2018年01月05日放送
■佐野元春『君をさがしている(朝が来るまで)』
アルバム『Heart Beat』の中でいちばん好きな曲。特に「♪一歩踏みだせば 誰もがヒーローさ」から「もしそれが 誰かの罠だとしてもだ」とつなげるフレーズがいい。
このフレーズから想起するのが、なぜかM-1グランプリのことである。この曲の「オーバーナイト・サクセス」感は、優勝することで、一夜にして「ヒーロー」になるというM-1のありようと近いものがある。
また、その変化が劇的すぎるゆえに、もしかしたら、どこかのメディアや芸能事務所が仕組んだ「罠」かもしれないと疑ってしまう感じも、とてもM-1っぽい。
加えて、この歌詞の面白いのは、2番までは、主人公がイケイケで「オーバーナイト・サクセス」するのにもかかわらず、3番でいきなり「♪連中の話じゃ こんなはずじゃなかった」と来て「♪誰かに運命を 綾まれてるような気がする」と暗転するところだ。
ここで長年の疑問なのだが、この「綾まれてる」が辞書に無いのである。もしや、佐野元春の造語なのではないか? 歌での発音は「あまねてる」と聞こえるのだが。誰か教えてほしい。私はこの言葉の本当の意味を探している。朝が来るまで。
■佐野元春『彼女はデリケート』
一般的には『NIAGARA TRIANGLE Vol.2』に収録された、佐野元春本人によるバージョンで知られていると思われるが、私にとっては沢田研二のカバーの印象が強い。
沢田研二のアルバム『G.S.I LOVE YOU』(1980年)の中の1曲。伊藤銀次によるハチャメチャなアレンジの中から浮き出てくる、32歳の若き沢田研二のパワーが炸裂するボーカル。
そのレコーディング時に、佐野元春もスタジオにいて、やたらとノリまくり、そのさまに沢田研二が感化されて、結果、パワー炸裂のノリノリの録音になったというのは有名な話。
興味深いのは、それ以降、80年代前半の沢田研二のボーカルが、どことなく佐野元春っぽくなっていったということだ。佐野元春のボーカルは伝染力が強い。百戦錬磨の沢田研二をもってしても、免疫が働かない。
『VANITY FACTORY』『Bye Bye Handy Love』『I'M IN BLUE』、そして天下の『すべてはこの夜に』などなど、佐野元春による沢田研二への提供曲は名曲がとても多い。佐野元春ファンには、ぜひ沢田研二版も聴いてほしい。
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