歴史的名盤を、いち早く予感した3万人だった。

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