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2021年2月7日放送 第81回ボーナス・トラック:「ちあきなおみを聴く!」

第81回ボーナス・トラック:「ちあきなおみを聴く!」

■ちあきなおみ『喝采』
作詞:吉田旺
作曲:中村泰士
編曲:高田弘
1972年9月10日

第81回「自宅で上達!カラオケ教室」のボーナス・トラックは、日本の歌謡曲ボーカルの最高峰である、ちあきなおみの話をしたいと思う。

「歌謡曲」とは何か。こんなに曖昧な定義の言葉も珍しいと思うが、対して私が答えるのは「ちあきなおみ『喝采』を頂点とする一連の音楽」。この曲を頂点に登り詰めさせるのには、歌手自身の人生を組み込んだメタで劇的な歌詞や、親しみやすくかつ技巧的なメロディの貢献もあるが、ちあきのボーカルの貢献が、やはりとても大きい。

ただし、下で触れる『紅とんぼ』とは違い、『喝采』のボーカルは、ちあきなおみが、まだ地肩で投げているというか、テクニックではなく素質・素材で勝負しているという感じがする。つまりは、ちあきの天性の声質を味わう曲だと思うのだ。

真心ブラザーズの桜井秀俊は、その声質を「ノドにオーバードライブが内蔵されている」と表現した。見事な表現だと思う。気持ちよく歪んだブルージーな声質が、それほどビブラートをかけず、完璧なピッチですーっと伸びていく感じ。

非常に乱暴な比喩で言えば、ちあきなおみの声は、ボーカルというよりギターに近かった。それもオーバードライブ/ディストーションの効いたハードロックの。そう言えば、『喝采』が発売された1972年といえば、ディープ・パープルが来日して、日本武道館と大阪フェスティバルホールで、白熱のライブを見せつけた年だ。

1972年暮れ、日本中のAMラジオから、ちあきなおみの『喝采』が聴こえる。日本中のレコード屋から、ディープ・パープル『ハイウェイ・スター』のライブ演奏が聴こえる。翌1973年の秋、「オイルショック」が突如勃発して、高度経済成長の波に終止符が打たれることを、まだ誰も知らない。

■ちあきなおみ『紅とんぼ』
作詞:吉田旺
作曲:船村徹
編曲:南郷達也
1988年10月5日

石田伸也著『ちあきなおみに会いたい』(徳間文庫)に、こういうシーンが書かれている。ちあきなおみがビリー・ホリデイを演じる一人芝居の中で、突然客席から「なおみちゃん!これプレゼント、受け取って!」と雰囲気をぶち壊す嬌声が上がる。それに対して、ちあき曰く――「私はなおみじゃないわ、ビリー・ホリデイよ」。観客から拍手喝采!

さて、80年代後半の段階で、ちあきなおみのボーカルが、いよいよ完成に至ったと思う。最近、BSデジタルなどでたまに見る、ちあきの特集番組などで、数々の名唱を振り返ることができるが、日本国民に広く、ちあきの凄みを見せつけたのは、1988年のNHK紅白歌合戦における『紅とんぼ』だと思う。

ビリー・ホリデイになりきった一人芝居と同じく、88年紅白での『紅とんぼ』も、いよいよ閉店となる、さびれた新宿の飲み屋の女将(おかみ)になりきっていた。艶やかで、いじらしく、枯れた女将。

つまりは「音楽」というより「演劇」なのではないか。『紅とんぼ』の水準まで行き着けば、もう声がどう、ピッチがどうというより、シアトリカルな空間・時間全体の芸術として捉えなければならないと思う。そこまでの水準にまで踏み込めたのは、日本ではたった2人だろう。ちあきなおみと、美空ひばりだ。

こういうシーンを夢想する。先の一人芝居の中で、突然客席から「なおみちゃん!日本のビリー・ホリデイ!」という掛け声がかかる。それに対して、ちあきが――「私は日本のビリー・ホリデイじゃない、世界のちあきなおみよ」。観客からスタンディング・オベーション!

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第93回ボーナス・トラック:金八ポップス(K-POP)の世界!

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