
「ビートルズ特集」のボーナス・トラックとして、「日本のビートルズ」、特に、「ロックンロールへの初期衝動」に溢れていた初期ビートルズのようだった日本のバンドについて、熱く語りたいと思います。
■キャロル『最後の恋人』
作詞:大倉洋一
作曲:矢沢永吉
※アルバム『ルイジアンナ』収録
1973年3月25日
キャロルをして「日本のビートルズ」と形容したくなる理由は、ひとえに彼らが、ハンブルク時代のビートルズのように、「ロックンロールへの初期衝動」に対して、実に忠実に行動したからである。
今やロックンロールという言葉には、二重三重にもカギカッコが付いている。「「「ロックンロール」」」みたいな感じだ。たまに「ロケンロール」と表記されたりするのも、つまりは皆が「半笑い」でこの言葉を捉えているからだ。内田裕也の奇行を語るときのように。
対して、矢沢永吉の名著『成りあがり』など、キャロル関係の資料を読んで驚くのは、ロックンロールに対する、キャロルのメンバーたちの極端にピュアな目線だ。彼らの前世代にあたるグループサウンズ(GS)のメンバーでも、そこまでじゃなかっただろうというくらい、呆れるほどのピュアさ。
そんなキャロルの目線によるオリジナル・ロックンロールの1つがこの曲だ。番組内でマキタスポーツ氏が選んだ『憎いあの娘』がベストだが、この曲はそれに継ぐ。コード進行に対する自由な感覚も、初期のビートルズに近いと思う。
キャロルのことを考えて、最後にいつも思うのは、せめてビートルズほどにバンド活動を続けていたら、日本のロックンロールはどうなっていただろうということだ。少なくとも、カギカッコは、今ほどに付いていなかったのではないか。
■チェッカーズ『OH!!POPSTAR』
作詞:売野雅勇
作・編曲:芹澤廣明
1986年2月21日
同じく「ロックンロールへの初期衝動」に忠実な若者が集って、東京で一旗揚げたロックンロールバンドとして、チェッカーズがある。しかし、キャロルとの時差の結果、チェッカーズのありようは、もう少し複雑だ。
特にこの曲などは複雑の極致で、ただただロックンロールの好きな「久留米のビートルズ」が、東京に出てきて、売野雅勇と芹澤廣明、その他YMO人脈の切れ者スタッフによって、「久留米のビートルズ」臭を完全消臭されながら、それでもサウンドがビートルズ的(リバプール・サウンド的)だという、実にややこしいメタ構造になっているのだ。
さて、第29回「日本ロック史に残るロックンロール・カバー!」で、ユニコーンのことを「日本最後のロックバンド」と書いたが、私はチェッカーズを「日本最後のロックンロールバンド」だと思っている。少なくとも「●●のビートルズ」と形容できるほど「ロックンロールへの初期衝動」に忠実な若者が集結したバンドは、もう出てこないのではないか。
チェッカーズの解散は、1992年のNHK「紅白歌合戦」。その日の白組司会で「チェッカーズ・フェアウェル・メドレー!」と叫んで送り出したのは、「日本最初のロックンロールバンド」であり、かつチェッカーズと同じ7人組=ザ・スパイダースのリードボーカルだった堺正章だ。スパイダース、キャロル、チェッカーズ。日本のロックンロールが一巡した瞬間――。
第54回:「ヒゲダン」の音楽的特異性について
2019年12月8日放送
第54回「KOTOSHI NO OWARI特集」のボーナス・トラックとして、同特集でも取り上げたOfficial髭男dismの音楽的特異性を分析してみたい。
第53回(特番):歌いたくなるブライアン・メイのギターソロ!
2019年12月1日放送
特番「BS12は12歳!ハワ恋カセット4時間スペシャル」のボーナス・トラックとして、オンエアでも紹介した「歌いたくなるブライアン・メイ(クイーン)のギターソロ」を、あと2曲紹介しておく。
第52回「ソニー系オールスターズ、完成」
2019年11月10日放送
第52回「バンドやろうよ特集」のボーナス・トラックとして、番組内で私が選んだ「ソニー系オールスターズ」(ベース:江川ほーじん/爆風スランプ、ドラムス:川西幸一/ユニコーン、キーボード:KYON/ボ・ガンボス)の追加メンバーを考えてみたい。
第51回「ジョン・レノンは愛だろ、愛」
2019年11月03日放送
第51回「世界の中心で、愛をさけぶおじさん」のボーナス・トラックとしては、やはり「愛と平和のジョン・レノン」のラブソングを紹介するしかないだろう。
第50回「ジミー・ペイジのギター編曲を聴く!」
2019年10月15日放送
収録の合間に、何度となくレッド・ツェッペリンのギタリスト=ジミー・ペイジの話が出た、第50回「おじさん、ギターやめるってよ特集」のボーナス・トラックは、アレンジャーとしてのジミー・ペイジの話をしたい。
第49回「ビートルズの変態クリシェ」
2019年10月07日放送
第49回「コード進行まとめました特集」において私は「クリシェ」を徹底的に分析したが、今回は、クリシェ、ひいてはコード進行まわりのアレもコレもの始祖である、ビートルズのクリシェを特集してみたい。