■ヒカシュー『パイク』
作詞:巻上公一
作曲:山下康
1980年7月21日発売
今回は第43回「たのしいプログレの聴き方講座」のボーナス・トラック。「プログレ」の定義を「普通のポップスとは違った、一筋縄ではいかない音楽」とするならば、1980年、中2の私にとってのプログレはヒカシューだった。80年の夏はテクノポップの夏。YMOは別格として、プラスチックスとヒカシューばかり聴いていた夏。どちらかと言えばプラスチックス派の私だったが、ヒカシューのアルバム『夏』も繰り返し聴いた。
『パイク』は、そのアルバム『夏』からのシングルカット。「映画『チェンジリング』日本版主題歌」と言っても、覚えている人も少なかろう。「♪ララ・ドド・ララ・ソソ・ララ・ドド・ララ・ミミ」というリフは、マイケル・ジャクソン『ビリージーン』に似ているが、思わず踊りたくなる『ビリージーン』に対して『パイク』の、まったくドライブしない不気味なビート感は、まさにプログレ、まさにヒカシュー。
80年の夏にYMOばかり聴いていた人は、その後、少々理屈っぽい人になっていった気がするが、プラスチックスやヒカシューまで飲み込んだ人とは、少年時代に多様な価値観を共有し合った「同志」として、話が合いそうだ。
■ヒカシュー『ビノ・パイク』
作曲:山下康
アルバム『夏』より
1980年7月21日発売
「プログレ」と言えば変拍子というイメージがあるが、この『ビノ・パイク』は、ヒカシュー『夏』に収録された7拍子の曲。おそらく私が生まれて初めて聴いた変拍子の曲だと思う。
その後私は、テレビ番組で、生活向上委員会というバンドの『変態七拍子』を見て驚愕。さらにはビートルズの7拍子=『愛こそはすべて』(厳密には4拍子+3拍子)や、番組内でも取り上げたサザンオールスターズ『古戦場で濡れん坊は昭和のHero』などを聴いて、7拍子を体感していく。
『パイク』と違ってこちらはインストゥルメンタルで、(おそらく)完全打ち込みの「ザ・テクノ」という音。『マスク』、『ふやけた■■』(誤植ではなく正式な表記)、『スイカの行進』、『ビノ・パイク』という、アルバム『夏』のB面4曲の並びは空前絶後。この4曲を聴いていなかったら、私はもっとまともな人生を歩んでいたかも知れない。