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2017年03月04日

3月4日

2017年3月5日 【先週のTOPIX 業種別騰落率】

「トランプ大統領の就任演説に世界は安堵」

鈴木一之です。丸々1か月を費やした中・高・大学の受験シーズンがようやく終わったと思ったら、3月1日は大学3年生向けに会社訪問の解禁です。季節の風物詩とはいえ、本当に息をつくヒマもありません。

地球の公転運動とともに季節はめぐり、日に日に春めいてまいりました。桜の花だよりもまもなく届くことでしょう。横浜の三渓園では梅の花がそれはみごとに満開です。

今週はトランプ大統領が初めて議会での施政方針演説に臨みました。その帰趨を見てみたいとマーケットはこれまでの2週間、息をひそめてこの日を待っていました。

かつてここまで一身に世界中の注目を浴び続けた人が存在したでしょうか。ご本人のストレスたるや、どれほどのものなのでしょう。

結論としては、トランプ演説は成功裏に終わりました。まやしてもその時にリアルタイムで取引されていた東京市場では、同時通訳のテレビ中継を聞いて「具体的な内容が出てこない」と神経質な値動きとなる時間帯もあったようです。しかし今回もまた、海外市場の反応はそれとは大きく異なりました。

連日のように史上最高値を更新していたNYダウは、この日だけで+300ドル以上も上昇しました。「市場とトランプ大統領の密接な関係」をここでもアピールした格好です。

マイケル・フリン大統領補佐官の辞任は微塵も市場には影響しませんでした。新たに浮上したセッションズ司法長官への偽証疑惑、それになんとジャレド・クシュナー上級補佐官に対しても「ロシアゲート」との関わりが持ち上がっています。

しかし政治と経済は不可分のようでいて、今回は完全に切り離されているようです。今のところ政治のニュースには冷静な反応に終始しており、市場は「アメリカ・ファースト」の損得勘定だけで動いていることを世界に突きつけています。

先週の東京株式市場は、TOPIXが続伸しました。2週続けて上昇したのは今年初めてのことです。NY市場が歴史的な大相場を目の前で演じているそのすぐ脇で、東京市場はようやく2週連続で値上がりすることに成功しました。

歴史的な上昇と言えば、日本ではジャスダック市場です。日経ジャスダック平均は16連騰となり、3000ポイントの大台に到達しました。このレベルは1990年代初頭までさかのぼらなければ目にすることがありません。

日経ジャスダック平均は株価の単純な平均値で算出されます。90年代から2000年代にかけて、ヤフー(4678)や楽天(4755)が次々にジャスダックに株式を公開しては東証へと昇格してゆきました。

昨年だけでもノジマ(7419)、イリソ電子工業(6908)、タナベ経営(9644)、ローツェ(6323)、コシダカホールディングス(2157)、アドソル日進(3837)など有望企業が続々と東証に移っています。その中にあって日経ジャスダック平均が20数年来の高値を更新して快進撃を続けていることに、何かしら大きな時代の変化が投影されているように感じられます。

東証の値動きに戻って、セクター別では、TOPIX-17業種のうち13業種が上昇、4業種がマイナスでした。

プラス方向で目立ったセクターには、「機械」、「鉄鋼・非鉄」、「素材・化学」などの景気敏感株が集中しています。それと並んで「小売」が第4位にランクインしました。マイナスは「不動産」や「銀行」などの金利敏感セクターでした。

トランプ大統領の演説では、期待された大規模なインフラ投資に関して、なにかしらの具体的な内容があったわけではありません。それでも機械セクターが大きく上昇しています。

建機向け油圧フィルタのヤマシンフィルタ(6240)の快進撃は健在で、ダイフク(6383)、北越工業(6364)、ソディック(6143)、パンチ工業(6165)、富士ダイス(6167)も高値をうかがう動きとなっています。

これらの銘柄は機械セクターの中でもとりわけ「景気動向に敏感的な」機械株というそのままの位置づけです。この銘柄群がしっかりした動きを続けているところなど、まさに現在のワールドワイドな株高現象が、円安や緩和メリットなどの金融要素だけではない、しっかりした景気拡大の上に成り立っている相場であることが垣間見えます。

それ以上に、先週の出色は小売セクターの動きだと感じられます。ワタミ(7522)の株価が急上昇しています。

現在のワタミの存在は、マーケットではさほど重きを置かれてはいません。90年代半ばに時代の寵児となったワタミですが、すでにビジネスモデルが古く他の追随を許し、安い単価を維持するための無理がたたって、今ではブラック的なイメージで見られることが多くなりました。

ワタミもそのイメージを払拭するために必死に努力しています。ただ業績上はまだ大きな変革は見られず、ありきたりの水準なので、機関投資家はあえて組み入れ銘柄に選んだりしません。そのワタミが急騰しているのです。

同じようにアパレルのルック(8029)も上昇を開始しました。脇役と言ってしまえばそれまでですが、事ここに至るまでに小売セクターの物色動向は広がりを見せています。

代表格を列挙すると以下のようになります。

外食:すかいらーく(3197)、ロイヤルHD(8179)、サイゼリヤ(7581)、サトレストランシステム(8163)、木曽路(8160)、日本KFC(9873)、日本マクドナルドホールディングス(2701)、幸楽苑HD(7554)、グルメ杵屋(9850)

紳士服チェーン:はるやまHD(7416)、コナカ(7494)、青山商事(8219)

百貨店:三越伊勢丹HD(3099)、H2Oリテイリング(8242)、パルコ(8252)

量販店:ビックカメラ(3048)、上新電機(8173)、いなげや(8182)、ジョイフル本田(3191)

数え上げればきりがありません。これまではTOKYO BASE(3415)やバルニバービ(3418)、串カツ田中(3547)のような、おしゃれで今風な、高収益の小売株が人気でした。それが先週はこれらの株価はおとなしい動きに終始して、むしろローテクなかつての小売人気をリードした銘柄に物色が向かっています。

日本の小売セクターは不思議とディフェンシブ的に動く時もありますが、本来は景気に連動しやすい業種です。初めて実施されたプレミアムフライデーはなんとなく通過してしまいましたが、決して一過性の話題ではなく、この領域を伸ばしていこうという政策の意図が確立したという点において大きかったように思います。

ヤマト運輸の宅急便問題は、今後もまだかなりの期間にわたって尾を引きそうですが、深刻な人手不足という表の問題の裏側には、それだけネット通販が急拡大しているという消費の現場の好調さも映し出されています。

米国の株価は米国の経済を、日本の株価は日本の経済を体現していることでしょう。

最近、道でヤマト運輸の宅急便を配っているおじさん、お兄さんを見かけると、思わず最敬礼で「ご苦労さまです!」とおじぎをしてしまいたくなります。これからの年度末、ますます忙しくなるのでしょう。どうか無理をされず、お身体にはお気をつけて、日本経済の根底を支えてください。

以上






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