ザ・カセットテープ・ミュージック

スージー鈴木のボーナス・トラック

2018年05月04日放送

第15回「若きユーミンの個性的な音使いを楽しもう!」

■荒井由実『やさしさに包まれたなら』

  • アルバム『MISSLIM』より
  • 1974年4月20日
  • 作詞:荒井由実
  • 作曲:荒井由実

番組の中でも触れたが、私は、荒井由実時代のセカンドアルバム=『MISSLIM』が大好きな「ミスリム原理主義者」である。イスラム教徒のことを「ムスリム」というが、荒井由実教徒を「ミスリム」と呼んで徒党を組みたいとさえ思う。

アルバム珠玉のA面の中の3曲目。ファンの非常に多い曲である。それは無論、曲の良さによるものだが、加えて、映画『魔女の宅急便』(89年)で脚光を浴びた影響も大きい。

そんなこの曲において「あぁユーミンっぽい音使いだなぁ」と思うところは、歌い出しからすぐの「♪神さまがいてー」のところである。コード進行が不思議なのだ(キーがF#における【Fm7】)。

これは番組内で説明した、ユーミン独特の「プチ転調」の一例である。完全な転調ではないのだが、一瞬「転調っぽい風が吹く」という感じの効果を醸し出すのだ。

あと、そもそもだが、キーがF#というのはどうしたことだろう。譜面も読みにくいし(五線譜に「#」が6つ!)、演奏もしにくいだろうに。

ユーミンワークスの中でも、オールドファンからの愛され度はトップクラスだと思うが、音使いの不思議度(変態度)もかなりのものだ。初期ユーミンは一筋縄では、いや二筋縄でもいかない。そういうのが好きな私は、敬虔な「ミスリム」である。




■松任谷由実『青いエアメイル』

  • 作詞:松任谷由実
  • 作曲:松任谷由実
  • アルバム『OLIVE』より
  • 1979年7月20日

コードの話で言えば、ユーミンのもっとも大きな功績の1つとして、日本のテンションコード、分数コードを普及させたことがあると思う。

特に、もっともメジャーなテンションコードとしての「メジャーセブンス(maj7)」は、ユーミンによって、日本の音楽界にもたらされたと言っても過言ではない。この日本には、ザビエルがキリスト教をもたらし、ユーミンがメジャーセブンスをもたらしたのだ。

この曲も、歌い出しから炸裂する【Amaj7】【Dmaj7】が、聴き手の脳内に、ある情景をふわっと広げる。その情景はとても絵画的だ。このあたり、ユーミンが多摩美術大学日本画専攻だったことも、影響しているかもしれない。

あと歌詞で言えば、2番の「5年、いや8年」という言い直すフレーズがいい。別れる彼に「輝く人」になってほしい「年限」を語っているのだが、「5年」と言って、さらに+3年猶予を与えるあたり、この主人公の女性は非常にキュートである。

発表は1979年。同年リリースの2枚のアルバム=『OLIVE』『悲しいほどお天気』のジャケットに写っているユーミンも、両方ともキュートで可愛い――「1979年のユーミン」は、とにもかくにも、キュートだ。



 >今回の放送内容はこちら 


  • facebook
  • twitter