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2021年2月14日放送 第82回ボーナス・トラック:「阿久悠の描く女性像!」

第82回ボーナス・トラック:「阿久悠の描く女性像!」

■和田アキ子『あの鐘を鳴らすのはあなた』
作詞:阿久悠
作曲:森田公一
編曲:森田公一
1972年3月25日

第82回「歌謡曲における女性像の変容と変遷」のボーナス・トラックは、番組本編でも触れた、阿久悠の作詞世界における女性像を見ていきたいと思う。

前回のボーナス・トラックで取り上げた『喝采』と、日本レコード大賞を競い合った曲である。1972年の「レコ大」は「レコ大史上の頂点」だと思う。結果はご存知の通り、『喝采』がレコード大賞で、この曲が最優秀歌唱賞。つまり、この2曲が「レコ大史上の頂点における頂点の2曲」となる。

阿久悠には「作詞家憲法」という、全15条にわたる自作の作詞規範があり、その第6条が「『女』として描かれている流行歌を『女性』に書きかえられないか」。この文字列を私なりに翻訳すると、「男にすがる『女』ではなく、独立した人格と人権を持った『女性』として捉えたい」という感じか。

初期・和田アキ子の爆発的な声量で歌われる、この傑作ソウル・バラードにおける主人公はまさに『女性』。「つまずいて、傷ついて、泣き叫んでも」、最終的には背筋を伸ばして、凛とした感じで、すっすっと歩いていく。

歌詞の中で、主人公の女性は「あなた」に「さわやかな希望の匂い」を感じる。「さわやかな希望の匂い」、何とすがすがしい表現だろう。「あなた」に「さわやかな希望の匂い」を感じると歌うこの曲に、1971年の女性たちは、男にすがり付かないで生きる時代への「さわやかな希望の匂い」を感じたはずだ。

■シーナ&ザ・ロケッツ『ロックの好きなベイビー抱いて』
作詞:阿久悠
作曲:鮎川誠
編曲:シーナ&ザ・ロケッツ
1994年3月24日

本編の歌詞特集でも紹介した「名歌詞」である。これぞまさに「『女』として描かれている流行歌を『女性』に書きかえられないか」の完成形と言っていいだろう。

今回の主人公は、いわゆる「シングルマザー」だ。平成の世になって、一気に増えた存在。「子連れの後家さん」といえば、昭和の時代には、特別な目線で見られたものだが、「シングルマザー」は、今や極めて普通の存在になっており、要するに、嫌いな旦那にも一生添い遂げなければならない「女」から、人格と人権を持って旦那を捨ててもいい「女性」へという時代の流れを表している。

歌詞がふるっている――「♪この子が二十歳になる頃には この世はきっとよくなっている だから しばらく ママとおまえで がんばろうね がんばろうね」

「ベイビー」は言葉本来の意味での「赤ちゃん」のことで、乳飲み子を抱えた、ロック好きのシングルマザーが、ロックンロールを聴きながら、駅前通りを走っていくというイメージの歌だ。そしてこのシングルマザーの姿は、その約20年前に発表された『あの鐘を鳴らすのはあなた』と一直線につながっている。

私は、自作の音楽私小説『恋するラジオ』(ブックマン社)でこう書いた。

――《ロックの好きなベイビー抱いて》が発売されて20と1年が経った2015年のバレンタインデーに、シーナはこの世を去る。歌われた乳飲み子=「ロックの好きなベイビー」が20歳を超えたのをしっかりと見届けて旅立ったかのように。

――最期のときシーナは、20歳になった「ロックの好きなベイビー」を前にして、「この世は本当によくなった」と確信できたのだろうか。「失われた10年」、いや「失われ続けた平成の20と1年」を経て、「嘘をついてしまった」と悔やんだのではないだろうか。

今年のバレンタインデーは、シーナが亡くなってから、ちょうど6年、つまり七回忌だ。

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