■大滝裕子『恋のウォーミング・アップ』
作詞:三浦徳子
作曲・編曲:椎名和夫
1980年10月21日
第65回「健康エンターテインメント!家庭の音楽」のボーナス・トラックは「1980年のアップ歌謡」特集をしたい。「アップ歌謡」は造語だが、両方とも健康的な「アップ」を歌っている。1980年には、ちょっとした「健康ブーム」だったのだ。
新型コロナウイルスで亡くなった志村けんだが、志村が一時期結婚を考えた相手というのが、大滝裕子だった(3月25日のテレビ朝日系『あいつ今何してる?』にて告白)。
『恋のウォーミング・アップ』は、ヤクルト・ジョアのCMソングとして、当時そこそこ知られた曲である。そのCMには大滝裕子自身も登場、健康的な肢体で走るシーンが印象的だった。曲調は完全なシティポップ。「シティポップ作詞家」の三浦徳子に、作・編曲は、元ムーンライダーズの椎名和夫。
歌唱力にも自信があったのだろう。その後の大滝裕子は、久保田利伸のバックコーラスも務めた女性コーラスグループ「AMAZONS」にも参加。志村けんとの関係が明らかになったとき、多くの人は「AMAZONS」を想起したであろうことに対して、『恋のウォーミング・アップ』を想起した人は少なかっただろうが。
志村けんの訃報に寄せられた大滝裕子のコメント――「志村さん、ありがとうございました。出会えたことに感謝の気持ちでいっぱいです。そして子どもの頃から今までたくさんの笑いをありがとうございました。ドリフターズ、志村さんのコントが大好きでした。心よりご冥福をお祈りいたします」(スポーツニッポン)。健康は大事だ。「健康ブーム」が起きた40年前から、それは変わらない。
■内山田洋とクール・ファイブ『魅惑・シェイプアップ』
作詞:奈良橋陽子・伊藤アキラ
作曲:タケカワユキヒデ
編曲:梅垣達志
1980年9月25日
歌手名、曲名、作者名にはツッコミどころ満載だろう。これぞ「B級歌謡」だと思われるかもしれないが、ところがどっこい、れっきとした資生堂の広告キャンペーンのタイアップソングなのである。
まずポイントは、タイトルにある「シェイプアップ」。今や死語なのだろうか。体型(シェイプ)を向上(アップ)させるという意味の当時の流行語。そんな流行語に「魅惑」を添えるあたりに、いかにも1980年的なあざとさが垣間見える。作家陣はゴダイゴのそれ。79~80年の音楽シーンを席巻したゴダイゴ勢の起用も、当時としては勝負に出た采配だと思われる。
それにしても、歌い手がなぜ、内山田洋とクール・ファイブだったのか。そこが分からない。当時既に、ややオジサン臭いイメージも強かったので、一種のひねりだったのか。当時の人気モデル=横須賀昌美を起用した資生堂のCMもうっすら憶えているが、同時にバックに流れる、粘っこい声質とのギャップも憶えている。
しかし、当時の雑誌『月刊明星』の歌本=『YOUNG SONG』の寸評で、近田春夫がこの曲を絶賛したこともまた憶えていて、その結果、この曲を頭の中の「B級歌謡」ファイルに入れることが出来ないでいる。いやぁ、音楽評論は大切なのだ。