ザ・カセットテープ・ミュージック

スージー鈴木のボーナス・トラック

2017年11月10日放送

第4回「"ポジティブ陽水"による隠れた名曲!」

■【A面】井上陽水『新しいラプソディー』

  • 作詞:井上陽水
  • 作曲:井上陽水
  • 編曲:星勝


1986年5月21日発売・シングル
どちらかと言えば「吉田拓郎派」だった私は、井上陽水を、あまり聴き込んではいなかったのだ。しかし、そんな中でも、86年当時、何度も聴いたのが、この曲である。

吉田拓郎なら、絶対に採用しないであろう、とてもシンプルなコード進行の上で、井上陽水のボーカルが、空を飛んでいるような感じで浮遊する。

この曲に惹かれた理由として、この曲が「にせナイアガラ」だったことがある。「にせナイアガラ」とは、要するに「大滝詠一が絡んでいないのに、大滝詠一っぽい曲」。当時、「吉田拓郎派」以上に「大滝詠一派」だった私による造語である。

60年代ポップス風コード進行(C→Am→Dm→G7)や、「ドッ・ッド・ドッ・ターン」というドラムスのパターン、そして何よりも深すぎるエコーが、とてもナイアガラ的で。遠く無関係な人と感じていた井上陽水が「こっちの世界」に近付いてきたと、当時思ったものだった。

そして、この曲の持つ肯定感=「ポジティブ陽水」性が、後年の『少年時代』での大爆発につながっていく。

ちなみに、全くの余談だが、86年は、新田恵利『冬のオペラグラス』が発売された年でもあり、「にせナイアガラ」の当たり年だった。


■【B面】井上陽水『ロンドン急行』

  • 作詞:井上陽水
  • 作曲:井上陽水
  • 編曲:Gene Page


1974年10月1日発売・アルバム『二色の独楽』
この番組(サイト)では、基本的に80年代の音楽を選んでいきたいと思っているが、そんな中、74年という「紀元前」の曲を選ぶことをお許しいただきたい。私にとって、井上陽水と言えば、何といってもこれなので。

アルバム『二色の独楽』は、超・大ヒットアルバム『氷の世界』(73年)の次作。なので予算はふんだんにあり、何とハリウッド録音。演奏メンバーも絢爛豪華で、ジャック・ニッチェ、ジョー・サンプル、レイ・パーカーJrなど、洋楽好きなら必ず驚くだろう面々。

そういう、やたらとリッチな環境で作られたのが、この井上陽水版ロックンロール。ぴしっとしたタイトな演奏がたまらない。しかし、わざわざ西海岸まで行って、歌詞に『抱きしめたい』(ビートルズ)まで出てくる「ロンドン」の歌を歌うという倒錯した発想が、とても井上陽水的だと思う。

「井上陽水的」と言えば、そういうリッチなアルバムにもかかわらず、裏ジャケットで、「短話」として、パチンコの玉が出なかったことに関する愚痴を、ひたすらグチグチと綴っているのもまた「井上陽水的」。

翌年かまやつひろしも、アルバム『あゝ我が良き友よ』で、この曲を歌っているが、本家の方が段違いにいい。



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