■矢野顕子『あしたこそ、あなた』
作詞・作曲・編曲:矢野顕子
コーラス編曲:山下達郎
1981年11月25日
第63回「いいフレーズコレクション」のボーナス・トラックは、謎なタイトルとなってしまった。「♪ドレミソラド」――下から五音音階を昇る音階である。具体的には『サンタがママにキスをした』の歌い出し「♪I Saw Mammy Kissin’~」の上昇音階だ。
カドカワノベルズのCMソングとなった矢野顕子『あしたこそあなた』は、この音階をもろに使っている。歌い出し「♪お金持ちに所帯持ち」のところは、「♪ドー・ーレ・ミソ・ラド・シー・ーソ・ミ」と「♪I Saw Mommy Kissing Santa Claus」と全く同じ。
この曲は第40回「異端児特集」でかけたことがある。矢野顕子に加えて、後半コーラスで爆発する山下達郎も「異端児」だという文脈で。しかしメロディはクリスマス・スタンダード『サンタがママにキスをした』のメロディを用いた、とっても王道的なものだった。
■河合その子『落葉のクレシェンド』
作詞:秋元康
作曲・編曲:後藤次利
1985年11月21日
おニャン子クラブの先陣を切ってソロデビューした河合その子、2枚目のシングル。作・編曲は、現在河合その子の夫でもある後藤次利。歌い出しからすぐの「♪夕陽が傾く(西の空)」が「♪ドレミソラド」の音形。
それにしても、五音音階を下から駆け上がる「♪ドレミソラド」の高揚感はどうだろう。洋楽では『サンタがママにキスをした』や、テンプテーションズ『マイ・ガール』(64年)のリフレインあたりが、この音形の源なのだろうが、果たして邦楽では、どの曲が根源となるのだろう。
じっくりと考えて、北島三郎『函館の女(ひと)』(65年)ではないかと思い至った。歌い出し「♪はるばるきたぜ 函館へ」が「♪ドー・ー・ー・ー・ーレ・ミソ・ーラ・ドレ・ミーミ・ミミ・ミー」と、「♪ドレミソラド」で止まらずに、上のミまで駆け上がる。あの高揚感には、河合その子も、さすがの矢野顕子もかなわない。