
■和田アキ子『あの鐘を鳴らすのはあなた』
作詞:阿久悠
作曲:森田公一
編曲:森田公一
1972年3月25日
第82回「歌謡曲における女性像の変容と変遷」のボーナス・トラックは、番組本編でも触れた、阿久悠の作詞世界における女性像を見ていきたいと思う。
前回のボーナス・トラックで取り上げた『喝采』と、日本レコード大賞を競い合った曲である。1972年の「レコ大」は「レコ大史上の頂点」だと思う。結果はご存知の通り、『喝采』がレコード大賞で、この曲が最優秀歌唱賞。つまり、この2曲が「レコ大史上の頂点における頂点の2曲」となる。
阿久悠には「作詞家憲法」という、全15条にわたる自作の作詞規範があり、その第6条が「『女』として描かれている流行歌を『女性』に書きかえられないか」。この文字列を私なりに翻訳すると、「男にすがる『女』ではなく、独立した人格と人権を持った『女性』として捉えたい」という感じか。
初期・和田アキ子の爆発的な声量で歌われる、この傑作ソウル・バラードにおける主人公はまさに『女性』。「つまずいて、傷ついて、泣き叫んでも」、最終的には背筋を伸ばして、凛とした感じで、すっすっと歩いていく。
歌詞の中で、主人公の女性は「あなた」に「さわやかな希望の匂い」を感じる。「さわやかな希望の匂い」、何とすがすがしい表現だろう。「あなた」に「さわやかな希望の匂い」を感じると歌うこの曲に、1971年の女性たちは、男にすがり付かないで生きる時代への「さわやかな希望の匂い」を感じたはずだ。
■シーナ&ザ・ロケッツ『ロックの好きなベイビー抱いて』
作詞:阿久悠
作曲:鮎川誠
編曲:シーナ&ザ・ロケッツ
1994年3月24日
本編の歌詞特集でも紹介した「名歌詞」である。これぞまさに「『女』として描かれている流行歌を『女性』に書きかえられないか」の完成形と言っていいだろう。
今回の主人公は、いわゆる「シングルマザー」だ。平成の世になって、一気に増えた存在。「子連れの後家さん」といえば、昭和の時代には、特別な目線で見られたものだが、「シングルマザー」は、今や極めて普通の存在になっており、要するに、嫌いな旦那にも一生添い遂げなければならない「女」から、人格と人権を持って旦那を捨ててもいい「女性」へという時代の流れを表している。
歌詞がふるっている――「♪この子が二十歳になる頃には この世はきっとよくなっている だから しばらく ママとおまえで がんばろうね がんばろうね」
「ベイビー」は言葉本来の意味での「赤ちゃん」のことで、乳飲み子を抱えた、ロック好きのシングルマザーが、ロックンロールを聴きながら、駅前通りを走っていくというイメージの歌だ。そしてこのシングルマザーの姿は、その約20年前に発表された『あの鐘を鳴らすのはあなた』と一直線につながっている。
私は、自作の音楽私小説『恋するラジオ』(ブックマン社)でこう書いた。
――《ロックの好きなベイビー抱いて》が発売されて20と1年が経った2015年のバレンタインデーに、シーナはこの世を去る。歌われた乳飲み子=「ロックの好きなベイビー」が20歳を超えたのをしっかりと見届けて旅立ったかのように。
――最期のときシーナは、20歳になった「ロックの好きなベイビー」を前にして、「この世は本当によくなった」と確信できたのだろうか。「失われた10年」、いや「失われ続けた平成の20と1年」を経て、「嘘をついてしまった」と悔やんだのではないだろうか。
今年のバレンタインデーは、シーナが亡くなってから、ちょうど6年、つまり七回忌だ。
2021年2月7日放送
第81回「自宅で上達!カラオケ教室」のボーナス・トラックは、日本の歌謡曲ボーカルの最高峰である、ちあきなおみの話をしたいと思う。
2021年1月10日放送
第80回『よくわかるペンタトニック講習会』で少し触れた「70年代前半の吉田拓郎によるペンタトニックのメロディが、いかに衝撃的だったか」という話について、このコラムで補足しておきたい。
2021年1月3日放送
2021年新年早々の第一発目、第79回『ボクの音楽~杉山清貴編~』の中で、私(スージー鈴木)が、ショッキング・ブルー『ヴィーナス』と『ドリフのズンドコ節』(ともに69年)のリフが似ているという話をしたので、今回はその補論として、ザ・ドリフターズについて書きたいと思う。
2020年12月13日放送
第78回『第4回 輝く!日本カセットテープ大賞』の中で私は、「1995年のツツミ♭京平」という話をした。
2020年12月6日放送
第77回『KOTOSHI NO OWARI 2020』のボーナス・トラックとして、今回は、番組内で触れられなかった「今年の名曲」をご紹介する。
2020年11月8日放送
第76回「サビサラダ特集」で私は、俗に言う「大サビ」を特集した。この言葉、意味は曖昧だが、要するに、曲の最後の「ここ一番!」というところで出て来るメロディ、ぐらいの意味で解釈してほしい。
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